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総資産とは?総資産と純資産の違いや分析方法を簡単にわかりやすく解説

総資産

「総資産と純資産はどういう意味で、どのように違うだろう?」
「総資産と純資産を使うと、どういう分析ができるのだろう?」

このようにお悩みではないでしょうか?

総資産と純資産は似ている言葉ですが、意味が異なるため正しく使い分ける必要があります。

しかし、総資産と純資産の意味や違いをはっきりと理解できていない人も多いことでしょう。

そこで、本記事では総資産と純資産のそれぞれの意味や違い、構成要素などを解説していきます。

さらに、総資産や純資産を活用して経営状態を分析する方法も解説します。

総資産と純資産の考え方でお悩みの人は、ぜひ最後までお読みください。

目次

総資産とは?3つの構成要素

ここでは、総資産について解説していきます。

総資産は、現金や預金など企業が保有している全ての資産の合計金額のことで、貸借対照表の左側にある資産の部に計上されているものです。

また、総資産は下記の3つで構成されています。

・流動資産
・固定資産
・繰延資産

それぞれ解説していきますので、確認していきましょう。

流動資産

流動資産は、短期間で現金にできる資産のことです。

例えば、1年以内に現金にできる資産や、営業活動により生じる売掛金や商品などを指します。

貸借対照表では、左側の一番上に表示されることも覚えておきましょう。

また、流動資産に含まれる主な勘定科目は下記の通りです。

・現金
・預金
・受取手形
・売掛金
・有価証券
・商品
・未収入金

固定資産

固定資産は、現金化に1年以上の期間がかかるものや、1年を超えて長期間保有する資産のことです。

貸借対照表では、左側の流動資産の下に表示されます。

また、固定資産はさらに有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産に分類され、主なものは下記の通りです。

スクロールできます
有形固定資産土地、建物、構築物、機械装置、車両運搬具など
無形固定資産特許権、のれん、ソフトウェアなど
投資その他の資産投資有価証券、関係会社株式、長期前払費用など

繰延資産

繰延資産は、支出した費用のうち、効果が1年以上に及ぶもので資産に計上したものを指します。

繰延資産として計上し、償却を行うことで費用化していきます。

繰延資産を構成するのは、下記の5種類の勘定科目です。

・開業費
・創立費
・開発費
・社債発行費
・株式交付費

総資産で会社の規模と経営効率がわかる

総資産を分析することで、会社の規模と経営効率がわかります。

ここでは、下記の3つについて解説していきます。

・総資産が大きいと会社の規模が大きい
・経営効率を測る総資産回転率とは
・総資産回転率の目安

それぞれを活用し、経営分析の際に役立ててください。

総資産が大きいと会社の規模が大きい

総資産は企業が保有している全ての資産の合計金額のため、総資産が大きいと会社の規模が大きいことを表します。

そのため、貸借対照表の総資産は会社の規模を測るための重要な指標となっています。

また、損益計算書の売上高も会社の規模をあらわす指標のため、総資産とあわせて確認してみるとよいでしょう。

経営効率を測る総資産回転率とは

総資産回転率とは経営効率を測る指標で、総資産が売上に対してどれだけ有効に活用できているかを表します。

総資産回転率の計算式は下記の通りです。

総資産回転率(回)=売上高÷総資産

総資産回転率の単位は回で、1年間の売上に対して総資産が何回転したかを示し、数値が大きいほど経営効率の良い会社といえます。

もし1回転だった場合、1年間で総資産が投資・売上・回収のサイクルを1回転したことになります。

例えば、下記の2社でどちらが総資産を効率的に使って売上をあげているかを考えてみましょう。

  • A社:売上高500億円、総資産100億円
  • B社:売上高500億円、総資産250億円

それぞれの総資産回転率を算出すると、下記の通りとなります。

・A社:売上高(500億円)÷総資産(100億円)=5回
・B社:売上高(500億円)÷総資産(250億円)=2回

上記の通り、総資産回転率が大きいのはA社になりました。

売上高はA社・B社とも同じ500億円ですが、B社に比べて総資産の小さいA社の方が経営効率が良いことが分かります。

総資産回転率の目安

総資産回転率の目安は1.0回以上です。

ただし、下記の中小企業庁が出している調査報告書を見て分かる通り、業種によって総資産回転率の数値が異なるため、1.0回を下回っていても問題があるわけではありません。

業種総資産(総資本)回転率(回)
法人企業合計1.05
建設業1.26
製造業0.99
情報通信業1.04
運輸業、郵便業1.19
卸売業1.78
小売業1.85
不動産業、物品賃貸業0.33
学術研究、専門・技術サービス業0.24
宿泊業、飲食サービス業1.04
生活関連サービス業、娯楽業1.00
サービス業 (他に分類されないもの)1.23

出典:経済産業省中小企業庁「令和2年中小企業実態基本調査報告書(令和元年度決算実績)P.41」

自社の他社の数値を比べるときは、同業他社と比較してみるとよいでしょう。

純資産とは?返済義務のない資産

総資産と純資産は間違えやすいため、はっきりと区別して覚えましょう。

純資産は返済義務のない資産のことです。

また、総資産は貸借対照表では左側に表示されますが、純資産は右側に表示されます。

ここでは、純資産の主な用語・勘定科目について解説していきます。

・株主資本
・資本金
・資本剰余金
・利益剰余金
・自己株式
・新株予約権

株主資本

株主資本は純資産の区分の一つで、株主が保有する資産のことを指し、資本金・資本剰余金・利益剰余金・自己株式が株式資本に含まれます。

企業を経営するために株式を発行して株主から出資を受けた資金と、出資を受けた金額をもとにあげた利益が表示されます。

資本金

資本金は、株式を発行して株主から集めた資金と、経営者が出資した資金の合計のことです。

資本金は企業の業績とは分離されているため、企業が利益をあげても金額が変わらない特徴を持っています。

会社法の改正により資本金が1円でも会社の設立はできるようになりましたが、資本金が多いと社外での信用を得やすいため、最低限の資本金を準備するとよいでしょう。

資本剰余金

資本剰余金は、株主からの出資金や経営者の手元資金のなかで、資本金に計上されなかった資金のことです。

また、資本剰余金は資本準備金とその他資本剰余金の2つに分けられます。

資本準備金は多額の損失や急な出費に備えておく資金で、その他資本剰余金は増資や原資などの資本取引により生じた剰余金のことです。

なお、その他資本剰余金は、株主への配当の原資に充てられるという特徴を持っています。

利益剰余金

利益剰余金は、事業活動により生じた利益を積み立てたものです。

そのため、純資産のうち利益剰余金が占める割合が多いほど、経営が安定しているといえるでしょう。

また、株式会社は株主に対して配当金で還元しますが、毎年全ての利益を株主へ配当してしまうと、企業の財務状態が悪化してしまう恐れがあります。

そこで、各企業は会社法をもとに、利益剰余金か資本準備金へ配当金の10分の1以上の金額を積み立てることが義務となっています。

自己株式

自己株式とは、株式会社が発行した株式の中で、その会社自身で保有している株式の金額です。

また、自己株式の取得とは発行した株式をその会社自身が取得することを指し、株式の発行数を減少させることと同じ意味を持ちます。

なお、自己株式を売却することを自己株式の処分といい、資金調達を目的として行われるケースがあります。

新株予約権

新株予約権は、これから発行する株式を所定の金額で交付を受ける権利のことです。

また、社内向けの新株予約権をストックオプションと呼び、株式会社の取締役や従業員が、決められた価格で自社株を取得できる権利を意味します。

なお、新株予約権は株主資本に含まれません。

総資産と純資産の違いとは?

総資産は現金や預金など企業が保有している全ての資産で、純資産は資本金や利益剰余金など返済義務のない資産です。

また、総資産は資金の運用方法を表しているのに対し、純資産は資金の調達方法を表しているという違いもあります。

さらに、貸借対照表における位置も違い、総資産は左側純資産は右側(負債の下)に表示されます。

総資産と純資産は似た言葉ですが、上述したようにさまざまな意味の違いがあることを覚えておきましょう。

下の表でそれぞれの意味をまとめたので、はっきりと区別して覚えられるように確認しておいてください。

スクロールできます
総資産純資産
意味企業が保有している全ての資産(現金・預金など)返済義務のない資産(資本金・利益剰余金など)
表していること資金の運用方法資金の調達方法
貸借対照表の表示場所左側右側(負債の下)

純資産を使って経営状態を分析する方法

貸借対照表の純資産や、その他の資産・負債の金額を使うことで、経営状況を分析する方法があります。

そこで、ここでは下記の5つの分析方法を解説していきます。

自己資本比率
・自己資本利益率(ROE)
・総資産利益率(ROA)
・固定比率
・負債比率

それぞれ確認していきますので、考え方や計算式などを参考にしてください。

自己資本比率

自己資本比率は、総資産に占める自己資本(純資産)の割合のことで、計算式は下記の通りです。

自己資本比率(%)=自己資本(純資産)÷総資産×100

自己資本は返済義務のない資産のため、自己資本比率が大きければ借入金に頼る度合いが小さく、財務状態が良好であることが分かります。

また、自己資本比率の一般的な水準は20%以上と言われています。

自社の自己資本比率が、20%以上であるかどうかを試算してみるとよいでしょう。

自己資本利益率(ROE)

自己資本利益率(ROE)は、自己資本(純資産)に占める当期純利益の割合のことです。

ROEはReturn On Equityの頭文字を取ったもので、計算式は下記の通りです。

自己資本利益率(%)=当期純利益÷自己資本(純資産)×100

自己資本利益率が高ければ、自己資本を効率的に活用して利益を出していることを表します

そのため、自己資本利益率は企業の収益性や将来性を測る指標として使われます。

総資産利益率(ROA)

総資産利益率(ROA)は、総資産に占める当期純利益もしくは経常利益の占める割合のことです。

ROAはReturn On Assetsの頭文字を取ったもので、計算式は下記の通りです。

総資産利益率(%)=当期純利益(経常利益)÷総資産×100

総資産利益率(ROA)は自己資本利益率(ROE)と異なり、返済義務のない資産の純資産だけでなく、借入金などの負債も含めて計算するという違いがあります。

したがって、総資産利益率は企業の全ての資産をどの程度効率的に活用して利益を出しているかが分かるでしょう。

なお、株式投資において総資産利益率を算出する際は当期純利益を使用し、経営分析では経常利益が使われます。

理由は、株式投資と経営分析では重視する利益が異なるからです。

それぞれのケースで、適切な利益を使用して計算するようにしましょう。

固定比率

固定比率は、純資産に占める固定資産の割合を示す指標です。

計算式は下記の通りです。

固定比率(%)=固定資産÷純資産×100

固定比率を使用すれば、固定資産を取得する際に多くの借入をせずに純資産でまかなえているかを確認できます。

もし、固定比率が100%以下であれば固定資産が純資産でまかなえていると判断できるため、財務状態が安定しているといえるでしょう。

負債比率

負債比率は、純資産に占める負債の割合を示す指標で、計算式は下記の通りです。

負債比率(%)=負債÷純資産×100

負債比率が低い場合、純資産に対して負債が小さいことを表すため、財務状態が安定しているといえるでしょう。

まとめ

本記事では、総資産と純資産について詳しく解説しました。

総資産は、現金や預金など企業が保有している全ての資産の合計金額で、貸借対照表の左側にある資産の部に計上されています。

総資産は下記の3つで構成されているため、覚えておきましょう。

・流動資産
・固定資産
・繰延資産

一方、純資産は返済義務のない資産のことです。

本記事で解説した、純資産の主な用語・勘定科目は下記の通りです。

・株主資本
・資本金
・資本剰余金
・利益剰余金
・自己株式
・新株予約権

総資産と純資産は似ている用語ですが、意味は異なります。

下記の表を参考に、総資産と純資産の違いを確認しておきましょう。

スクロールできます
総資産純資産
意味企業が保有している全ての資産(現金・預金など)返済義務のない資産(資本金・利益剰余金など)
表していること資金の運用方法資金の調達方法
貸借対照表の表示場所左側右側(負債の下)

また、貸借対照表の純資産や、その他の資産・負債の金額を使うことで、経営状況を分析する方法があり、本記事では下記の5つの分析方法を解説しました。

自己資本比率
・自己資本利益率(ROE)
・総資産利益率(ROA)
・固定比率
・負債比率

総資産と純資産の違いを理解し、両者を組み合わせて経営状態を分析できるようになるとよいでしょう。

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