住民税には法人住民税と個人住民税があり、個人住民税は所得割額と均等割額の2つで構成されています。
しかし、所得割額と均等割額がどのように違うのか、またどのように計算するのかわからない人も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では住民税の所得割額と均等割額の基礎知識や違い、また計算方法などを解説していきます。
さらに住民税と所得税で控除額が同じものや異なるもの、住民税の税額控除なども解説しています。
住民税にお悩みの人は、ぜひ最後までお読みください。
法人税の概要と種類について
住民税は、法人住民税と個人住民税の2つの種類があります。
そこで、ここでは法人税の概要の種類や法人住民税・個人住民税について解説します。
また、個人住民税についての納税義務者なども解説しますので、確認していきましょう。
法人住民税
住民税には、企業が支払う法人住民税と個人が支払う個人住民税があり、ここでは法人住民税について解説していきます。
まず法人税とは法人、つまり企業が行った事業活動により得た所得に課される税金のことです。
損益計算書上は法人税等と一つにまとめられていますが、法人税・法人住民税・法人事業税の3つから構成されています。
その中でも法人住民税・法人事業税の2つは、地方自治体に納付する地方税という特徴を持っています。
また、法人住民税は法人税割額と均等割額の2つを計算した合計金額になることも特徴の一つです。
個人住民税
個人住民税は、個人が住んでいる市区町村に支払う税金です。
その地域に住んでいる人への行政サービスの費用を、住んでいる人々が広く負担しているのが個人住民税です。
また、住民税は道府県民税と市町村民税の2つで構成されていますが、納付する際は各市町村に個人住民税を一括して納めることになります。
東京都については道府県民税を都民税、市町村民税を区市町村民税と呼びますが、各区市町村に一括して納めることに変わりありません。
なお、個人住民税は所得割額と均等割額の2つを計算した金額の合計になります。
住民税の納税義務者とは
個人住民税の納税義務者は、1月1日時点でその地域に住んでいる人です。
例えば、1月1日時点で東京都に住んでいて、1月31日に埼玉県に引越しをした場合、住民税は1月1日時点で住んでいた東京都に納付することになります。
住民税は前年の所得によって決まる
納付する個人住民税の金額は、前年の所得によって決まります。
前年度の所得が確定後、当年の6月に住民税の金額が決定し、会社員の場合は翌年の5月まで毎月給与から引かれて支払われます。
会社員以外の個人事業主などは各市区町村から届く納税通知書に従って、年4回で分割して納税することになることも覚えておくとよいでしょう。
住民税の申告が必要な人とは
個人事業主の場合で所得税の確定申告をしている人は、確定申告書の内容が各市区町村に回り、確定申告書の内容にもとづいて住民税額が決まります。
したがって、確定申告をしていれば別途住民税の申告などを提出する必要はありません。
また、会社員の場合も基本的には住民税を申告する必要はありません。
勤務先から各市区町村に給与支払報告書が提出され、提出された内容をもとに各市区町村で住民税の税額計算を行います。
そのため、住民税のみを申告する人はあまり多くありませんが、もし住民税の申告を行う場合は1月1日時点で住んでいた市区町村に3月15日までに申告する必要があります。
住民税を構成する「所得割」と「均等割」の概要と違い
ここでは、個人住民税を構成する「所得割」と「均等割」について概要と違いを詳しくみていきます。
下記の4つについて解説しますので、それぞれ確認していきましょう。
・住民税の均等割額とは
・住民税の所得割額とは
・住民税の所得割の非課税基準とは
・住民税の「利子割額」「配当割額」とは
住民税の均等割額とは
個人住民税の均等割額は所得による変動がなく、均等に課される税額のことです。
また、均等割額は道府県民税(東京都の場合は都民税)と市町村民税(東京都の場合は区市町村民税)の合計金額です。
例えば、2023年現在の東京都では、個人都民税は1,500円、個人区市町村民税は3,500円のため、2つ合わせた5,000円が均等割額になります。
ただし、収入が少なく一定金額に満たない人の場合は、均等割額が課されないケースもあります。
住民税の所得割額とは
個人住民税の所得割額は、所得金額により変動する住民税額で、前年の所得によって決まります。
住民税の課税標準額は所得税と同様に、所得金額から所得控除金額を差し引いて算出されます。
また、標準税率は道府県民税(東京都は都民税)の4%、市町村民税(東京都は区市町村民税)の6%を足した一律10%になっていることを覚えておきましょう。
なお、以前までは標準税率は累進課税でしたが、現在では税制改正により一律10%となりました。
住民税の所得割の非課税基準とは
前年の合計所得金額が下記の金額以下の場合は、住民税の所得割が非課税になります。
・扶養者がいない人:35万円+10万円(令和3年度より加算)
・扶養者がいる人:35万円×(本人+被扶養者の人数)+32万円+10万円(令和3年度より加算)
また、下記の条件に当てはまる人は所得割だけでなく均等割も非課税、つまり住民税が非課税になります。
・1月1日時点で生活保護法による生活扶助を受けている人
・障害者、未成年者、ひとり親、寡婦に該当する人で、前年の合計所得が135万円以下(給与収入の場合は204万4千円未満)の人
・前年の合計所得金額が下記の金額以下の人
扶養者がいない人:35万円+10万円(令和3年度より加算)
扶養者がいる人:35万円×(本人+被扶養者の人数)+21万円+10万円(令和3年度より加算)
住民税の「利子割額」「配当割額」とは
個人住民税には、ここまで解説をしてきた均等割額と所得割額以外に、利子割額・配当割額・株式等譲渡所得割額もあります。
それぞれの意味は下記の通りなので、確認しておきましょう。
・利子割額:預貯金の利子などの支払いを受ける際に、ほかの所得とは別に5%の一律分離課税が行われること
・配当割額:上場株式などの配当による所得に対し、住民税5%が課されること
・株式等譲渡所得割額:源泉徴収を選択した特定口座で、上場株式などの譲渡による所得に対し、住民税5%が課されること
住民税の所得割額の計算方法
住民税の所得割額の計算方法は下記の通りです。
所得割額=(所得金額ー所得控除額)×税率(道府県民税:4%+市町村民税:6%)ー税額控除
※(所得金額ー所得控除額)で課税所得金額を求めています。
住民税の所得割額を計算する際は税率が一律になりますが、所得税額を算出する計算式と似ていることが分かるでしょう。
住民税と所得税で控除額が同じもの
前の章で、住民税の所得割額の計算方法と、所得税の計算方法が似ていることをお伝えしました。
それでは、住民税と所得税の所得控除額が同じものや異なるものはあるのでしょうか?
まず、住民税と所得税で所得控除額が同じものは下記の4つが挙げられるので、確認しておきましょう。
・社会保険料控除:前年に支払った金額が控除対象になる
・小規模共済等掛金控除:前年に支払った金額が控除対象になる
・医療費控除:所得税と同じ算出方法で控除額を求める
・雑損控除:所得税と同じ算出方法で控除額を求める
住民税と所得税で控除額が異なるもの
一方、住民税と所得税で控除額が異なるものは、下記の8つです。
・基礎控除(所得税48万円に対し 住民税43万円)
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・障がい者控除
・寡婦控除・特定寡婦控除
・勤労学生控除
・配偶者控除・配偶者特別控除
・扶養控除
それぞれ確認していきましょう。
なお、住民税の控除額は所得税の控除額に比べて低く設定してあるため、住民税の課税所得金額は所得税の課税所得金額よりも高くなります。
基礎控除(所得税48万円に対し 住民税43万円)
基礎控除は、全ての納税義務者が課税標準額から差し引ける金額のことです。
税制改正により、令和2年より所得税の基礎控除が10万円引き上げられて下記の金額になりました。
所得税:48万円
住民税:43万円
※合計所得金額が2,400万円以下のケース
生命保険料控除
生命保険料控除は、生命保険や年金保険などにより保険料を支払った際に受けられる控除です。
住民税の生命保険料控除の金額は、下記の通りです。
・旧制度適用契約のみ:限度額7万円(所得税は10万円)
・新制度適用契約のみ:限度額7万円(所得税は12万円)
・旧制度適用契約と新制度適用契約の両方に加入:限度額7万円(所得税は12万円)
地震保険料控除
地震保険料控除は、地震保険料を支払った際に受けられる控除です。
住民税における地震保険料控除の限度額は2万5,000円で、所得税(限度額5万円)の半分の金額です。
障がい者控除
本人もしくは控除対象の配偶者などに障害者がいる際に受けられる控除です。
障害者控除は障害者、特別障害者、同居特別障害者の3つに分けられ、それぞれの控除額は下記の通りです。
区分 | 住民税 | 所得税 |
障害者 | 26万円 | 27万円 |
特別障害者 | 30万円 | 40万円 |
同居特別障害者 | 53万円 | 75万円 |
寡婦控除・特定寡婦控除
寡婦控除・特定寡婦控除とは、寡婦の場合に受けられる控除です。
寡婦控除は税制改正があり、令和3年の住民税から寡夫・特別の寡婦への控除が廃止になり、ひとり親控除が創設されました。
寡婦控除・ひとり親控除の住民税・所得税の詳細は下記の通りです。
控除の種類 | 住民税 | 所得税 |
寡婦控除 | 26万円・本人が女性・前年の合計所得金額が500万円以下で、扶養親族なしもしくは子以外の扶養親族あり | 27万円・本人が女性・前年の合計所得金額が500万円以下で、扶養親族なしもしくは子以外の扶養親族あり |
ひとり親控除 | 30万円・性別関係なし・前年の合計所得金額が500万円以下で、生計を一にする子あり | 35万円・性別関係なし・前年の合計所得金額が500万円以下で、生計を一にする子あり |
勤労学生控除
勤労学生控除は、合計所得金額が75万円以下(給与収入130万円以下)の勤労学生の場合に受けられる控除です。
勤労学生控除の金額は下記の通りです。
・住民税:26万円
・所得税:27万円
配偶者控除・配偶者特別控除
配偶者控除・配偶者特別控除は、控除対象の配偶者がいる場合に受けられる控除です。
世帯主である納税義務者本人の合計所得金額が年間で1,000万円以下の人が対象で、合計所得金額が48万円以下の配偶者がいる場合に、配偶者控除が受けられます。
また、配偶者の合計所得金額が48万円を超えていても、133万円未満であれば配偶者特別控除が受けられます。
扶養控除
子どもや両親など、扶養をしている親族がいる場合に受けられる控除です。
扶養されている親族の年齢によって区分が決められ、控除額が決まります。
扶養控除の詳細は下記の通りです。
年齢 | 区分 | 住民税 | 所得税 |
16~18歳、23~69歳 | 一般の控除対象扶養親族 | 33万円 | 38万円 |
19歳~22歳 | 特定扶養親族 | 45万円 | 63万円 |
70歳以上 | 老人扶養家族 (同居老親等以外) | 38万円 | 48万円 |
老人扶養家族(同居老親等) | 45万円 | 58万円 |
住民税の「税額控除」と種類について
前の章では、下記の所得割額の計算式にある所得控除額について解説しました。
所得割額=(所得金額ー所得控除額)×税率(道府県民税:4%+市町村民税:6%)ー税額控除
そこで、この章では所得割額の計算式で最後に差し引いている税額控除について解説していきます。
解説するのは下記の7つの税額控除です。
・調整控除
・配当控除
・住宅借入金等特別税額控除
・寄附金税額控除
・外国税額控除
・配当割額控除
・株式譲渡所得割額控除
それぞれ確認していきましょう。
調整控除
調整控除は、国から地方への税源移譲に伴い、住民税と所得税において基礎控除や扶養控除などの人に対する控除(人的控除)の差により、税の負担増とならないように調整するための控除です。
個人住民税の所得割額から一定額を控除することで調整します。
配当控除
配当控除は、国内株式の配当金などで配当所得があるときに受けられる控除です。
配当所得を総合課税で確定申告した際に、一定金額が控除されます。
住宅借入金等特別税額控除
住宅借入金等特別税額控除は、住宅ローン控除のことです。
所得税の住宅ローン控除の適用を受けたものの、所得税で控除しきれなかった金額を住民税から控除できます。
寄附金税額控除
寄付金税額控除は、控除対象の寄付金に該当する寄付を行った場合、個人住民税の所得割から税額控除できる制度のことです。
例えば、ふるさと納税が寄付金税額控除に該当します。
外国税額控除
外国で得た給与などの所得について、その国の所得税などに相当する税金を納税している場合は、一定の計算方法により住民税から控除できる制度です。
配当割額控除
上場株式などの配当所得は、上場会社により源泉徴収されるため原則申告不要です。
ただし、納税義務者の選択により配当所得の申告を行った場合は二重課税になってしまうため、すでに徴収された金額を住民税から控除できるのが配当割額控除です。
株式譲渡所得割額控除
源泉徴収ありを選択した特定口座内の上場株式などの譲渡に係る所得については、証券会社などが源泉徴収を行っているため原則申告不要です。
ただし、配当割額控除と同様に納税義務者の選択により、上場株式などの譲渡に係る所得の申告を行った場合は二重課税になってしまいます。
そのため、すでに徴収された金額を住民税から控除できるのが、株式等譲渡所得割額控除です。
住民税の納付方法と還付方法
住民税の納付方法には、普通徴収と特別徴収の2つの方法があります。
また、払い過ぎた住民税については還付されます。
そこで、ここでは住民税の納付方法と還付方法について確認していきましょう。
普通徴収
普通徴収は、住民税の納税通知書にもとづいて徴収する方法です。
各市区町村は、納税者からの申告内容をもとに住民税額を計算し、毎年6月に納税者へ納税通知書を発送します。
納税通知書を受け取った納税者は、年4回に分けて住民税を市区町村に納付することになります。
特別徴収
特別徴収は、会社などの特別徴収義務者が納税者から住民税を徴収して納付することです。
各市区町村は、会社員などの給与所得者の住民税額を計算し、会社などの給与支払者に通知します。
通知を受けた会社は、納税を行う会社員の毎月の給与から天引きし、市区町村へ住民税を納付します。
なお、納付する期間は6月から翌年の5月までです。
ただし、給与所得以外の所得があり、自身で確定申告を行う人は会社経由ではなく、自分自身で住民税を納付することも可能です。
住民税の還付受け取り方法と条件
特別徴収された住民税は、所得税の確定申告をし、税金を納め過ぎと判断された場合は税金が還付されます。
還付される際、まずは納める必要のある住民税額があれば差し引かれ、それでも控除ができない場合に市区町村から税金が還付される仕組みになっています。
住民税を節約できる「ふるさと納税」
ふるさと納税は、寄付金のうち2,000円を超える部分の金額について、住民税の控除、所得税の還付を受けられる制度です。
払いすぎによる住民税の還付以外にも、ふるさと納税を行うことで住民税が控除される仕組みがあることを覚えておきましょう。
まとめ
本記事では、住民税について詳しく解説しました。
住民税は法人住民税と個人住民税があり、法人住民税は企業が支払う税金で、個人住民税は個人が住んでいる市区町村に支払う税金です。
個人住民税は所得割額と均等割額で構成され、それぞれの考え方は下記の通りです。
・所得割額:所得金額により変動し、前年の所得によって税額が決まる
・均等割額:所得による変動がなく、均等に課される
また、住民税と所得税の所得控除額では、同じ点と異なる点があることをお伝えしました。
住民税と所得税で所得控除額が同じものは、下記の4つです。
・社会保険料控除:前年に支払った金額が控除対象になる
・小規模共済等掛金控除:前年に支払った金額が控除対象になる
・医療費控除:所得税と同じ算出方法で控除額を求める
・雑損控除:所得税と同じ算出方法で控除額を求める
住民税と所得税で所得控除額が異なるのは、下記の8つです。
・基礎控除(所得税48万円に対し 住民税43万円)
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・障がい者控除
・寡婦控除・特定寡婦控除
・勤労学生控除
・配偶者控除・配偶者特別控除
・扶養控除
記事本文とあわせて、所得控除額の同じ点と異なる点を確認しておきましょう。
さらに、住民税の税額控除は下記の7つがあることもお伝えしました。
・調整控除
・配当控除
・住宅借入金等特別税額控除
・寄附金税額控除
・外国税額控除
・配当割額控除
・株式譲渡所得割額控除
それぞれを細かく理解するのは大変なため、まずは住民税の全体像を理解するところから始めるとよいでしょう。