企業活動の成果を判断する上で欠かせないのが、損益計算書です。
損益計算書は、企業が一定期間(通常は1年間)において、どのくらいの利益を上げたのかを示す財務諸表の一つです。
しかし、損益計算書には専門用語も多く、一見すると分かりにくいと感じてしまう方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、損益計算書の構造や主要な勘定科目、それぞれの科目に関する詳細などを分かりやすく解説します。
損益計算書を理解することで、企業の経営状況をより深く分析できるようになるでしょう。
損益計算書の重要性
損益計算書は、企業の経営状況を判断する上で非常に重要な役割を果たします。
具体的には、以下の点を確認することができます。
● 企業の収益性:売上高や利益の規模を確認することで、企業がどの程度収益を上げているのかを判断することができます。
● 企業の効率性:売上原価や販売費及び一般管理費などの費用を分析することで、企業がいかに効率的に経営を行っているのかを判断することができます。
● 企業の健全性:営業外収益や営業外費用、特別利益や特別損失などの項目を分析することで、企業の財務体質が健全かどうかを判断することができます。
このように、損益計算書は企業の経営状況を多角的に分析するための重要なツールと言えるでしょう。
損益計算書の構造
損益計算書は、主に以下の5つの区分から構成されています。
利益 | 内容 |
---|---|
売上 | 企業が商品やサービスの販売によって得た収益を表します。具体的には、商品売上高、サービス売上高、補助金収入などが含まれます。 |
売上原価 | 商品やサービスを販売するために発生した費用を表します。 原材料費、人件費、製造間接費などが含まれます。 |
営業利益 | 売上高から売上原価を差し引いた額です。企業の主たる営業活動による利益を表します。 |
経常利益 | 営業利益に、営業外収益と営業外費用の差額を加算・減算した額です。 企業の通常の事業活動による利益を表します。 |
当期純利益 | 経常利益から法人税等を差し引いた額です。企業の最終的な利益を表します。 |

損益計算書で使われる主要な勘定科目
損益計算書には、企業の収益や費用を表す様々な勘定科目が使用されます。
以下では、主要な勘定科目とその概要について説明します。
売上高
売上高は、企業が商品やサービスの販売によって得た収益を表す勘定科目です。
具体的には、商品売上高、サービス売上高、補助金収入などが含まれます。
● 売上高の計上基準:売上高は、商品やサービスの所有権が移転した時点で計上されます。
● 売上高に含まれるもの:商品の販売対価、サービスの利用料、補助金収入などが含まれます。
● 売上高に含まれないもの:消費税、仮払金、未収金などは含まれません。
売上原価
売上原価は、商品やサービスを販売するために発生した費用を表す勘定科目です。
原材料費、人件費、製造間接費などが含まれます。
● 売上原価の計上基準:売上原価は、商品やサービスが販売される時点までに発生した費用を計上します。
● 売上原価の構成要素:
直接材料費:商品の製造に必要な材料費
直接労務費:商品の製造に従事する従業員の給与
製造間接費:工場の運営に必要な経費(電気代、水道代、減価償却費など)
● 製造業における売上原価:製造業の場合、上記3つの要素に加えて、期末製品棚卸資産の増加額または減少額を売上原価に計上します。
● 商業における売上原価:商業の場合、仕入高から売上戻り高、値引高を差し引いた額が売上原価となります。
販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は、商品やサービスを販売するために必要な費用を表す勘定科目です。
販売費には、広告宣伝費、販売手数料などが含まれます。
一般管理費には、役員報酬、家賃、減価償却費などが含まれます。
販売費の例:
広告宣伝費:新聞広告費、テレビCM費、インターネット広告費など
販売手数料:販売代理店への手数料
運送費:商品の運送にかかる費用
損害保険料:販売活動に伴う損害を補償するための保険料
一般管理費の例:
役員報酬:役員の給与や賞与
減価償却費:建物や機械などの固定資産の価値減少額
家賃:オフィスや工場の賃料
修繕費:建物や機械などの固定資産の修理費用
通信費:電話代、インターネット料金など
雑費:上記以外の経費
営業外収益
営業外収益は、本業以外の活動によって発生した収益を表す勘定科目です。
投資利益、雑収入などが含まれます。
営業外収益の例
投資利益:株式や債券などの投資によって得た利益
雑収入:不動産の賃貸収入、利息収入など
政府補助金:政府から受けた補助金
災害保険金:地震や台風などの災害によって被った損害を補償するための保険金
営業外費用
営業外費用は、本業以外の活動によって発生した費用を表す勘定科目です。
投資損失、雑損失などが含まれます。
営業外費用の例
投資損失:株式や債券などの投資によって生じた損失
雑損失:火災や盗難などの損害を補償するための保険金
貸倒損失:売掛金などの貸付金が回収不能になった場合の損失
違約金:契約を解除した場合などに支払う違約金
特別利益
特別利益は、通常の営業活動以外で発生した偶発的な利益を表す勘定科目です。
固定資産売却益、災害保険金などが含まれます。
特別利益の例
固定資産売却益:土地や建物などの固定資産を売却して得た利益
災害保険金:地震や台風などの災害によって被った損害を補償するための保険金
訴訟和解金:訴訟によって得た和解金
政府からの特別補助金:政府から特定の目的に対して交付された補助金
特別損失
特別損失は、通常の営業活動以外で発生した偶発的な損失を表す勘定科目です。
固定資産売却損、災害損失などが含まれます。
特別損失の例
固定資産売却損:土地や建物などの固定資産を売却して生じた損失
災害損失:地震や台風などの災害によって被った損害
訴訟和解金:訴訟によって支払う和解金
貸倒損失:売掛金などの貸付金が回収不能になった場合の損失
法人税等
法人税等は、企業が納める法人税や住民税などの法定税金を表す勘定科目です。
法人税等の計算方法
法人税:経常利益に所得税率を乗じて計算されます。
住民税:法人税割額と均等割額の合計額となります。
法人税割額:法人税の所得税率に法人住民税率を乗じて計算されます。
均等割額:都道府県と市町村が定める一定額です。
損益計算書の分析方法
損益計算書を分析するには、以下の方法があります。
損益計算書の各項目を比較分析する:売上高、売上原価、営業利益、経常利益、当期純利益などの各項目を比較することで、企業の収益性や効率性を分析することができます。
損益計算書の比率を算出する:売上高に対する売上原価の比率(粗利率)、営業利益率、経常利益率などの指標を算出することで、企業の効率性を分析することができます。
損益計算書の推移を分析する:過去の損益計算書と比較することで、企業の業績がどのように推移しているのかを分析することができます。
損益計算書と他の財務諸表を比較分析する:貸借対照表やキャッシュフロー計算書などの他の財務諸表と比較分析することで、企業の財務状況をより深く分析することができます。
注意点
損益計算書を分析する際には、以下の点に注意する必要があります。
損益計算書は単独で分析するのではなく、他の財務諸表と合わせて分析する:損益計算書は、企業の経営状況を分析するための重要な財務諸表の一つですが、単独で分析するだけでは十分な情報を得ることができません。貸借対照表やキャッシュフロー計算書などの他の財務諸表と合わせて分析することで、より深い分析が可能になります。
損益計算書には、会計上のルールに基づいて計上された情報が含まれている:損益計算書には、会計上のルールに基づいて計上された情報が含まれているため、必ずしも企業の真の収益性を反映しているとは限りません。分析を行う際には、この点を考慮する必要があります。
損益計算書は過去の情報であり、将来の業績を保証するものではない:損益計算書は、過去の情報であり、将来の業績を保証するものではありません。将来の業績を予測するためには、他の情報も考慮する必要があります。
まとめ
損益計算書は、企業の経営成果を明らかにする重要な財務諸表です。
売上高、売上原価、営業利益、経常利益、当期純利益などの項目を分析することで、企業の収益性、効率性、健全性などを判断することができます。
損益計算書は、投資家や債権者にとっても、企業の投資魅力や信用性を判断する上で重要な情報となります。
また、企業経営者にとっても、経営状況を把握し、改善策を検討する上で役立ちます。
損益計算書を正しく理解し、分析することで、企業の経営状況をより深く洞察することができるでしょう。