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繰延資産として任意償却する開業費償却とは?償却期間や仕訳方法とともに解説

開業費償却

繰延資産として計上された開業費は、任意償却を行うことで費用として計上可能です。

しかし、どれくらいの期間で開業費を償却すれば良いのか、またどのような仕訳をすれば良いのか、わからない人は多いのではないでしょうか。

そこで、本記事では開業費の償却期間や仕訳方法などを解説していきます。

さらに、開業費の基礎知識や償却の際のポイントなども解説しますので、開業費償却でお悩みの人はぜひ最後までお読みください。

目次

開業費とは?

開業費とは、開業前の準備の際にかかった費用のことで、資産の中の繰延資産に分類される勘定科目です。

開業準備の際は費用がかかるものの、開業してからすぐには収益があがらない状況になることが予想されます。

会計の考え方で、費用と収益を対応させるべきという費用収益対応の原則がありますが、開業費の全額を開業後すぐに経費で計上してしまうと、費用収益対応の原則を守れなくなってしまうかもしれません。

そこで、開業費を繰延資産に計上し、開業後に繰延資産を取り崩す形で償却を行うことで費用と収益の対応が可能になります。

なお、開業「費」と呼びますが、経費ではなく繰延資産になることに注意をしてください。

開業費と創業費の違い

開業費と似た勘定科目で創業費がありますが、創業費とは会社の設立までに要した費用のことで、開業費と同様に繰延資産に分類される勘定科目です。

創業費は個人事業主は使用せず、法人のみ使用できることを覚えておきましょう。

また、開業費は会社が設立してから開業までにかかった費用であり、時系列で考えた場合は下記の通りとなります。

・会社設立準備開始から会社設立まで:創業費
・会社設立から開業まで:開業費

上記の通り、開業費と創業費の違いは、会社設立までの費用が創業費、会社設立からの費用が開業費であることを覚えておいてください。

開業費の減価償却について

開業費の減価償却には、下記3つの知っておくべきポイントがあります。

・5年に分けて繰延資産として償却可能
・開業費が10万円以上か未満で扱いが変わる
・開業費の経費計上で節税できる

1つずつ解説しますので、理解を深めていきましょう。

5年に分けて繰延資産として償却可能

開業費を繰延資産として計上し、開業後に5年の均等償却ができます。

一方で、任意償却も可能です。

任意償却であれば、償却する金額も自由に決められ、償却が5年を超えた場合の罰則などもありません。

例えば、開業初年度で赤字の見込みであれば償却をしない選択も可能です。

開業費が10万円以上か未満で扱いが変わる

開業費が10万円以上であれば、開業のためにかかった費用を開業費で計上し、開業後に償却を行えます。

一方で、10万円未満のケースでは開業日の日付で支払った内容と合致する勘定科目を用いて、経費計上することになります。

なお、1つで取得価額が10万円以上のものや、礼金などは開業費で計上できません。

取得価額が10万円以上するものは固定資産に分類され、礼金は繰延資産ではあるものの開業費には含まれないことに注意をしてください。

開業費の経費計上で節税できる

開業費を繰延資産として計上後に償却を行えば、課税所得が減るため節税できます。

もし、開業費が10万円以上で5年均等償却した場合、開業後5年にわたって節税効果を得られます。

任意償却の場合は、利益が出た年度に償却金額を大きくしたり、利益が少ない時には償却をしないようにしたりするなど、節税のために自分で判断可能です。

適切に償却を行うことで、長期的な節税を行えるとよいでしょう。

個人事業主と法人で異なる開業費に含まれるもの

個人事業主と法人では、開業費に含まれるものが異なることに注意が必要です。

ここでは、個人事業主と法人のケースに分けて解説していきます。

【個人事業主】開業費に計上できるもの

個人事業主は、開業に必要と証明できるものは開業費に計上できます。

オフィスの家賃などの経常的な支出も開業費にできるため、法人と比べると計上範囲が広いことが特徴です。

例えば、下記のものは個人事業主の開業費として計上できます。

・打ち合わせ費用
・開業のために必要なセミナーの参加費
・事業運営に使用するパソコン代
・Webサイトの製作費用
・市場調査費
・関係者への手土産代
・オフィスの家賃

上記のように、開業費に含まれるものはさまざまですが、大切なポイントは開業のために必要なものだったと証明可能なことです。

支払ったものについての領収書を保管し、開業費に計上することで節税しましょう。

ただし、個人事業主はほとんどのものを開業費にできますが、1つで10万円以上のものは固定資産に該当するため開業費に含められません。

また、敷金も退去時に返ってくるため開業費に含められず、礼金は繰延資産に該当しますが開業費とは別で処理するため、敷金と礼金も開業費として計上できないことを覚えておいてください。

【法人】開業費に計上できるもの

法人の開業費は、法人が設立してから開業日までの準備のために特別に支出した費用で、個人事業主と比べると範囲が限定的なことが特徴です。

法人が開業費に計上できるものとして、下記のものが挙げられます。

・市場調査費
・名刺・印鑑作成費用
・広告宣伝費
・研修費

・開業のために特別に支出した費用

法人が開業に含められないものは、個人事業主と同様に10万円以上で固定資産になるものや敷金と礼金に加え、オフィスの家賃などが挙げられます。

オフィスの家賃が開業費に計上できないと考えられるのは、特別に支出した費用でなく、経常的に発生する費用のためです。

そのため、オフィスの家賃は個人事業主では認められても、法人では開業費として認められない可能性があります。

判断に迷ったら、管轄の税務署や税理士に確認するようにしてください。

開業費計上の仕訳例

開業費を計上する際の仕訳を確認していきましょう。

ここでは法人を想定しますので、前の章で解説した開業費に計上できるかどうかという観点も含めて考えてみてください。

計上仕訳を考える際の前提条件を、下記の通りとします。

■前提条件

Z株式会社は✕2年9月に会社を設立後、✕2年12月に開業し、会社設立から開業までに下記の費用を支払ったとする。

・市場調査費:5万円
・オフィスの家賃:12万円
・研修費:3万円

上記の場合、市場調査費と研修費は開業に必要な特別に支出した費用のため、開業費として計上可能です。

一方で、家賃は経常的な費用と考えられるため、開業初年度の費用で計上することになります。

したがって、仕訳は下記の通りとなります。

・市場調査費(5万円)と研修費(3万円)の合計8万円を開業費用として計上

借方貸方
開業費80,000円現金80,000円

・オフィスの家賃(12万円)は経費科目の地代家賃で計上

借方貸方
地代家賃120,000円現金120,000円

節税できる開業費償却のポイント5つ

ここまで開業費について解説しましたが、節税できる開業費償却のポイントとして下記の5つが挙げられます。

・開業費の領収書は必ず保管する
・開業前にかかったコストも含むことが可能
・任意償却で金額を自由に設定可能
・仕訳帳に記入して管理する
・減価償却資産台帳への記入も必要

1つずつ解説していきます。

開業費の領収書は必ず保管する

開業費として計上するには証憑が必要になるため、領収書は必ず保管しましょう

もし、バスや電車などの交通費といった領収書が発行されないケースでは、カードの利用履歴など領収書の代わりになるものを探してみてください。

領収書の代わりになるものを探しても見つからない場合は、支払い日や金額、支払った相手や内容などを記載した出金伝票を作成しておくとよいでしょう。

開業前にかかったコストも含むことが可能

ここまで解説してきたように、開業前にかかったコストを開業費として計上し、開業後に償却することで経費にできます。

一般的には、開業前より数ヶ月から半年程度まで遡って開業費として計上可能です。

支払いをした内容が本当に開業に必要だったことを示せるように、支払った目的や理由などを記載したメモを領収書などとセットで保存しておくとよいでしょう。

任意償却で金額を自由に設定可能

開業費は5年均等償却だけでなく、任意償却も可能です。

任意償却は金額を自由に設定できるため、開業初年度に利益が上がらなければ償却金額を0円にしても問題ありません。

反対に開業初年度の利益が大きい場合は、計上していた開業費を初年度に全額償却してもよいでしょう。

また、均等償却の場合は5年で償却していきますが、任意償却の場合は5年目以降に償却を行っても罰則などはありません。

仕訳帳に記入して管理する

開業費償却を行う場合は、仕訳帳に記入して管理することが大切です。

開業費に計上する金額を資産の勘定科目の「開業費」に計上し、償却する場合は「開業費償却」を使用して償却し、経費として計上します。

仕訳については、開業費償却の仕訳例の章で解説しますので、参考にしてください。

減価償却資産台帳への記入も必要

10万円以上で開業費として計上できる場合は、仕訳帳だけでなく減価償却資産台帳への記入も必要です。

なぜなら開業費は会社の資産のため、取得や償却などの一連の流れを減価償却資産台帳へ記入して、開業費の流れを把握する必要があるからです。

したがって、仕訳をしたら忘れずに減価償却資産台帳へ記入し、仕訳帳と減価償却資産台帳が連動するようにしましょう。

開業費償却の仕訳例

開業費の償却は、任意償却と60か月(5年)の均等償却のどちらかを選択できます。

そこで、ここでは下記2つのケースでの仕訳を解説していきます。

・一括償却の場合
・60か月均等償却の場合

一括償却の場合

任意償却を選択した場合、少額ずつでも一括でも償却できますが、ここでは一括償却を行う際の仕訳を解説します。

✕1年に開業費として60万円を計上し、翌年の✕2年に60万円を一括償却した場合の仕訳例は下記の通りです。

スクロールできます
借方貸方
開業費償却600,000円開業費600,000円

繰延資産として計上していた開業費を取り崩すために貸方に計上し、経費科目の開業費償却を借方に計上する仕訳になります。

60か月均等償却の場合

次に、60か月均等償却の仕訳を考えていきましょう。

12月決算の個人事業主が✕1年3月に開業費として60万円を計上し、60か月均等償却を行った場合、✕1年に計上する開業費償却の仕訳は下記の通りです。

スクロールできます
借方貸方
開業費償却100,000円開業費100,000円

開業費を60か月で均等償却する場合は、月割計算を行います。

上記の例では、12月決算で✕1年3月に開業費の償却を開始したことから、✕1年は3月から12月までの10か月分の開業費償却を計上します。

計算式は下記の通りで、✕1年に計上する開業費償却額は10万円です。

60万円(開業費)÷60か月×10か月(✕1年の計上月数)=10万円

開業費償却は白色申告と青色申告で異なる

開業費は任意償却が可能なため、損益状況によって開業費償却をすべきかどうかを判断できます。

しかし、白色申告と青色申告では赤字の繰り越しの扱いが異なるため、それぞれについて確認していきましょう。

白色申告は赤字の繰り越し不可能

白色申告の場合、翌年への赤字の繰り越しが不可能です。

赤字の金額がいくらであっても当年で赤字が切り捨てられるだけで、翌年に利益が出たとしても赤字を繰り越しての合算はできないため、節税対策ができません。

したがって、当年が赤字の場合は、翌年以降に開業費償却を行うことで節税ができるといえるでしょう。

青色申告は赤字の繰り越し可能

青色申告であれば赤字の繰り越しが可能なため、当年が赤字の状態で開業費償却を行っても翌年以降に節税効果を受けられることでしょう。

ただし、赤字を繰り越せるのは最長で3年間で、青色申告を行うためには開業届と青色申告承認申請書を税務署へ提出する必要があることには注意をしてください。

開業費を確定申告する時のポイント3つ

ここまで開業費について解説しましたが、確定申告の内容を理解することも大切です。

確定申告する時のポイントとして、下記の3つを解説していきます。

・確定申告の内容や目的
・確定申告する対象者
・確定申告のスケジュール

確定申告の内容や目的

確定申告は、1月1日から12月31日までに生じた所得と、生じた所得に対する税金である所得税を算出し、税務署へ報告する手続きのことです。

納税を行うことは国民の義務であり、所得に応じた所得税を納める必要があるため、確定申告を行う必要があります。

もし確定申告をしない場合、無申告加算税や延滞税などのペナルティが発生するケースがあります。

また、確定申告で不正を行った場合は、さらに重加算税も課せられる恐れもあるため、正しく期限内に確定申告を行いましょう。

確定申告する対象者

法人の場合は、基本的にすべての法人が確定申告を行う必要があります。

法人税の申告・納付期限は、事業年度が終了した日から2か月以内で、例えば3月決算の法人は、5月末までに申告・納付が必要です。

一方、個人事業主で事業収入がある人で、所得が基礎控除額の48万円以上ある場合は、確定申告が必要になります。

なお一時所得があったり、不動産収入や株・FX取引で所得がある人も確定申告が必要な場合があるため、自分の確定申告が必要かどうか不明な人は税務署に問い合わせをしてください。

確定申告のスケジュール

確定申告書の提出は、毎年2月16日から3月15日の1か月の間に行うことになっています。

ただし、もし税金の還付を受ける場合は、1月1日から申告ができます。

また確定申告を行うには、確定申告書を税務署へ直接持っていく方法や、e-Taxを利用する方法などがあるため、自分に合った申告方法を選んで期限内に提出しましょう。

まとめ

本記事では、開業費と開業費償却について詳しく解説しました。

開業費とは、開業前の準備の際にかかった費用のことです。

開業「費」と呼びますが、経費ではなく繰延資産に分類されることに注意をしましょう。

また、個人事業主と法人では、開業費に含まれるものが異なります。

個人事業主は、開業に必要と証明できるものは開業費に計上でき、経常的な支出も開業費にできます。

一方で、法人の開業費は、法人を設立してから開業日までの準備のために特別に支出した費用が対象で、個人事業主と比べると範囲が限定的になります。

開業費の償却については、任意償却と60か月(5年)の均等償却のどちらかの選択が可能です。

自由度が高いのは任意償却ですが、自社に合った方法を選び、適切に開業費償却をしましょう。

なお、開業費償却の仕訳例を記事内で解説していますので、ぜひ参考にしてください。

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