
「キャッシュフロー計算書と損益計算書の違いは何だろう?」
「キャッシュフロー計算書と損益計算書を見ると何が分かるのだろう?」
企業の財務状況を理解するには、損益計算書とキャッシュフロー計算書という2つの財務諸表が欠かせません。
しかし、これらの財務諸表は数字の羅列で構成されており、一見するとわかりにくいと感じてしまう方も多いのではないでしょうか。
本記事では、損益計算書とキャッシュフロー計算書のそれぞれについて、「なぜ重要なのか」「どのように読み解くのか」「どんなポイントに注目すべきか」をわかりやすく解説します。
数字が苦手な方でも、この記事を読めば、これらの財務諸表を理解し、企業分析に役立てることができるようになるでしょう。
損益計算書とは?
損益計算書は、企業の一定期間(通常は1年間)における収益と費用を分類し、最終的な利益を計算する財務諸表の一つです。
企業の経営成果を明らかにし、投資家や債権者、経営者などに財務状況を伝える重要な役割を果たします。
損益計算書の役割
損益計算書は、以下の役割を果たします。
企業の収益性:売上高、売上原価、営業利益、経常利益、当期純利益などの項目から、企業がどの程度の収益を上げているのか、また、その収益がどのように生まれているのかを分析することができます。
企業の効率性:売上高に対する売上原価の比率(粗利率)、営業利益率、経常利益率などの指標から、企業がいかに効率的に経営を行っているのかを分析することができます。
企業の健全性:自己資本比率、流動比率などの指標から、企業の財務体質が健全かどうかを分析することができます。
企業の業績の推移:過去の損益計算書と比較することで、企業の業績がどのように推移しているのかを分析することができます。


損益計算書の構成項目
損益計算書は、大きく以下の4つの項目で構成されています。
売上高:企業が商品やサービスの販売によって得た収益を表します。
売上原価:商品やサービスを販売するために発生した費用を表します。
営業費用及び一般管理費:商品やサービスを販売するために必要な費用を表します。
営業外収益及び営業外費用:本業以外の活動によって発生した収益と費用を表します。
利益:1~4の合計額を表します。


損益計算書の読み方
損益計算書を読む際には、以下の点に注目する必要があります。
売上高と売上原価の比率:売上高に対する売上原価の比率は、粗利率と呼ばれます。粗利率が高いほど、企業は効率的に商品やサービスを販売していることを示唆します。
営業利益と経常利益の差:営業利益と経常利益の差は、営業外収益と営業外費用の差額を表します。この差額が大きい場合は、本業以外の活動による影響が大きいことを示唆します。
当期純利益の推移:当期純利益の推移を見ることで、企業の収益性が向上しているのか、悪化しているのかを判断することができます。
特別利益・特別損失の発生状況:特別利益・特別損失は、通常の営業活動以外で発生した偶発的な利益・損失を表します。これらの発生状況を分析することで、企業業績に与える影響を把握することができます。
キャッシュフロー計算書とは?
キャッシュフロー計算書は、企業の一定期間(通常1年間)における現金の流れを3つの活動に分類して示した財務諸表です。
企業の資金繰りの状況を明らかにし、投資家や債権者、経営者などに財務状況を伝える重要な役割を果たします。
キャッシュフロー計算書の役割
キャッシュフロー計算書は、以下の役割を果たします。
企業の資金繰りの状況:営業活動、投資活動、財務活動におけるキャッシュの増減を分析することで、企業の資金繰りの状況を把握することができます。
企業の投資効率:投資活動におけるキャッシュの増減を分析することで、企業の投資効率を判断することができます。
企業の財務健全性:財務活動におけるキャッシュの増減を分析することで、企業の財務健全性を判断することができます。
企業の将来的な成長性:キャッシュフロー計算書全体を分析することで、企業の将来的な成長性を予測することができます。
キャッシュフロー計算書の構成項目
キャッシュフロー計算書は、大きく3つの活動に分類して、それぞれの活動におけるキャッシュの増減を示します。
営業活動:商品やサービスの販売、原材料の購入、人件費の支払いなど、本業に関する活動におけるキャッシュの増減を示します。
投資活動:固定資産の購入・売却、投資有価証券の購入・売却など、投資に関する活動におけるキャッシュの増減を示します。
財務活動:借入金・社債の発行・返済、配当金の支払いなど、財務に関する活動におけるキャッシュの増減を示します。
キャッシュフロー計算書の読み方
キャッシュフロー計算書を読む際には、以下の点に注目する必要があります。
営業CF:営業活動によるキャッシュの増減を表します。営業CFがプラスであれば、本業でキャッシュを稼いでいることを示唆します。
投資CF:投資活動によるキャッシュの増減を表します。投資CFがプラスであれば、投資活動が収益を生んでいることを示唆します。
財務CF:財務活動によるキャッシュの増減を表します。財務CFがプラスであれば、借入金などに頼らずに自己資金で事業を運営できていることを示唆します。
フリーキャッシュフロー:営業CFと投資CFの合計額を表します。フリーキャッシュフローは、企業が自由に使えるキャッシュフローの量を表しており、企業の将来的な成長性などを判断する指標として用いられます。
損益計算書とキャッシュフロー計算書の比較
損益計算書とキャッシュフロー計算書は、どちらも企業の財務状況を分析する上で重要な財務諸表ですが、それぞれ異なる視点から情報を提供します。
以下では、両者の共通点と相違点について詳しく解説します。
損益計算書とキャッシュフロー計算書の共通点
企業の財務状況を明らかにする:損益計算書とキャッシュフロー計算書は、どちらも企業の財務状況を明らかにするために作成されます。
投資家や債権者、経営者などに情報提供する:損益計算書とキャッシュフロー計算書は、どちらも投資家や債権者、経営者などのステークホルダーに企業の財務状況に関する情報を提供するために使用されます。
会計基準に基づいて作成される:損益計算書とキャッシュフロー計算書は、どちらも会計基準に基づいて作成されます。
損益計算書とキャッシュフロー計算書の相違点
損益計算書 | キャッシュフロー計算書 | |
対象期間 | 一定期間(通常1年間) | 一定期間(通常1年間) |
分析対象 | 収益と費用 | キャッシュフロー |
会計主義 | 発生主義 | 実現主義 |
単位 | 金額 | 金額 |
構成項目 | 売上高、売上原価、営業費用及び一般管理費、営業外収益及び営業外費用、利益 | 営業CF、投資CF、財務CF |
役割 | 企業の収益性、効率性、健全性、業績の推移を分析する | 企業の資金繰りの状況、投資効率、財務健全性、将来的な成長性を分析する |
読み解き方のポイント | 売上高と売上原価の比率、営業利益と経常利益の差、当期純利益の推移、特別利益・特別損失の発生状況 | 営業CF、投資CF、財務CF、フリーキャッシュフロー |
損益計算書とキャッシュフロー計算書の主な違いは以下の3つです。
- 分析対象:損益計算書は収益と費用を分析するのに対し、キャッシュフロー計算書はキャッシュフローを分析します。
- 会計主義:損益計算書は発生主義に基づいて作成されるのに対し、キャッシュフロー計算書は実現主義に基づいて作成されます。
- 役割:損益計算書は企業の収益性、効率性、健全性、業績の推移を分析するのに対し、キャッシュフロー計算書は企業の資金繰りの状況、投資効率、財務健全性、将来的な成長性を分析します。
損益計算書とキャッシュフロー計算書は、それぞれ異なる視点から企業の財務状況を分析するため、両方の財務諸表を併せて分析することが重要です。
損益計算書とキャッシュフロー計算書を併せて分析することで、以下のようなことが可能になります。
企業の収益性と資金繰りの状況をより深く理解することができます。
企業の将来的な成長性をより正確に予測することができます。
企業の財務上のリスクをより適切に評価することができます。
損益計算書とキャッシュフロー計算書を活用した企業分析
損益計算書とキャッシュフロー計算書の両方を正しく理解し、分析することで、企業の収益性、効率性、健全性などを判断することができます。
収益性分析
損益計算書を活用した収益性分析では、以下の指標を用いて企業の収益性を分析することができます。
売上高成長率:前年度と比較した売上高の増加率を表します。売上高成長率が高いほど、企業は成長していることを示唆します。
粗利益率:売上高に対する売上原価の比率を表します。粗利益率が高いほど、企業は効率的に商品やサービスを販売していることを示唆します。
営業利益率:売上高に対する営業利益の比率を表します。営業利益率が高いほど、企業は本業で効率的に利益を上げていることを示唆します。
経常利益率:売上高に対する経常利益の比率を表します。経常利益率は、企業の純粋な収益力を示す指標として用いられます。
当期純利益率:売上高に対する当期純利益の比率を表します。当期純利益率は、企業の最終的な収益性を示す指標として用いられます。
キャッシュフロー計算書を活用した収益性分析では、以下の指標を用いて企業の収益性を分析することができます。
営業CFマージン:売上高に対する営業CFの比率を表します。営業CFマージンが高いほど、企業は本業で効率的にキャッシュを生み出していることを示唆します。
フリーキャッシュフロー:営業CFから投資CFを差し引いた額を表します。フリーキャッシュフローは、企業が自由に使えるキャッシュフローの量を表しており、企業の将来的な成長性などを判断する指標として用いられます。
効率性分析
損益計算書を活用した効率性分析では、以下の指標を用いて企業の効率性を分析することができます。
人件費売上高比率:売上高に対する人件費の比率を表します。人件費売上高比率が低いほど、企業は人件費を効率的に運用していることを示唆します。
固定資産売上高回転率:売上高を固定資産で除した値を表します。固定資産売上高回転率が高いほど、企業は固定資産を効率的に活用していることを示唆します。
総資産回転率:売上高を総資産で除した値を表します。総資産回転率が高いほど、企業は総資産を効率的に活用していることを示唆します。
キャッシュフロー計算書を活用した効率性分析では、以下の指標を用いて企業の効率性を分析することができます。
設備投資キャッシュフロー:投資CFにおける設備投資の支出額を表します。設備投資キャッシュフローが大きければ、企業は将来の成長に向けて投資を行っていることを示唆します。
運転資本当期純利益率:当期純利益を運転資產で除した値を表します。運転資本当期純利益率が高いほど、企業は運転資產を効率的に活用して利益を上げていることを示唆します。
健全性分析
損益計算書を活用した健全性分析では、以下の指標を用いて企業の健全性を分析することができます。
自己資本比率:自己資本を総負債で除した値を表します。自己資本比率が高いほど、企業は財務的に健全であることを示唆します。
流動比率:流動資産を流動負債で除した値を表します。流動比率が高いほど、企業は短期的な債務返済能力が高いことを示唆します。
当期純利益の安定性:過去の当期純利益の推移を見て、企業の業績が安定しているかどうかを分析します。
キャッシュフロー計算書を活用した健全性分析では、以下の指標を用いて企業の健全性を分析することができます。
財務CFマージン:当期純利益に税金を加えた額を財務CFで除した値を表します。財務CFマージンが高いほど、企業は借入金などに頼らずに自己資金で事業を運営できていることを示唆します。
キャッシュフローカバレッジ倍数:EBITDAを利息費用で除した値を表します。キャッシュフローカバレッジ倍数が高いほど、企業は利息費用を十分に支払う能力があることを示唆します。
まとめ
本記事では、損益計算書とキャッシュフロー計算書の重要性、読み解き方、分析方法について解説しました。
損益計算書とキャッシュフロー計算書は、企業の財務状況を分析する上で欠かせない財務諸表です。 これらの財務諸表を正しく理解し、分析することで、企業の収益性、効率性、健全性などを判断することができます。
本記事が、皆様の企業分析のスキル向上に役立てば幸いです。