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耐用年数経過後の減価償却資産はどうなる?残存薄価と所有するデメリットを解説

減価償却費 耐用年数経過後

「耐用年数が経過して減価償却が完了した固定資産は、どうなるのだろう?」
「耐用年数を経過した物件を購入、もしくは所有するデメリットはあるのだろうか?」

耐用年数が経過した減価償却資産について、このように考えている人は多いのではないでしょうか。

特に、耐用年数を経過した中古物件を購入すべきか、または所有すべきか悩んでいる人は多いことでしょう。

そこで、この記事では耐用年数が経過後の減価償却資産について、詳しく解説していきます。

減価償却の基本知識や、耐用年数が経過後の物件を所有・購入する会計上のデメリット、また税金の考え方についても解説しますので、ぜひ最後までお読みください。

目次

減価償却と耐用年数について

まずは減価償却と耐用年数について、基本的な知識から解説していきます。

さらに、減価償却費を計算するときに使用する定額法と定率法についても解説します。

減価償却とは?

減価償却とは、建物や車両運搬具、機械装置などの固定資産の取得価額を耐用年数にもとづき、分割して費用化する処理のことです。

また、時間が経つにつれて価値が減少していくと考えられ、減価償却を行う資産のことを減価償却資産といいます。

減価償却資産は、減価償却費を計上することで会計上の価値を減少させることになります。

ただし、土地や骨董品などは会計上の価値が減少しない資産と考えられており、減価償却を行わないため、減価償却資産に該当しないことに注意をしてください。

定額法と定率法

減価償却費を計算するときは、一般的に定額法と定率法を使用します。

定額法の計算式は下記の通りで、毎年均等に減価償却費を計上するのが特徴の計算方法です。

減価償却費=取得価額×償却率(定額法)

例えば、耐用年数4年(償却率0.250)のパソコンを100万円で取得した場合、定額法で減価償却を行うと下記のようになります。

スクロールできます
経過年数減価償却費計算式
1年25万円100万円×0.250
2年25万円100万円×0.250
3年25万円100万円×0.250
4年24万9,999円残存簿価1円まで償却

毎年25万円ずつ均等に償却を行いますが、4年目のみ固定資産を使用していることを表すために残存簿価1円を残して償却を行います。

次に、定率法の計算式は下記の通りで、償却初年度に多額の減価償却費を計上し、翌年から減価償却費が減っていく計算方法です。

減価償却費=未償却残高×償却率(定率法)

なお定率法の場合、減価償却費が取得価額に保証率をかけて求める償却保証額を下回ったときに、改定保証率を用いる計算に切り替えることが必要です。

ここでも、例をあげて計算してみましょう。

耐用年数4年(償却率0.500、改定償却率1.000、保証率0.12499)のパソコンを100万円で取得した場合、定率法で減価償却を行うと下記のようになります。

スクロールできます
経過年数減価償却費計算式
1年50万円100万円×0.500
2年25万円(100万円ー50万円)×0.500
3年12万5,000円(100万円ー50万円ー25万円)×0.500
4年12万4,999円残存簿価1円まで償却

償却保証額は、取得価額(100万円)×保証率(0.12499)で求め、12万4,990円です。

一方、4年目の減価償却費について償却率を用いて計算すると、(100万円ー50万円ー25万円ー12万5,000円)×0.500=6万2,500円となり、償却保証額を下回ります。

したがって、減価償却費が償却保証額を下回る4年目に、償却率に代わり改定償却率を用いて計算することになります。

耐用年数とは?

耐用年数は、固定資産の使用可能な期間のことで、一般的には税法により定められた法定耐用年数を指します。

法定耐用年数は、建物・機械装置・車両などの資産ごとに、構造・用途と細目別で決められていることが特徴です。

ただし、法定耐用年数をそのまま減価償却費の計算に使用できるのは新品の資産のときで、中古資産を取得した場合は、耐用年数を個別に決める必要があります。

まず、中古資産の取得価額が、中古資産と同じものを新品で買ったときの価格の50%以上であれば、法定耐用年数をそのまま使用してください。

もし、取得した中古資産が、新品で買ったときの価格の50%を下回る場合は、中古資産の耐用年数を計算するために、見積法か簡便法を使用します。

見積法は、中古資産を取得した時点から、使用できる期間を合理的に見積もる方法です。

一方で、見積法による耐用年数の算出が出来ない場合は、簡便法を用います。

簡便法は、中古資産を取得した時点の状況に応じて、下記の2つの計算式のどちらかで計算を行ってください。

1.すでに法定耐用年数の全てを経過していた場合:法定耐用年数×20%
2.法定耐用年数の一部を経過していた場合:(法定耐用年数ー経過した年数)+(経過した年数×20%)

なお、計算結果の小数点以下の端数は切り捨てし、2年未満は2年として扱います。

例えば、金属製のアーケードの建物付属(耐用年数15年)を取得した際に、すでに20年経過していた場合は、1の計算式で耐用年数を求めましょう。

法定耐用年数(15年)×20%=3年

したがって、耐用年数3年を用いて減価償却を行うことになります。

続いて、2のケースを考えてみましょう。

例えば、金属製のアーケードの建物付属(耐用年数15年)を取得した際に、すでに7年経過していた場合は、2の計算式に当てはめて求めます。

(法定耐用年数(15年)ー経過した年数(7年))+(経過した年数(7年)×20%)=8年+1.4年=9.4年

小数点以下の端数は切り捨てるため、耐用年数は9年になります。

以上のように、中古資産の耐用年数を求める場合は、中古資産を取得したときの状況に応じた計算が必要になることを覚えておきましょう。

減価償却資産の耐用年数経過後はどうなる?

減価償却資産の耐用年数が経過していたとしても、会計上の価値が減少しただけです。

したがって、耐用年数が経過後でも減価償却資産は使用可能で、廃棄する必要もありません。

例えば、フォークリフトの耐用年数は4年と定められているため減価償却は4年で完了しますが、故障などしていなければフォークリフト自体は4年以上使用できます。

耐用年数は、あくまでも減価償却を行うために国が設定した期間であり、会計上の考え方と理解しておくとよいでしょう。

ただし、減価償却資産が耐用年数を経過した場合、減価償却費の計上ができなくなることには注意をしてください。

耐用年数を経過した物件を所有するデメリット

耐用年数を経過し、減価償却が完了した物件を所有するデメリットは下記の2つがあります。

・税金が高くなる
・キャッシュフローが悪くなる

それぞれ解説していきます。

税金が高くなる

耐用年数を経過している物件は、減価償却が完了しているため、減価償却費の計上ができません。

したがって、減価償却費を計上することによる節税効果を得られないため、税金が高くなってしまいます。

また、アパートやマンションを貸し付けて不動産所得を得ている場合、これまで必要経費として計上していた減価償却費が計上できません。

よって、減価償却費を計上することで得られる節税効果がなくなるため、不動産所得が大きくなり、多くの所得税が課されることにも注意が必要です。

キャッシュフローが悪くなる

耐用年数を経過した物件を所有すると、減価償却費が計上できずに節税効果が受けられないため、多くの所得税を課せられてキャッシュフローが悪くなります。

また、耐用年数が経過した物件は、建てられてからある程度の年数がたっていることが予想されます。

そのため、空室が増えたり、家賃を安く見積もったりする必要が出てくるため、よりキャッシュが必要な状況になることでしょう。

もし、アパートやマンション経営などをするときは、キャッシュフローが悪くなり、経営を続けられないリスクがあることに注意が必要です。

耐用年数を経過した物件を購入するデメリット

前の章では、耐用年数を経過した物件を所有するデメリットを解説しましたが、ここでは購入するデメリットを解説します。

耐用年数を経過した物件を購入するデメリットは、下記の2つです。

・銀行の融資審査が厳しくなる
・短期間しか減価償却できない

耐用年数を経過した物件は、新築に比べて手頃な価格のため購入しやすいですが、デメリットもあります。

それぞれ解説していきますので、耐用年数を経過した物件の購入を考えている人は参考にしてください。

銀行の融資審査が厳しくなる

耐用年数を経過した物件を購入する際は、銀行の融資審査が厳しくなります。

一般的なケースでは、物件の購入をする際に銀行から融資を受けて、ローンの返済ができなかった場合は物件を差し押さえられることになります。

しかし、耐用年数が経過した物件は資産の価値がないとみなされてしまうため、物件を売却しても、ローン分の債務としてあてられないと判断されてしまうことでしょう。

したがって、耐用年数が経過した物件は新築の物件よりも安く手に入りますが、銀行の融資審査が厳しくなるため、自分で資金を準備しなければなりません。

ただし、物件でなく土地の方に価値があり、価格が高くつく場合は、土地を担保にして銀行から融資を受けられる可能性があることを覚えておくとよいでしょう。

短期間しか減価償却できない

耐用年数を経過した物件は、短期間しか減価償却できないこともデメリットといえるでしょう。

購入した時点で、すでに耐用年数を全て経過した中古の物件は、法定耐用年数×20%の年数を耐用年数として減価償却を行う決まりがあります。

したがって、新築の物件と比べるとどうしても耐用年数が短くなってしまうため、減価償却を行う期間が短くなってしまいます。

例えば、耐用年数が経過している木造の住宅用物件を購入した場合を考えてみましょう。

木造の住宅用物件の耐用年数は22年ですが、耐用年数を全て経過した物件を購入した場合の耐用年数は、下記の計算式で求められます。

法定耐用年数(22年)×20%=4.4年

小数点以下の端数は切り捨てのため、耐用年数は4年となります。

定額法で償却を行う場合、耐用年数が短い方が年間の減価償却費の計上額は多いかもしれませんが、長期間にわたって減価償却費を計上できません。

よって、長期的に節税効果を受けられないことになるため、短期間しか減価償却できないことはデメリットの一つといえるでしょう。

耐用年数経過後の減価償却資産の税金は?

減価償却を行う際は残存簿価1円まで償却できるため、耐用年数が経過した後の減価償却資産の固定資産税を算定する際に使用する評価額も、1円と思っている人が多いのではないでしょうか。

実は残存簿価が1円でも、固定資産税を算定する際に使用する評価額は1円にはなりません。

次の章で詳しく解説します。

課税対象である

耐用年数が過ぎて減価償却費の計上が終わり、残存簿価が1円になった減価償却資産でも、固定資産税の課税対象です。

残存簿価が1円といった取得価額が5%以下の資産の場合は、取得価額の5%を限度とした評価額で固定資産税の算定がされます。

固定資産税の申告をする際に、残存簿価が1円だからといって評価額も1円にしないように十分注意をしましょう。

なお減価償却資産を廃却・売却した場合は、減少した資産として管轄する各市区町村に申告すれば、課税対象から外れます。

また、一時的に稼働していない遊休資産については、使用できる状態であれば課税対象です。

一方で、今後使用見込みがないにもかかわらず、転用されず廃却・売却もされない状態にある資産は、用途廃止資産の扱いとなり課税対象になりません。

廃却・売却をした資産と同様に、管轄する各市区町村に減少した資産として申告をしてください。

まとめ

本記事では、耐用年数経過後の減価償却資産について詳しく解説しました。

耐用年数経過後の減価償却資産は、会計上の価値が減少しただけのため、廃却・売却しない限りは継続して使用できます。

また、耐用年数を経過した物件を所有するデメリットは下記の2つです。

・税金が高くなる
・キャッシュフローが悪くなる

耐用年数を経過しているということは、減価償却が行えません。

したがって、減価償却費を計上することで受けていた節税効果を得られずに税金が高くなり、キャッシュフローが悪くなることになります。

さらに、耐用年数を経過した物件を購入するデメリットは下記の2つです。

・銀行の融資審査が厳しくなる
・短期間しか減価償却できない

耐用年数が経過した物件は、資産の価値がないとみなされてしまいます。

よって、もしローンを支払えなくなった場合に、物件を売却してもローンの債務分としてあてられないと判断されてしまうため、銀行の融資審査が厳しくなってしまいます。

さらに、耐用年数経過後の中古物件の耐用年数は新築よりも短くなり、長期的な節税効果を得られないため、短期間しか減価償却できないこともデメリットの一つといえるでしょう。

それから、たとえ残存簿価が1円であっても、固定資産税の算出で使用される評価額は取得価額の5%を限度とした金額が用いられるため、課税対象であることを覚えておきましょう。

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