社用車として車を購入した場合、新車でも中古車でも減価償却ができます。
しかし、新車と中古車でそれぞれどのように減価償却を行うか分からない人も多いことでしょう。
そこで、本記事では車の減価償却費の計算方法を徹底解説していきます。
さらに、車を減価償却する際の注意点や、新車と中古車の減価償却の違いについても解説しますので、車の減価償却費でお悩みの人はぜひ最後までお読みください。
新車も中古車も減価償却で経費にできる
事業で使用するための役員車や社用車は、新車でも中古車でも固定資産の扱いとなり、減価償却をすることで経費にできます。
固定資産とは、取得価額が10万円以上で使用可能期間が1年以上のものです。
車だけでなく機械装置や工具、またパソコンなどの事務機器も該当します。
そして、固定資産と判断された場合、使用を開始した年度の経費で一括計上せず、耐用年数にもとづいて減価償却を行うことで分割して費用化していきます。
また、減価償却を行う目的は、収益と費用を対応させて損益計算を行うためです。
新車も中古車も、固定資産に該当する車であれば減価償却で経費にできることを覚えておきましょう。
車の減価償却費が決まる4つのポイント
車の減価償却費が決まるには、下記の4つのポイントがあります。
・車両の耐用年数
・車両の取得価額
・新車か中古車か
・購入かリースか
減価償却を行う上で大切なポイントのため、それぞれ解説していきます。
車両の耐用年数
耐用年数は、固定資産が使用可能な期間のことです。
車両の耐用年数は、新車と中古車で考え方が異なるため、それぞれ解説していきます。
まずは、新車のケースです。
新車は、国税庁が定めた法定耐用年数を使い、一般用のものに分類される車の耐用年数は下記の通りです。
車両の種類(一般用のもの) | 耐用年数 |
軽自動車 | 4年 |
普通自動車 | 6年 |
貨物車 | ダンプ式:4年、その他:5年 |
もし、運送事業用や貸自動車業用のものなどに該当する車の耐用年数を知りたい人は、下記の国税庁のホームページをご覧ください。
出典:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」
次に中古車のケースでは、取得した時点ですでに価値が下がっていると考えられるため、今後使用できる期間を見積もって耐用年数を決めて、減価償却を行う必要があります。
ただし、もし見積もるのが難しい場合は簡便法で計算でき、下記のどちらのケースに当てはまるかを確認して、該当する方の計算式を使って計算を行ってください。
・中古資産を取得時、既に全ての耐用年数を経過した場合:法定耐用年数の20%
・法定耐用年数の一部を経過した場合:(法定耐用年数ー経過した年数)+(経過した年数×20%)
なお、計算した結果が端数の場合は小数点以下の切り捨てをし、2年未満の場合は耐用年数を2年とします。
車両の取得価額
取得価額は固定資産の購入価格のことですが、購入にかかった付随費用も取得価額に含めることに注意をしましょう。
ただし、車両の場合は、購入にかかった費用全てが取得価額にはなりません。
車両の購入にかかった主な費用について、会計処理の区分をまとめた表は下記の通りです。
項目 | 会計処理の区分 |
自動車本体の価格特別仕様価格付属品納車費用 | 取得原価に含める |
自動車税保険料 | 経費で処理できる |
リサイクル預託金 | 資産に計上する |
新車か中古車か
新車であれば、税法で決められた耐用年数を使用して減価償却を行うことで、減価償却費が決まります。
一方、中古車であれば使用できる期間を見積もるか、簡便法による計算により耐用年数を算出して減価償却を行うことになります。
そこで、具体例をもとに中古車の簡便法による耐用年数の算出方法を確認していきましょう。
計算式は下記の通りです。
・中古資産を取得時、既に全ての耐用年数を経過した場合:法定耐用年数の20%
・法定耐用年数の一部を経過した場合:(法定耐用年数ー経過した年数)+(経過した年数×20%)
まずは1のケースです。
耐用年数6年の普通自動車が8年経過していた場合は、既に耐用年数を経過しており1のケースに当てはまるため、下記の計算式になります。
法定耐用年数(6年)×20%=1.2年
計算結果は1.2年になりましたが、2年未満になった場合の耐用年数は2年になります。
次に、2のケースです。
耐用年数6年の普通自動車が2年経過していた場合は、法定耐用年数の一部を経過しており2のケースに当てはまるため、下記の計算式になります。
(法定耐用年数(6年)ー経過した年数(2年))+(経過した年数(2年)×20%)=4.4年
計算した結果の小数点以下の端数は切り捨てのため、耐用年数は4年になります。
購入かリースか
車を購入した場合は、新車でも中古車でも減価償却を行い、算出された減価償却費を計上します。
一方リースの場合は、減価償却費の代わりに毎月リース料を計上することになり、リース料に保険料や税金が含まれているのが特徴です。
もし車を購入した場合は、購入するためにかかった諸費用を取得価額に含める、もしくは経費に計上するなどの判断をしながら、減価償却を行う必要があります。
しかし、リースの場合は減価償却を行わずに、決められたリース料を支払うため、会計処理の手間が少ない取引といえるでしょう。
なお、毎月リース料を計上するのは、リース期間が終了したら返却し、中途解約が可能なオペレーティング・リース取引の場合です。
中途解約ができないファイナンス・リース取引の場合は、通常の固定資産と同じように、リース期間で減価償却を行うことに注意をしてください。
車の減価償却費の計算方法
車の減価償却費の計算方法には、購入した場合であれば定額法と定率法、リースであればリース期間定額法があるため、それぞれ解説していきます。
定額法
定額法は、毎年均等に減価償却費を計上する計算方法です。
計算式は下記の通りです。
定額法の減価償却費=車の取得価額×定額法の償却率
もし、会計期間の途中で取得をした場合は、一ヶ月当たりの減価償却費を算出し、当年の月数分の減価償却費を計上してください。
定率法
定率法は、初年度に多額の減価償却費を計上し、翌年から減っていく計算方法です。
計算式は下記の通りです。
定率法の減価償却費=帳簿価額(未償却残高)×定率法の償却率
なお、会計期間の途中で取得した際は、定額法と同様に当年の月数分の減価償却費を計上してください。
リース期間定額法
リース期間が1年以上、リース金額が300万円以上でファイナンス・リース取引に該当する契約の場合は、リース期間定額法による減価償却を行います。
リース期間定額法は、償却期間をリース期間と考え、リース期間中に定額で減価償却を行う方法です。
ただし、リース期間が1年に満たないケースなどのオペレーティング・リース取引の場合は、減価償却を行わずに毎月リース料を計上します。
車を減価償却する際の注意点
車の減価償却を行う際は、さまざまなケースが考えられます。
そこで、ここでは車を減価償却する際の下記の注意点について解説していきます。
・減価償却は月割なので決算月の翌月の購入がベスト
・下取り時に売却額によっては所得税がかかる
・経費計上できるのは事業で使った分のみ
・自動車保険の被保険者をだれにするのかが重要
・資本的支出が再取得価額の50%を超えているか
減価償却は月割なので決算月の翌月の購入がベスト
減価償却は月割で行うため、会計期間の後半に計上すると数ヶ月しか減価償却できずに、節税効果を受けられません。
そのため節税効果を大きく受けるには、決算月の翌月に車を購入し、期初から減価償却を行うのがベストといえるでしょう。
下取り時に売却額によっては所得税がかかる
法人は売却益が出れば固定資産売却益の勘定科目を使うだけですが、個人事業主は売却益が出た場合、金額により譲渡所得の申告が必要になるため所得税がかかります。
譲渡所得の申告が必要になるのは、譲渡益が50万円を超えた場合のため、覚えておきましょう。
経費計上できるのは事業で使った分のみ
車を仕事とプライベートで兼用している場合、経費計上できるのは事業で使った分のみです。
事業の割合は、税務調査が入っても合理的に説明できる基準で算出する必要があるため、当年の走行距離のうち事業のための走行距離を算出して、割合を出すのがよいでしょう。
自動車保険の被保険者をだれにするのかが重要
自動車保険の被保険者を法人にすれば、保険料の全額を損金に計上できるため、被保険者をだれにするのかは重要なことです。
個人が支払う自動車保険の控除を受けられる損害保険料控除は、平成19年に廃止されました。
したがって、個人事業主でも自動車保険の被保険者を法人にすると、節税効果を受けられます。
資本的支出が再取得価額の50%を超えているか
中古資産を事業で使うために、資本的支出を行うことがあります。
資本的支出は、原状回復のためのものではなく、性能を高めて使用できる期間を延長するために行った支出のことです。
資本的支出が中古資産の取得価額の50%を超えていれば、法定耐用年数により減価償却を行います。
簡便法による計算は認められないため、注意をしてください。
車購入時の仕訳や勘定科目
車の購入方法により、仕訳や勘定科目が異なります。
そこで、ここでは下記の3つのケースでの仕訳や勘定科目を解説していきます。
・現金で社用車を購入した場合
・ローンで社用車を購入した場合
・リース契約で社用車を取得した場合
なお、3つのパターンとも、下記の条件の車を購入したとします。
項目 | 金額 |
車の本体価格 | 300万円 |
特別仕様費用 | 30万円 |
納車費用 | 1万円 |
自動車税 | 4万円 |
自賠責保険料 | 3万円 |
検査登録手続の代行費用 | 5万円 |
現金で社用車を購入した場合
現金で社用車を購入した場合、車の本体価格・特別仕様価格・納車費用を合計した金額を、固定資産の車両運搬具として計上します。
その他の項目ごとの勘定科目と仕訳は、下記の通りです。
・自動車税:租税公課
・自賠責保険料:保険料
・検査登録手続の代行費用:支払手数料
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
車両運搬具 | 3,310,000円 | 現金 | 3,430,000円 |
租税公課 | 40,000円 | ||
保険料 | 30,000円 | ||
支払手数料 | 50,000円 |
ローンで社用車を購入した場合
ローンで社用車を購入したときは、現金で購入した仕訳に加えて、分割手数料として長期前払費用を計上します。
ローンの分割手数料を30万とした場合の仕訳は、下記の通りです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
車両運搬具 | 3,310,000円 | 長期未払金 | 3,730,000円 |
租税公課 | 40,000円 | ||
保険料 | 30,000円 | ||
支払手数料 | 50,000円 | ||
長期前払費用 | 300,000円 |
貸方は、まだ支払っておらず今後一年以上の支払いを想定しているため、長期未払金で計上します。
リース契約で社用車を取得した場合
中途解約ができないファイナンス・リース取引の場合、リース料の合計をリース資産として借方に計上し、通常の固定資産と同様に減価償却を行うことになります。
貸方は、リース債務を計上するのが一般的です。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
リース資産 | 3,000,000円 | リース債務 | 3,000,000円 |
もし、賃貸借取引のオペレーティング・リース取引の契約の場合は、借方にリース料、貸方に現金の仕訳をして、毎月リース料の支払いを行います。
新車と中古車だとお得なのはどっち?
ここまで車の減価償却について解説しましたが、新車と中古車だと会計上でお得なのはどちらなのでしょうか?
新車と中古車のそれぞれのケースで減価償却費を算出して、比較していきます。
新車の場合
耐用年数6年、取得価額200万円の新車のケースで、定額法で計算した結果が下記です。
200万円×0.167(定額法の償却率)=33万4,000円
定額法のため、上記の償却費が毎年計上されることになります。
中古車の場合
次に中古車です。
中古車の場合は耐用年数が新車より短くなるため、耐用年数4年で取得価額200万円の定額法で計算します。
200万円×0.250(定額法の償却率)=50万円
新車と中古車で同じ購入価格で入手したケースで比較をすると、耐用年数が短くなる中古車の減価償却費の方が16万6,000円多くなります。
年間の節税効果を大きく受けるには、同じ購入価格であれば中古車を取得した方がよいといえるでしょう。
減価償却を短期間でしたいときの耐用年数
新車は耐用年数が決められているため、減価償却を短期間でしたい場合は中古車を取得しましょう。
中古車の普通自動車の場合は、46ヶ月(3年10ヶ月)以上経過した中古車を購入すれば、最も短い耐用年数の2年で減価償却できます。
計算式は下記の通りです。
(法定耐用年数(6年)ー経過した年数(3.83年))+(経過した年数(3.83年)×20%)=2.936年(小数点以下の端数切り捨てで2年)
もし、46ヶ月以上経過している中古車がなければ、31ヶ月~45ヶ月であれば耐用年数3年、16ヶ月~30ヶ月であれば耐用年数4年のため、該当の中古車を選ぶとよいでしょう。
また、軽自動車の場合は16ヶ月(1年4ヶ月)以上経過していれば、耐用年数2年になります。
計算式は下記の通りです。
(法定耐用年数(4年)ー経過した年数(1.33年))+(経過した年数(1.33年)×20%)=2.936年(小数点以下の端数切り捨てで2年)
中古車を購入する際は、中古車の状態ももちろん重要ですが、減価償却の面でもメリットの多いものを選ぶとよいでしょう。
中古車を購入する場合は何年落ちがお得?
中古車を購入する場合は、短期間で減価償却できれば節税効果を大きく受けられるため、お得といえるでしょう。
通常の減価償却を行う際に、最も短い耐用年数2年となるのは、普通自動車が3年10ヶ月落ち、軽自動車が1年4ヶ月落ちの中古車のときです。
中古車を探すときに、会計上で有利かどうかも考慮に入れて探してみてください。
さらに、使用開始を会計年度の初月にすれば、1年間分の減価償却費を計上できるため、購入時期も気にしてみるとよいでしょう。
まとめ
本記事では、車の減価償却費の計算方法について解説しました。
減価償却費は、下記の4つのポイントで決まることを覚えておいてください。
・車両の耐用年数
・車両の取得価額
・新車か中古車か
・購入かリースか
また、車の減価償却費の計算方法には下記の3つの方法があります。
・定額法
・定率法
・リース期間定額法
とくに注意すべきなのが、新車と中古車の減価償却の違いです。
新車でも中古車でも減価償却を行えますが、耐用年数の考え方が異なる点に注意をしましょう。
新車は税法で決められた耐用年数を使用しますが、中古車の場合は今後使用できる期間を見積もって、耐用年数を決める必要があります。
ただ、見積もるのが難しい場合は下記の簡便法で計算し、耐用年数を算出してください。
・中古資産を取得時、既に全ての耐用年数を経過した場合:法定耐用年数の20%
・法定耐用年数の一部を経過した場合:(法定耐用年数ー経過した年数)+(経過した年数×20%)
中古車は新車に比べて耐用年数が短くなるため、短期間で減価償却を行うことが可能です。
社用車の購入を考えている人は、新車だけでなく中古車も視野に入れて、自社にメリットのある車を選ぶとよいでしょう。