会社にかかる税金は、大きく分けて3種類に分類されます。
しかし、どのような税金があり、決算書へどのように反映されているかわからない人が多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では会社にかかる税金にはどのようなものがあり、税金が決算書へどのように反映しているかを解説していきます。
また、税抜・税込経理方式のそれぞれのメリットを挙げ、どちらが得なのかについても解説します。
本記事を読むことで、税金と損益計算書などの決算書との関係性がわかるため、ぜひ最後までお読みください。
会社にかかる税金は大きく3種類に分類
税金がどのように決算書へ反映しているかを解説する前に、会社にかかる税金について解説していきます。
会社にかかる税金は、大きく分けて下記の3種類に分類されます。
● 利益に対してかかる税金
● 財産に対してかかる税金
● 消費に対してかかる税金
1つずつ確認していきましょう。
利益に対してかかる税金
1つ目は、利益に対してかかる税金です。
法人税(法人所得税)、法人住民税、法人事業税が該当します。
収益から費用を引いた利益、税務上でいうところの所得に対して税金がかかるため、所得が増えれば支払いが増える税金です。
基本的に所得に法人税率をかけた金額を税金として納めるため、残りが会社の手元に儲けとして残ります。
また、所得が赤字(マイナス)の場合、法人住民税の均等割など赤字でも支払うものを除けば、法人税を支払う必要がないことも特徴です。
財産に対してかかる税金
2つ目は、財産に対してかかる税金で、代表的なものは固定資産税です。
固定資産税は、会社が所有している固定資産に課される税金で、所有する固定資産が増えれば納税する金額が大きくなるのが特徴です。
また、土地・建物の固定資産税額は評価額に応じて支払いますが、機械装置や工具器具備品などの償却資産は、会社のある自治体に申告することで税額が決まります。
なお財産に対してかかる税金のため、赤字でも支払わなければならないことに注意が必要です。
消費に対してかかる税金
3つ目は消費に対してかかる税金で、つまり消費税のことです。
商品の仕入時は、仕入先に消費税を含めて仕入代金を支払いますが、商品の販売時は、消費者から消費税を含めた販売代金を受け取ることになります。
会社が消費税を納めるときは、消費者から受け取った消費税から仕入代金として支払った消費税を差し引いた金額を消費税として納める仕組みになっていることを覚えておきましょう。
ただし、輸出取引や給与の支払いなど、消費税がかからない取引があることには注意が必要です。
税金を納める時期と回数について
前の章では会社にかかる3つの税金について解説しましたが、税金を納める時期はいつで、何回納めれば良いのでしょうか?
税金を納める時期についてまとめた表は、下記の通りです。
税金の種類 | 支払時期と回数 |
---|---|
法人税等 (利益に対してかかる税金) | 決算月から2ヶ月以内に支払う。(例:3月末が期末決算の法人の場合、5月末までに支払う) ※ただし、手続きをすることにより、1ヶ月の延長も可能 |
固定資産税 (財産に対してかかる税金) | 基本的に6月、9月、12月、翌2月 ※償却資産は、毎年1月1日時点の所有状況を原則1月31日までに会社がある自治体に申告する |
消費税 (消費に対してかかる税金) | 決算月から2ヶ月以内に支払う。 ※ただし、手続きをすることにより、1ヶ月の延長も可能 |
法人税は、決算で利益を確定させた後、決算から2ヶ月以内に支払う必要があり、法人税額によっては中間納付をしている会社もあります。
また、固定資産税は基本的に6月、9月、12月、翌2月の4回の支払いになりますが、具体的な日程を知りたい人は、各自治体へ問い合わせるようにしてください。
消費税については、直前の課税期間の確定消費税額により、支払い回数が異なります。
詳細は下記の表をご確認ください。
直前の課税期間の確定消費税額 | 支払回数 |
---|---|
48万円以下 | 1回(確定申告1回)※中間申告不要 |
48万円超~ 400万円以下 | 2回(確定申告1回、中間申告1回) |
400万円超~ 4,800万円以下 | 4回(確定申告1回、中間申告3回) |
4,800万円超 | 12回(確定申告1回、中間申告11回) |
税金は決算書のどこに反映される?
前の章までに、会社にかかる3つの税金と税金を納める時期・回数について解説しました。
ここでは、税金が決算書のどこに反映されるかを解説していきます。
会社にかかる3つの税金ごとに見ていきましょう。
利益に対してかかる税金
利益に対してかかる税金の法人税が、貸借対照表と損益計算書において何の勘定科目で計上されているかを下記の表でまとめたので、確認してみましょう。
決算書類 | 勘定科目 |
---|---|
貸借対照表 | 未払法人税(もしくは未収法人税)、繰延税金資産、繰延税金負債 |
損益計算書 | 租税公課、法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額 |
決算を行い法人税の金額が確定したら、法人税、住民税及び事業税が損益計算書に反映され、未払法人税(もしくは未収法人税)が貸借対照表に反映されます。
ただし、法人事業税のうち、資本割や付加価値割と呼ばれる部分については、販売費及び一般管理費の租税公課で計上することを覚えておくとよいでしょう。
また、税効果会計で用いられる繰延税金資産、繰延税金負債は貸借対照表に、法人税等調整額は損益計算書に反映されます。
財産に対してかかる税金
財産に対してかかる税金の固定資産税は、販売費及び一般管理費の租税公課で計上するため、損益計算書に反映されます。
消費に対してかかる税金
消費に対してかかる税金の消費税は、税抜で会計処理を行う税抜経理方式と、税込で会計処理を行う税込経理方式の2パターンあり、計上する勘定科目が異なります。
それぞれの方式で用いられる勘定科目は、下記の通りです。
方式の種類 | 勘定科目 | 反映する決算書 |
---|---|---|
税抜経理方式 | 未払消費税、仮払消費税、仮受消費税 | 貸借対照表のみ |
税込経理方式 | 租税公課、未払消費税 | 貸借対照表・損益計算書 |
次の章で、税抜経理方式と税込経理方式を詳しく解説するので、参考にしてください。
決算書は税抜経理方式か税込経理方式のどちらが得?
決算書を作成する際は、税抜経理方式と税込経理方式の2つの方法がありますが、どちらの方式で経理処理を行うかの基準は下記の通りです。
● 収益と費用から消費税額を計算する「原則課税」の場合は、税抜経理方式
● 売上やみなし仕入率などから計算する「簡易課税」の場合は、税込経理方式
なお、上記のどちらの方式を採用しても、当期利益は同じになります。
ここでは、税抜経理方式と税込経理方式の2つの方式について解説し、どちらが得かを考えていきます。
税抜経理方式とは
税抜経理方式とは、売上や仕入の価格と消費税を分けて、税抜で経理処理を行う方式のことです。
実際に仕訳を見ながら考えてみましょう。
まずは、仕入の仕訳です。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仕入 | 1,000円 | 買掛金 | 1,100円 |
仮払消費税 | 100円 |
商品を買掛金で仕入した際、消費税もあわせて支払っているため、仕入の金額と消費税の金額は別で計上し、消費税は仮払消費税で計上します。
続いて、売上の仕訳を確認しましょう。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 3,300円 | 売上 | 3,000円 |
仮受消費税 | 300円 |
売上があがって受け取った現金3,300円のうち、300円の消費税は売上と別で計上するため、仮受消費税で計上します。
以上のように、税抜経理方式では本体価格と消費税を分けて仕訳をおこないます。
なお、納めるべき消費税額は、仮払消費税と仮受消費税の差額の金額です。
上記の仕訳の場合、仮受消費税(300円)から仮払消費税(100円)を引いた200円を納税することになります。
税込経理方式とは
一方、税込経理方式とは、売上や仕入の価格と消費税を合算して経理処理を行う方式です。
先ほど税抜経理方式で例としてあげた仕訳を税込経理方式で表すと、下記の通りとなります。
・仕入時(消費税100円)
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仕入 | 1,100円 | 買掛金 | 1,100円 |
・売上時(消費税300円)
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 3,300円 | 売上 | 3,300円 |
税込経理方式では税込で仕訳をするため、仕入時も売上時もシンプルな仕訳になるのが特徴です。
また、税込経理方式では、消費税額を租税公課で計上するため、上記の仕訳の場合、売上時の消費税300円から仕入時の消費税100円を引いた200円が、租税公課として計上されます。
もし消費税額の還付を受ける場合は、一般的に雑収入として計上することも覚えておくとよいでしょう。
ここまで税抜経理方式と税込経理方式を見てきましたが、仕訳だけを見ると仕訳が簡単な税込経理方式を採用した方が、得に見えるのではないでしょうか。
そこで、次の章で税抜経理方式と税込経理方式のそれぞれのメリットを解説しますので、どちらが得かを考えていきましょう。
税抜・税込経理方式のそれぞれのメリット
ここでは、税抜・税込経理方式のそれぞれのメリットを解説していきます。
どちらの方式が得なのかを考えながら、確認していきましょう。
税抜経理方式のメリット
税抜経理方式は、常に売上や仕入の価格と消費税が分けられ、決算書が税抜で表示されるため、損益計算をする際にわかりやすいことがメリットです。
また、消費税率が変わった場合の対応の際、税抜経理方式であれば異なる税率を分けて管理できることもメリットの一つです。
さらに、少額固定資産の一括経費計上や交際費の計上など、金額が小さい方が有利なケースでは、消費税が含まれていない税抜経理方式の方がメリットがあると言えます。
税込経理方式のメリット
税込経理方式は、税抜経理方式のように消費税をわざわざ分ける必要がなく、消費税込の金額を記録していけば良い方式です。
したがって、仕訳をする際の手間がかからないのがメリットです。
簡易的に会計処理ができるメリットがある一方で、税込経理方式は損益や消費税額の把握がしづらいなどのデメリットもあります。
また、消費税率が変更されて、複数の消費税率の金額が計上されている場合、正しく処理されているのかを判断するのが難しいことも、デメリットの一つです。
もし、これから税抜経理方式と税込経理方式のどちらかを選ぶ場合は、両方のメリットを考えて方式を選択すると良いでしょう。
損益計算書の売上高の消費税が税抜処理か税込処理かを確認する方法
会社ごとに税抜処理方式と税込経理方式のどちらかを選択して会計処理をしています。
しかし損益計算書を見るだけでは、消費税が税抜処理なのか税込処理なのかが把握できません。
そこで、ここでは損益計算書の売上高の消費税が、税抜処理か税込処理かを確認する3つの方法を解説していきます。
3つの方法は下記の通りです。
● 個別注記表を確認する
● 法人事業概況説明書を確認する
● 総勘定元帳を確認する
それぞれ確認していきましょう。
個別注記表を確認する
1つ目が、個別注記表を確認することです。
個別注記表とは、貸借対照表や損益計算書などの決算書に関わる補足事項をまとめた表です。
個別注記表に税抜処理なのか、税込経理なのかの記載があるため、確認してみましょう。
自社だけでなく、他社の状況も確認できるため、覚えておくとよいでしょう。
法人事業概況説明書を確認する
2つ目が、法人事業概況説明書を確認することです。
法人事業概況説明書は、法人名や納税地、事業内容などを記載して、確定申告書に添付して税務署に提出する書類です。
法人事業概況説明書に記載する項目の一つに、消費税の経理方式について、税抜か税込かを選択する箇所があります。
自社の確認のときのみに使える方法ですが、確認してみてください。
総勘定元帳を確認する
3つ目が、総勘定元帳を確認することです。
総勘定元帳は、勘定科目ごとに記録される会計帳簿です。
総勘定元帳の売上高のページを確認し、仮受消費税の勘定科目があれば税抜処理をしていることがわかります。
反対に仮受消費税が見当たらなければ、税込経理方式を採用しています。
仕訳帳でも確認できるため、売上の仕訳を確認してみるとよいでしょう。
消費税を納税していない場合は必ず税込処理
もし税抜処理か税込処理かを確認している決算書類を見たときに、消費税を納税していないことがわかった場合は、必ず税込処理になります。
理由は、消費税の免税事業者は税込経理方式になるからです。
出典:国税庁「No.6375 税抜経理方式又は税込経理方式による経理処理」
なお、消費税が免税されるのは、課税期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者です。
免税事業者の定義と、免税事業者は税込経理方式になることを覚えておくとよいでしょう。
まとめ
本記事では、会社にかかる税金の種類や消費税などの税金の決算書への反映方法、また税抜・税込経理方式について解説しました。
会社にかかる税金は、大きく分けて3つに分類され、それぞれ代表的な税金は下記の通りです。
● 利益に対してかかる税金:法人税
● 財産に対してかかる税金:固定資産税
● 消費に対してかかる税金:消費税
消費税などの税金が貸借対照表と損益計算書の決算書類に反映する際、用いられる勘定科目は下記の通りです。
決算書類 | 勘定科目 |
---|---|
貸借対照表 | 未払法人税(もしくは未収法人税)、繰延税金資産、繰延税金負債 |
損益計算書 | 租税公課、法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額 |
また、税抜経理方式と税込経理方式の定義は下記の通りとなります。
● 税抜経理方式:売上や仕入の価格と消費税を分けて、税抜で経理処理を行う方式
● 税込経理方式:売上や仕入の価格と消費税を合算して経理処理を行う方式
税抜経理方式は、決算書が税抜で表示されるため損益計算をする際にわかりやすいことや、消費税率が変わった際に管理がしやすいことなどがメリットです。
一方、税込経理方式のメリットは、消費税をわざわざ分ける必要がないため、仕訳をする際の手間がかからないことなどがあげられます。
税抜経理方式と税込経理方式のどちらを採用するかは、それぞれの方式のメリットや、自社の消費税の管理方法などを考慮して判断するのが大切です。