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貸借対照表の意味がわからない方必見!見方や読み方をわかりやすく解説

貸借対照表 見方

「貸借対照表はどうやって見ればよいのだろう?」
「貸借対照表の読み方がわからない」

このようにお悩みではないでしょうか。

貸借対照表は財務三表の一つで、各企業の重要な決算書です。

しかし、貸借対照表には多くの数字や勘定科目の記載があるため、貸借対照表の見方や読み方などが分からない人が多いのではないでしょうか。

そこで、本記事では貸借対照表の基礎知識や見方、読み方などを解説していきます。

貸借対照表の見方がわからない初心者の人や、貸借対照表になじみのない人は、ぜひ最後までお読みください。

目次

貸借対照表とは

まずは、貸借対照表を理解するために基礎知識を解説していきます。

ここで解説するのは、下記の4つの項目です。

・貸借対照表の役割や意味
・貸借対照表の構造
・損益計算書との関係性
・キャッシュフロー計算書との関係性

1つずつ確認していきましょう。

貸借対照表の役割や意味

貸借対照表は、ある時点における企業の資産や負債などの財政状態を表し、資金の調達方法と運用方法を可視化する役割を持っています。

また、貸借対照表の情報からさまざまな指標を算出することで、会社の経営が順調なのか、それとも問題があるのかどうかを判断できることも、貸借対照表を作成する意味の一つといえるでしょう。

貸借対照表の構造

貸借対照表は、資産・負債・純資産の3つの要素から成り立つ構造をしており、図で表すと下記の通りとなります。

スクロールできます
資産負債純資産
流動資産、固定資産、繰延資産負債流動負債、固定負債純資産資本金、資本金剰余金、利益剰余金など

資産・負債・純資産を計算式で表すと、資産=負債+純資産になることを覚えておきましょう。

また、資産・負債・純資産の意味は下記の通りのため、確認しておいてください。

・資産:現金や預金などの企業の財産
・負債:借入金や買掛金などの企業が将来返済義務のあるマイナスの財産
・純資産:資本金や利益剰余金などの企業が返済義務のない資産

損益計算書との関係性

損益計算書は、企業のある一定期間の利益が分かる決算書で、損益計算書で計上された当期純利益が貸借対照表の純資産に計上される関係性を持っています。

例えば、損益計算書の当期純利益が30万円で、前期末の貸借対照表の純資産が50万円だったとしましょう。

この場合、当期末に計上される純資産の金額は、当期純利益の30万円と前期末の純資産の50万円が足された80万円になります。

キャッシュフロー計算書との関係性

キャッシュフロー計算書は、現金の流れを把握するために作成する決算書です

キャッシュフロー計算書を作成する際に、貸借対照表を参照する箇所があることから、貸借対照表とキャッシュフロー計算書の2つの決算書はつながっているといえるでしょう。

例えば、貸借対照表の現金と預金の合計額が、キャッシュフロー計算書に記載される現金及び現金同等物の当期末残高とほぼ一致します。

また、貸借対照表の流動資産が前期末から当期末にかけて変動した金額が、キャッシュフロー計算書内の営業活動によるキャッシュフローに記載されます。

貸借対照表の勘定科目一覧

前の章で解説したように、貸借対照表は資産・負債・純資産の3つの部で構成されています。

そこで、ここではそれぞれの部で使われる主な勘定科目を解説していきます。

貸借対照表の資産の部

貸借対諸表の資産の部は、流動資産、固定資産、繰延資産の3つに分類できます。

それぞれに使用される主な勘定科目は、下記の通りです。

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分類勘定科目
流動資産現金、普通預金、当座預金、受取手形、売掛金、製品、仕掛品など
固定資産建物、土地、機械装置、ソフトウェア、投資有価証券など
繰延資産開業費、創立費、開発費など

貸借対照表の負債の部

貸借対諸表の負債の部は、流動負債、固定負債の2つに分類できます。

使用される主な勘定科目は下記の通りです。

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分類勘定科目
流動負債支払手形、買掛金、短期借入金、未払費用、仮受金など
固定負債長期借入金、社債、退職給付引当金など

貸借対照表の純資産の部

貸借対諸表の純資産の部は、株主資本、評価・換算差額等、新株予約権の3つに分類できます。

分類ごとの主な勘定科目は下記の通りです。

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分類勘定科目
株主資本資本金、資本準備金、利益準備金など
評価・換算差額等その他有価証券評価差額金など
新株予約権新株予約権

初心者も理解できる貸借対照表の見方

前の章までで、貸借対照表の基礎知識や勘定科目一覧を解説しました。

ここでは、初心者でも理解できるように貸借対照表の見方を下記の5つに分けて解説していきます。

・【資産の部】の流動資産
・【資産の部】の固定資産
・【負債の部】の流動負債
・【負債の部】の固定負債
・【純資産の部】の純資産

1つずつ見ていきましょう。

【資産の部】の流動資産

資産の部にある流動資産は、短期間で現金化が可能な資産のことです。

例えば現金や売掛金など、1年以内に現金化できる資産や仕入・販売などの営業活動のサイクルで発生する資産のことを指します。

ただし、流動資産には商品や貯蔵品といった即時に現金化できないものも含まれることに注意をしましょう

なお、資産の部の流動資産は、貸借対照表の左上に表示されます。

【資産の部】の固定資産

資産の部にある固定資産は、現金化するのに1年以上かかるものや、企業が長期間保有するもののことです

例えば、建物や機械装置、ソフトウェアなどが固定資産に該当します。

固定資産に記載される金額は、取得した際にかかった費用、つまり取得価額です。

時間の経過により価値が減少する減価償却資産は、取得価額から減価償却費が差し引かれた金額が帳簿価額として貸借対照表に表示されることを、覚えておくとよいでしょう。

なお、資産の部の固定資産は、貸借対照表の左下に表示されます。

【負債の部】の流動負債

負債の部にある流動負債は、1年以内が返済期限の負債や、営業活動のサイクルで発生する負債のことです。

例えば、支払手形や買掛金、未払費用、仮受金などが流動負債に該当します。

また、負債の部の流動負債は、貸借対照表の右上に表示されます。

【負債の部】の固定負債

負債の部にある固定負債は、1年以内に返済期限が来ない負債のことで、長期借入金、社債などが固定負債に該当します。

負債の部の固定負債は、貸借対照表上で右上にある流動負債の下に表示されます。

【純資産の部】の純資産

純資産は返済義務のない資産のことで、資本金、利益剰余金などが該当します。

純資産は、貸借対照表の右下に表示されます。

貸借対照表から読み取れること

貸借対照表を見れば、経営に関係する指標が読み取れます。

ここでは、貸借対照表から読み取れることとして、下記の7つを解説します。

・「自己資本比率」で経営の安定性がわかる
・「自己資本利益率」で利益が出ている会社かわかる
・「流動資産」と「流動負債」で財政状況がわかる
・「流動比率」で会社の支払い能力がわかる
・「当座比率」でより正確に支払い能力がわかる
・「固定比率」で長期間の安定性がわかる
・「負債比率」で財政の安定性がわかる

「自己資本比率」で経営の安定性がわかる

自己資本比率は、総資産に対しての純資産の割合のことです。

計算式は下記の通りです。

自己資本比率(%)=純資産÷総資産×100

総資産は、資産の合計金額か負債と純資産を足した金額を使用してください。

自己資本比率は、会社が持っている全ての資産のうち、返済義務のない純資産の割合が分かり、経営が安定している会社かどうか判断できます。

なお、一般的な自己資本比率の目安は40%以上とされています。

ただし、業種や規模により目安が異なるため、同業他社の自己資本比率と比べてみるとよいでしょう。

「自己資本利益率」で利益が出ている会社かわかる

自己資本利益率は、自己資本に対しての当期純利益の割合のことです

計算式は下記の通りとなっています。

自己資本利益率(%)=当期純利益÷自己資本×100

自己資本は返済義務のない資本のことで、純資産の中の資本金や利益剰余金などが含まれる株主資本を指すことが一般的です。

自己資本利益率の数値が高いほど、株主資本をうまく活用して運用し、利益を出している企業ということになります。

「流動資産」と「流動負債」で財政状況がわかる

1年以内に返済すべき流動負債よりも、1年以内に現金化のできる流動資産の金額が大きければ(流動資産>流動負債の状態)、資金繰り上は大きな問題がないといえるでしょう。

しかし、もし流動資産よりも流動負債の方が大きければ(流動資産<流動負債の状態)、経営の悪化が疑われ、返済すべき負債を支払えずに倒産してしまう恐れがあります。

したがって、流動資産よりも流動負債の方が大きい状態であれば、経営状況がさらに悪化しないように、迅速に改善策を考える必要があります。

「流動比率」で会社の支払い能力がわかる

流動比率は、流動負債に対しての流動資産の割合を表します。

計算式は下記の通りです。

流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100

流動比率が100%を超えていれば、返済義務のある流動負債の支払いが可能と判断できます。

もし、流動比率が100%を切るような状況であれば、短期的な資金が不足する恐れがあるため、資金繰り計画を見直す必要があるでしょう。

なお、流動比率は一般的には130%から150%が目安で、200%を超えていれば優良企業といえます。

「当座比率」でより正確に支払い能力がわかる

流動比率よりも正確に支払い能力がわかる指標が、当座比率です。

当座比率は下記の計算式で求めます。

当座比率(%)=当座資産÷流動負債×100

流動比率と異なる箇所は当座資産を使用していることで、当座資産は現金や預金など換金性の高い資産を指します。

当座資産と比べて、商品や仕掛品などの棚卸資産は、売上があがってから現金化されるため時間がかかってしまいます。

そのため、当座比率は換金性が不確実な棚卸資産を除いて計算できるため、より正確に支払い能力がわかる指標といえます。

「固定比率」で長期間の安定性がわかる

固定比率は、純資産に対しての固定資産の割合のことです。

計算式は下記の通りです。

固定比率(%)=固定資産÷純資産(自己資本)×100

固定比率を見ることで、固定資産を取得するために多額の借入をしていないかを確認できます。

もし、固定資産を他人資本である金融機関などからの借入金でまかなっている場合、元金と利息の返済が必要になってしまいます。

しかし、固定比率が100%より低い状態で、固定資産が純資産でまかなえていれば、借入金の返済をする必要がないため、長期的に安定した経営が期待できるといえるでしょう。

「負債比率」で財政の安定性がわかる

負債比率は、純資産に対しての負債の割合のことで、計算式は下記の通りです。

負債比率(%)=負債÷純資産(自己資本)×100

負債比率が低ければ、純資産に対して負債が小さいことを意味するため、企業の財政が安定しているといえます。

貸借対照表の作り方

貸借対照表を作るには、取引が発生し、仕訳をするところから始まります。

貸借対照表の作り方は下記の通りです。

1.取引の発生
2.複式簿記で仕訳帳に記帳
3.総勘定元帳へ転記
4.総勘定元帳の残高を試算表に転記
5.試算表に対して決算整理仕訳を実施

貸借対照表は会計期間の事業活動が終了した後の期末に作成しますが、貸借対照表のもとになっているものは、日々の取引を記帳している帳簿です。

貸借対照表を作成する期末に慌てないように、仕訳帳などの帳簿の準備を確実に行いましょう。

また、貸借対照表の作り方については以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

関連記事:貸借対照表の書き方・作り方を解説!簡単な作成方法や例、注意点を紹介

貸借対照表の具体例

貸借対照表の見方を理解するために、実際に企業が報告している貸借対照表を見ていきましょう。

貸借対照表の具体例として、下記3社の貸借対照表について解説していきます。

・日本郵船株式会社
・凸版印刷株式会社
・三井不動産株式会社

日本郵船株式会社の貸借対照表

1社目は日本郵船株式会社です。

2023年3月31日時点の貸借対照表を表すと、下記の通りとなります。

流動資産:7,201億円流動負債:4,990億円
固定負債:7,528億円
固定資産:3兆565億円
純資産:2兆5,250億円
繰延資産:2億円

出典:日本郵船株式会社「2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」

すでに解説した貸借対照表から読み取れる、自己資本比率・流動比率・固定比率をまとめると下記の通りです。

・自己資本比率(67%)=純資産(2兆5,250億円)÷総資産(7,201億円+3兆565億円+2億円)×100
・流動比率(144%)=流動資産(7,201億円)÷流動負債(4,990億円)×100
・固定比率(121%)=固定資産(3兆565億円)÷純資産(2兆5,250億円)×100

自己資本比率は67%と一般的な目安の40%以上を大きく超えており、経営が安定していることが分かります。

流動比率144%は一般的な目安である130%から150%の間の数値のため、短期的な資金計画は問題ないといえるでしょう。

一方、固定比率は100%を超えていますが、日本郵船は固定資産として多くの船を所有していることから業種による影響が大きいといえます。

凸版印刷株式会社の貸借対照表

2社目は凸版印刷株式会社です。

2023年3月31日時点の貸借対照表は、下記の通りです。

流動資産:1兆1,061億円流動負債:4,674億円
固定負債:3,193億円
固定資産:1兆1,327億円純資産:1兆4,522億円

出典:凸版印刷株式会社「2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」

凸版印刷株式会社の自己資本比率・流動比率・固定比率の数値と計算式は下記の通りとなっています。

・自己資本比率(65%)=純資産(1兆4,522億円)÷総資産(1兆1,061億円+1兆1,327億円)×100
・流動比率(237%)=流動資産(1兆1,061億円)÷流動負債(4,674億円)×100
・固定比率(78%)=固定資産(1兆1,327億円)÷純資産(1兆4,522億円)×100

自己資本比率は65%で目安の40%以上を超えており、流動比率237%は目安130%から150%を大きく超え、短期的な支払い能力が高いことを表しています。

また、固定比率は100%を下回っているため、安定した経営ができているといえるでしょう。

三井不動産株式会社の貸借対照表

3社目は三井不動産株式会社です。

2023年3月31日時点の貸借対照表をまとめると、下記の通りとなります。

流動資産:2兆7,475億円流動負債:1兆5,018億円
固定負債:4兆3,083億円
固定資産:6兆939億円
純資産:3兆312億円

出典:三井不動産株式会社「2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」

三井不動産株式会社の自己資本比率・流動比率・固定比率の数値と計算式は、下記の通りです。

・自己資本比率(34%)=純資産(3兆312億円)÷総資産(2兆7,475億円+6兆939億円)×100
・流動比率(183%)=流動資産(2兆7,475億円)÷流動負債(1兆5,018億円)×100
・固定比率(201%)=固定資産(6兆939億円)÷純資産(3兆312億円)×100

自己資本比率は、34%と目安の40%を下回っています。

不動産業では会社の規模が大きくなるほど、どうしても仕入のために借入金が大きくなってしまうため、業界の影響といえるでしょう。

流動比率は183%と目安130%から150%を上回っており、問題がないと判断できます。

固定比率は201%と目安の100%を大きく上回っていますが、土地や建物を中心に固定資産の金額が大きい不動産業による影響と考えられます。

まとめ

本記事では、貸借対照表の見方や読み方について解説しました。

貸借対照表は大きく分けると下記の5つに分かれるため、分類ごとに意味と該当する勘定科目を覚えておきましょう。

・【資産の部】の流動資産
・【資産の部】の固定資産
・【負債の部】の流動負債
・【負債の部】の固定負債
・【純資産の部】の純資産

また、貸借対照表から読み取れることは主に下記の7つです。

・「自己資本比率」で経営の安定性がわかる
・「自己資本利益率」で利益が出ている会社かわかる
・「流動資産」と「流動負債」で財政状況がわかる
・「流動比率」で会社の支払い能力がわかる
・「当座比率」でより正確に支払い能力がわかる
・「固定比率」で長期間の安定性がわかる
・「負債比率」で財政の安定性がわかる

貸借対照表を読むポイントは、ただ漠然と読むのではなく、上に挙げたような読み取れる指標を活用しながら読むことです。

記事内で企業の貸借対照表を例にあげて読み方を解説しましたので、ぜひ参考にしていただき、貸借対照表の読み方に慣れていきましょう。

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