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借方・貸方とは?違いや貸借対照表・損益計算書との関係と覚え方と仕訳の基礎を解説

損益計算書 貸借対照表 借方 貸方

損益計算書などの決算書でよく見る「借方」と「貸方」。

「借方」と「貸方」は複式簿記で用いられる用語ですが、簿記に詳しくないと借方と貸方の意味や違いなどが分からずに、悩んでしまうことがあるかもしれません。

そこで、この記事では借方と貸方の意味や違い、また覚え方や貸借対照表と損益計算書における借方と貸方の記載方法などを解説していきます。

さらに、最後の章では具体例を用いて、実際に仕訳をするときの考え方も解説していますので、ぜひ参考にしてください。

目次

「借方」と「貸方」は複式簿記の基本

「借方」と「貸方」は複式簿記の基本で、複式簿記の知識は決算書を作成するときに必要な知識です。

しかし、借方と貸方という言葉はよく見るものの、借方と貸方について詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。

そこで、この章では「借方」と「貸方」について、下記の4つに分けて詳しく解説していきます。

●   複式簿記と単式簿記の違いとは?
●   「借方」「貸方」とは?
●   「借方」と「貸方」の簡単な覚え方
●   「借方」と「貸方」の取引内容は5つに分類

「借方」と「貸方」を理解するために、1つずつ確認していきましょう。

複式簿記と単式簿記の違いとは?

日々行われる取引を記録することを簿記といい、簿記には複式簿記と単式簿記の2つの種類があります。

複式簿記と単式簿記の違いは、下記の通りです。

●複式簿記:取引内容について「2つ」の側面から記録する方法
●単式簿記:取引内容について「1つ」の勘定科目の増減を記録する方法

一言で表すと「帳簿記録の複雑さ」が大きく違い、複式簿記が複雑、単式簿記がシンプルな記録方法といえます。

それでは、複式簿記から見ていきましょう。

複式簿記は、取引した内容の「原因」と「結果」の2つの側面を考えて記帳する方法です。

例えば、商品10,000円を売り上げて売掛金が増えた場合は、下記の仕訳になります。

借方貸方
売掛金10,000円売上10,000円

商品が売れた(原因)ことで、売掛金が増えた(結果)という2つの側面が考えられるため、上記の仕訳となりました。

上記の例のように、複式簿記は1つの取引内容を2つの側面で考えて、借方・貸方にそれぞれ勘定科目と金額を記帳する方法を指します。

一方で、単式簿記は1つの勘定科目の増減を記録する方法です。

現金残高を記録していく家計簿をイメージしていただくと、分かりやすいでしょう。

例えば、単式簿記の場合は下記のように記録していきます。

●   3月1日に現金で20,000円の売上があったとき

3月1日 売上 20,000円(収入)

●   3月2日に事務用品代1,000円を現金で支払ったとき

3月2日 事務用品代 1,000円(支出)

上記の通り、単式簿記は借方と貸方を用いずに、1つの勘定科目の増減を記録していく方法を指します。

以上が複式簿記と単式簿記の例です。

複式簿記は、借方・貸方にそれぞれ記録するため複雑でルールもありますが、お金の流れを理解しやすいメリットがあります。
単式簿記は、1つの勘定科目を中心に考えるため記録しやすいメリットがありますが、お金の流れがわかりづらい面もあります。

企業の会計処理においては複式簿記を使用するのが一般的ですが、単式簿記も重要な考え方のため、どちらの考え方も覚えておくとよいでしょう。

「借方」「貸方」とは?

「借方」と「貸方」とは、複式簿記で会計処理を行う上での会計用語の一つです。

複式簿記では、1つの取引内容を「借方」と「貸方」に振り分けて記録していきます。

例えば、現金が増えた場合は現金を借方に記録し、現金が増えた理由を貸方に記録することになります。

また、借方と貸方にそれぞれ計上した合計金額は、必ず一致しなければならないことも覚えておきましょう。

「借方」と「貸方」の簡単な覚え方

仕訳をする際に、借方は左貸方は右という決まりがあります。

しかし、簿記に慣れていない方は左右のどちらが借方なのか貸方なのか、分からない人も多いのではないでしょうか。

そこで、ここでは借方と貸方の簡単な覚え方を解説していきます。

まずは、借方と貸方をそれぞれひらがなにしてみましょう。

借方をひらがなで書くと「かりかた」で、貸方(かしかた)と異なる文字は2文字目の「り」です。

「り」は左にはらって書くため、借方は左と覚えます。

一方、貸方をひらがなで書くと「かしかた」で、借方の覚え方と同様に2文字目の「し」を見ると、右にはらって書くため貸方は右と覚えます。

借方と貸方が左右どちらなのか不明な場合、上記のように借方の「り」と貸方の「し」に注目し、それぞれどちらにはらって書くかを考えて、左右の判断をするようにしてください。

「借方」と「貸方」の取引内容は5つに分類

仕訳をする際の「借方」と「貸方」に記録する取引内容は、下記の5つに分類できます。

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分類内容
資産企業の財産。例)現金、預金、売掛金、固定資産など
負債支払う義務のあるもの。例)借入金、買掛金、支払手形など
純資産返済義務のない企業の資産。例)資本金、利益剰余金など
収益事業をする中で得た収益。例)売上高、営業外収益など
費用収益をあげるために使われた経費。例)人件費、減価償却費など

上記の5つの分類を、借方と貸方のどちらに記載していくかを判断するポイントは、何が増えて何が減ったかを見ることです。

5つの分類ごとに、借方と貸方のどちらに記載するかをまとめた表は、下記の通りです。

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分類記載方法
資産増えたら「借方」・減ったら「貸方」
負債増えたら「貸方」・減ったら「借方」
純資産増えたら「貸方」・減ったら「借方」
収益増えたら「貸方」・減ったら「借方」
費用増えたら「借方」・減ったら「貸方」

例えば、会社で使用するボールペンを購入して現金を支払った場合、ボールペンを計上する消耗品費(費用)が増えて、現金(資産)が減ったことになります。

したがって、上記の表にあてはめると、増えた消耗品費(費用)が「借方」に記録され、減った現金(資産)が「貸方」に記録されます。

仕訳をする際はさまざまな組み合わせが考えられるため、取引内容から5つの分類が増えたのか、減ったのかを考えることが大切です。

貸借対照表における「借方」と「貸方」の記載方法

前の章で、借方と貸方の取引内容は5つに分類できると解説しました。

5つの分類は、貸借対照表と損益計算書のどちらに表示されるかが下記の通りに決まっています。

●   資産・負債・純資産→貸借対照表に表示される
●   収益・費用→損益計算書に表示される

そこで、ここでは貸借対照表に表示される「資産・負債・純資産」の借方・貸方の記載方法について解説していきます。

借方(左側)に記載する「資産」

「資産」は企業の財産のことで、増えた場合は借方(左側)に計上します。

また、資産を分けると下記の3つに分類できます。

●   流動資産
●   固定資産
●   繰延資産

上記3つに分類される主な勘定科目は下記の通りのため、参考にしてください。

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流動資産
現金硬貨や紙幣などの現金のこと
売掛金本業の営業活動により発生した未収入金
商品販売の目的で所有している商品
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固定資産
建物事務所や工場などの事業で必要な建物の
機械装置事業のために使われる機械及び装置
関係会社株式議決権の20%以上を所有し、重要な影響を与えられる会社の株式
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 繰延資産
開発費新技術や市場の開拓などに支出した費用のうち資産として計上するもの

貸方(右側)に記載する「負債」「純資産」

「負債」は支払う義務のあるものを指し、増えた場合は貸方(右側)に計上します。

また、「純資産」は返済義務のない企業の資産のことで、「負債」と同様に、増えた場合は貸方(右側)に計上することも覚えておいてください。

負債は大きく分けると、下記の2つに分類できます。

●   流動負債
●   固定負債

また、純資産は下記の3つに分類できます。

●   株主資本
●   評価・換算差額等
●   新株予約権

負債と純資産に分類される主な勘定科目は下記の通りなので、確認しておきましょう。

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負債
流動負債
支払手形本業の仕入で発生した手形債務
短期借入金返済期日が1年以内の借入金
未払法人税等法人税、住民税及び事業税で未払いのもの
固定負債
社債企業が発行する債券
長期借入金返済期日が1年以上の借入金
退職給付引当金将来の従業員の退職金などを見積もり、引当金として計上したもの
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純資産
株主資本
資本金株主が出資したお金
繰越利益剰余金企業がこれまで稼いできた利益の合計金額
評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金その他有価証券を評価替したときの評価差額
新株予約権
新株予約権発行した企業に権利を行使することで、その企業の株式の交付を受けられる権利

損益計算書における借方と貸方の記載方法

前の章で、貸借対照表に表示される「資産・負債・純資産」の記載方法の解説をしました。

そこで、ここでは損益計算書に表示される「収益・費用」の借方・貸方の記載方法について解説していきます。

借方(左側)に記載する「費用」

費用は、収益をあげるために使われた経費のことで、増えた場合は借方(左側)に記載します。

費用を分けると、下記の4つに分類できます。

●   売上原価
●   販売費及び一般管理費
●   営業外費用
   特別損失

上記4つに分類される主な勘定科目は下記の通りのため、確認しておいてください。

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売上原価
当期仕入高当期の売上のために購入した商品などの仕入金額
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販売費及び一般管理費
消耗品費文房具やコピー用紙などの短期間で消耗されるものの費用
広告宣伝費自社商品やサービスを宣伝するときにかかった費用
会議費業務で必要な会議を行うときにかかった費用
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営業外費用
支払利息借入金などに対して支払う利息
為替差損為替の変動で発生した損失
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特別損失
固定資産売却損建物や土地などの固定資産を売却したときに発生する損失
災害損失災害により商品や固定資産が被害を受けたときに発生する損失

貸方(右側)に記載する「収益」

収益は、事業をする中で得た収益のことで、増えたら貸方(右側)に記載します。

収益は大きく分けると、下記の3つに分類できます。

   売上高
●   営業外収益
●   特別利益

上記3つに分類される主な勘定科目は下記の通りのため、確認して理解を深めていきましょう。

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売上高
売上高商品やサービスなどを提供することで得た売上金額の合計
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営業外収益
受取利息預金や有価証券などから得られる利息
為替差益為替の変動で得た利益
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特別利益
固定資産売却益建物や土地などの固定資産を売却したときに発生する利益
保険差益災害による損失金額よりも損害保険会社から受けた保険金額が大きい際に、損失金額を超える保険金額分を計上する勘定科目

借方と貸方の仕訳の例

ここまで、借方・貸方の意味や違い、また貸借対照表と損益計算書における記載方法などを解説してきました。

ここでは、具体的に仕訳の例を用いて、どのように借方と貸方に振り分けていくかを解説していきます。

解説する仕訳の例は、下記の5パターンです。

●   現金で仕入れた場合の仕訳例
   買掛金で仕入れた場合の仕訳例
●   商品を現金で販売した場合の仕訳例
●   商品を売掛金で販売した場合の仕訳例
●   売掛金が振り込まれた場合の仕訳例

1つずつ解説していきますので、既に解説した下記の表を参考にしながら、借方と貸方への振り分け方を確認していきましょう。

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分類記載方法
資産増えたら「借方」・減ったら「貸方」
負債増えたら「貸方」・減ったら「借方」
純資産増えたら「貸方」・減ったら「借方」
収益増えたら「貸方」・減ったら「借方」
費用増えたら「借方」・減ったら「貸方」

現金で仕入れた場合の仕訳例

商品やサービスを現金10,000円で仕入れた場合の仕訳は、下記の通りです。

借方貸方
仕入10,000円現金10,000円

商品やサービスを仕入れて費用が増えたため「仕入」を借方に記載します。

そして、現金つまり資産が減ったため「現金」を貸方に記載することで、仕訳が完成します。

買掛金で仕入れた場合の仕訳例

商品やサービスを買掛金30,000円で仕入れた場合の仕訳は、下記の通りです。

借方貸方
仕入10,000円買掛金10,000円

商品やサービスを仕入れて費用が増えたため、先ほどと同様に「仕入」を借方に記載します。

そして、買掛金での仕入、つまり負債が増えたため「買掛金」を貸方に記載して仕訳の完成です。

商品を現金で販売した場合の仕訳例

商品を現金50,000円で販売したときの仕訳は、下記の通りです。

借方貸方
現金50,000円売上50,000円

商品を現金で販売したため、現金つまり資産が増えたことから、借方に「現金」を記載します。

一方、50,000円で販売したということは、50,000円の売上があがったことになります。

したがって、収益が増えたため「売上」を貸方に記載して仕訳が完成です。

商品を売掛金で販売した場合の仕訳例

商品を現金でなく、売掛金50,000円で販売したときの仕訳は、下記の通りです。

借方貸方
売掛金50,000円売上50,000円

商品を売掛金で販売したため、売掛金つまり資産が増えたことから、借方に「売掛金」を記載します。

そして50,000円の売上があがった、つまり収益が増えたため「売上」50,000円を貸方に記載して仕訳の完成です。

売掛金が振り込まれた場合の仕訳例

売掛金50,000円が振り込まれた場合の仕訳は、下記の通りです。

借方貸方
普通預金50,000円売掛金50,000円


既に計上していた債権分の売掛金50,000円が普通預金で振り込まれ、資産の普通預金が増えたため、借方に「普通預金」を記載します。

そして売掛金の回収ができたことで売掛金が減った、つまり資産が減ったため「売掛金」50,000円を貸方に記載して仕訳の完成です。

まとめ

この記事では、借方・貸方の意味や違い、また貸借対照表と損益計算書での記載方法などを解説しました。

「借方」と「貸方」は複式簿記の基本で、会計処理を行う上での会計用語の一つです。

複式簿記では、1つの取引内容を「借方」と「貸方」に振り分けて記録し、「借方」と「貸方」のそれぞれの合計金額が必ず一致することも、大事な点のため覚えておきましょう。

また、借方と貸方の取引内容は「資産・負債・純資産・収益・費用」の5つに分類でき、借方と貸方のどちらに記載するかは「何が増えて何が減ったかを見る」ことがポイントです。

5つの分類を借方と貸方のどちらに記載するかは、下記の表を参考にしてください。

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分類記載方法
資産増えたら「借方」・減ったら「貸方」
負債増えたら「貸方」・減ったら「借方」
純資産増えたら「貸方」・減ったら「借方」
収益増えたら「貸方」・減ったら「借方」
費用増えたら「借方」・減ったら「貸方」

さらに、最後の章では5つの仕訳例を用いて、借方と貸方をどのように振り込けるかを解説しました。

どのように仕訳をするか悩んでいる人は、ぜひ5つの仕訳例を参考にしてください。

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