MENU

中古資産の減価償却費の計算方法と耐用年数を具体例と共に解説

減価償却費 中古資産 

資産を取得した際に行う減価償却は、新品の資産だけでなく、中古資産を取得したときにも行う必要があります。

しかし、新品の資産に関する減価償却費の計算方法を知っていても、中古資産の減価償却費の計算方法を知らない人が多いのではないでしょうか。

そこで、本記事では中古資産の減価償却費の計算方法について、詳しく解説していきます。

中古資産の耐用年数の考え方や、減価償却費の計算の具体例も解説しますので、ぜひ最後までお読みください。

目次

減価償却資産別の法定耐用年数

減価償却を行う際は、税法で決められた法定耐用年数を使用します。

中古資産の減価償却費の計算方法を解説する前に、新品の資産を減価償却する際の法定耐用年数を確認していきましょう。

ここでは、例として建物・車両・器具や備品の法定耐用年数を見ていきます。

なお、法定耐用年数を詳しく知りたい人は、下記の国税庁のホームページより確認してみてください。

出典:国税庁ホームページ「主な減価償却資産の耐用年数表

建物の法定耐用年数

建物の法定耐用年数のうち、主なものは下記の通りです。

スクロールできます
構造・用途細目耐用年数
木造・合成樹脂造のもの事務所用のもの24
店舗用・住宅用のもの22
飲食店用のもの20
旅館用・ホテル用・病院用・車庫用のもの17
公衆浴場用のもの12
工場用・倉庫用のもの(一般用)15
木骨モルタル造のもの事務所用のもの22
店舗用・住宅用のもの20
飲食店用のもの19
旅館用・ホテル用・病院用・車庫用のもの15
公衆浴場用のもの11
工場用・倉庫用のもの(一般用)14
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの事務所用のもの50
住宅用のもの47
飲食店用のもの
延べ面積のうちに占める木造内装部分の面積が30%を超えるもの34
その他のもの41
旅館用・ホテル用のもの
延べ面積のうちに占める木造内装部分の面積が30%を超えるもの31
その他のもの39
店舗用・病院用のもの39
車庫用のもの38
公衆浴場用のもの31
工場用・倉庫用のもの(一般用)38

車両の法定耐用年数

車両の法定耐用年数のうち、主なものは下記の通りです。

スクロールできます
構造・用途細目耐用年数
一般用のもの(特殊自動車・次の運送事業用等以外のもの)自動車(2輪・3輪自動車を除く)
 小型車(総排気量が0.66リットル以下のもの)4
 貨物自動車
  ダンプ式のもの4
  その他のもの5
 報道通信用のもの5
 その他のもの6
運送事業用・貸自動車業用・自動車教習所用のもの自動車(2輪・3輪自動車を含み、乗合自動車を除く)
 小型車(貨物自動車にあっては積載量が2トン以下、その他のものにあっては総排気量が2リットル以下のもの)3
 大型乗用車(総排気量が3リットル以上のもの)5
 その他のもの4

器具や備品の法定耐用年数

器具や備品の法定耐用年数のうち、主なものは下記の通りです。

スクロールできます
構造・用途細目耐用年数
家具、電気機器、ガス機器、家庭用品事務机、事務いす、キャビネット
 主として金属製のもの15
 その他のもの8
応接セット
 接客業用のもの5
 その他のもの8
ベッド8
児童用机、いす5
事務機器、通信機器電子計算機
 パーソナルコンピュータ(サーバー用のものを除く)4
 その他のもの5
インターホーン、放送用設備6
電話設備その他の通信機器
 デジタル構内交換設備、デジタルボタン電話設備6
 その他のもの10

新品と中古資産の計算方法の違い

新品と中古資産の減価償却を行う際の違いは、耐用年数の決め方です。

新品でも中古資産でも、減価償却を行う際は耐用年数にもとづいて取得価額を分割して費用化する必要があります。

また、耐用年数は前の章で解説したように構造や用途などにより区別され、国税庁により資産の種類ごとに決められています。

注意点は、新品は法定耐用年数を用いて減価償却を行いますが、中古資産は個別に耐用年数を設定して減価償却費の計算を行うことです。

後ほど中古資産の耐用年数の計算方法を解説しますので、参考にしてください。

減価償却費を求めるための2つの計算法

減価償却費を求めるためには、定額法と定率法の2つの計算方法があるため、それぞれ解説していきます。

定額法

定額法は、毎年均等に減価償却費を計上する計算方法で、計算式は下記の通りです。

減価償却費=取得価額×償却率(定額法)

なお、年度の途中で資産を取得した場合は、取得した時点から残りの月数分の減価償却費を計上する必要があります。

計算する場合は、下記の計算式を用いてください。

減価償却費=取得価額×償却率(定額法)×(残りの月数÷会計期間の月数)

定率法

定率法は、償却初年度に多くの減価償却費を計上し、年々減価償却費が減少していく計算方法で、計算式は下記の通りです。

減価償却費=未償却残高×償却率(定率法)

定率法の場合も、年度の途中で取得した場合は、下記の計算式で減価償却費を算出するとよいでしょう。

減価償却費=未償却残高×償却率(定率法)×(残りの月数÷会計期間の月数)

中古資産の耐用年数の計算方法

中古資産は取得時点ですでに使用されているため、新品の資産のときのように法定耐用年数をそのまま使えません。

中古資産の耐用年数を求めるには、見積法と簡便法があるためそれぞれ解説していきます。

なお、中古資産を取得したときの価格が、中古資産と同じ新品を買ったときの価格の50%以上の場合は、中古資産であっても法定耐用年数を使用することに注意をしてください。

見積法

中古資産を取得したときからの使用可能期間を、合理的に見積もって耐用年数とする見積法があります。

もし、見積法で算出できないときは、次で説明する簡便法をお使いください。

簡便法

見積法で算出するのが難しい場合は、簡便法で用いる計算式を使って耐用年数を算出してください。

これから2つの計算方法を解説しますので、該当するケースの計算式を用いて中古資産の耐用年数を求めましょう。

①法定耐用年数の全てを経過した中古資産

中古資産を取得した時点で、すでに法定耐用年数の全てを経過していた場合は、下記の計算式で耐用年数を求めます。

中古資産の耐用年数=法定耐用年数×20%

なお、求めた答えの端数は切り捨てで、2年未満は2年とします。

例えば、法定耐用年数が12年の中古の機械装置を取得したときに、14年経過していた場合を考えてみましょう。

すでに法定耐用年数の全てを経過しているため、上記の計算式に当てはめて計算します。

法定耐用年数(12年)×20%=2.4年

端数を切り捨てて、耐用年数は2年と求められます。

②法定耐用年数の一部を経過した中古資産

次に、中古資産を取得した時点で法定耐用年数の一部を経過していた場合は、下記の計算式を用います。

中古資産の耐用年数=(法定耐用年数ー経過した年数)+(経過した年数×20%)

例えば、法定耐用年数が12年の中古の機械装置を取得したときに3年が経過していた場合は法定耐用年数の一部を経過しているため、上記の計算式に当てはめて計算しましょう。

(法定耐用年数(12年)ー経過した年数(3年))+(経過した年数(3年)×20%)=9+0.6=9.6

端数は切り捨てるため、上記のケースの中古資産は耐用年数が9年と求められます。

少額減価償却資産の一括償却

取得した資産が10万円以上30万円未満の場合、会計年度で300万円まで一括で経費計上できる少額減価償却資産の特例がありますが、新品だけでなく中古資産も対象であることを覚えておきましょう。

ただし、特例を適用するためには、青色申告を提出していて、資本金または出資金が1億円以下などの条件が付いています。

適用できるかどうかについては、国税庁のホームページで最新の条件を確認してみてください。

中古住宅の減価償却費の計算方法

前の章までに、減価償却費の計算方法や中古資産の耐用年数の求め方を解説しました。

ここでは実際に、中古住宅の減価償却費の計算方法を下記の2つのケースで解説していきます。

・家賃収入を得ている場合
・住宅の大規模修繕を行った場合

なお、減価償却費は定額法で計算するものとします。

家賃収入を得ている場合

中古のマンションを取得し、家賃収入を得ている場合の減価償却費の計算方法を解説していきます。

まずは、中古のマンションの耐用年数を求めます。

中古のマンションは、耐用年数47年の鉄骨鉄筋コンクリート造りで2,000万円で取得し、20年経過していたものとしましょう。

法定耐用年数の一部を経過しているため、下記の計算式で耐用年数を求めてください。

(法定耐用年数(47年)ー経過した年数(20年))+(経過した年数(20年)×20%)=27+4=31年

したがって、中古マンションの耐用年数は31年となり、31年のときの定額法の償却率は0.033のため、下記の計算式で減価償却費を求めます。

取得価額(2,000万円)×償却率(0.033)=66万円

間接法で減価償却費の仕訳をする場合は、下記の通りとなります。

スクロールできます
借方貸方
減価償却費660,000円減価償却累計額660,000円

住宅の大規模修繕を行った場合

次に、住宅の大規模修繕を行った場合を考えていきましょう。

住宅の大規模修繕の際に考えるべきことは、行った修繕が原状回復を目的としたものなのか、それとも価値を高めて耐用年数を延長させる目的としたものなのかという点です。

原状回復を目的としていた場合は、修繕費で経費計上が可能です。

一方で、価値を高めて耐用年数を延長させる目的であれば、資本的支出になり、減価償却が必要になります。

また、資本的支出であれば、資本的支出の金額により耐用年数の算出方法が異なることに注意が必要です。

資本的支出の金額ごとに、耐用年数の計算方法をまとめた表は下記の通りです。

資本的支出の金額耐用年数の計算方法
中古住宅の取得価額の50%以下簡便法で算出
中古住宅の取得価額の50%より大きく、さらに再取得価額(中古住宅と同じ新品を取得したときの金額)の50%以下下記の計算式で算出
(資本的支出を含んだ中古住宅の取得価額)÷{(資本的支出を含まない中古住宅の取得価額÷簡便法で計算した中古住宅の耐用年数)+(資本的支出÷中古住宅の法定耐用年数)}
再取得価額の50%よりも大きい法定耐用年数を使用

そこで、ここでは複雑な計算が必要になる、資本的支出の金額が中古住宅の取得価額の50%より大きく、さらに再取得価額の50%以下のケースについて解説していきます。

具体例は下記の通りとします。

例)築20年の鉄骨鉄筋コンクリート造り(法定耐用年数47年)の中古マンションを2,000万円で取得した。そして、1,200万円かけて資本的支出扱いの大規模修繕を行い、再取得価額が3,000万円だったとする。

資本的支出(1,200万円)は中古住宅の取得価額の50%(1,000万円=2,000万円×50%)より大きく、再取得価額の50%(1,500万円=3,000万円×50%)以下となっています。

したがって、下記の計算式に当てはめて計算していきましょう。

耐用年数=(資本的支出を含んだ中古住宅の取得価額)÷{(資本的支出を含まない中古住宅の取得価額÷簡便法で計算した中古住宅の耐用年数)+(資本的支出÷中古住宅の法定耐用年数)}

計算に必要な箇所は、それぞれ下記の通りとなります。

・資本的支出を含んだ中古住宅の取得価額:2,000万円+1,200万円=3,200万円
・資本的支出を含まない中古住宅の取得価額:2,000万円
・簡便法で計算した中古住宅の耐用年数:(法定耐用年数(47年)ー経過した年数(20年))+(経過した年数(20年)×20%)=27年+4年=31年
・資本的支出:1,200万円
・中古住宅の法定耐用年数:47年

全てを計算式に当てはめた計算式は、下記の通りです。

なお、小数点以下の端数は切り捨てで計算します。

(資本的支出を含んだ中古住宅の取得価額(3,200万円))÷{(資本的支出を含まない中古住宅の取得価額(2,000万円)÷簡便法で計算した中古住宅の耐用年数(31年))+(資本的支出(1,200万円)÷中古住宅の法定耐用年数(47年))}

=3,200万円÷(64万5,161円+25万5,319円)

=3,200万円÷90万480円

=35.536年

=35年

上記の計算式より、耐用年数が35年であることが分かりました。

耐用年数35年の定額法の償却率は0.029のため、減価償却費は3,200万円×0.029=92万8,000円となります。

計算式が細かいため、間違えないように注意が必要です。

間接法で減価償却費の仕訳をする場合は、下記の通りとなります。

スクロールできます
借方貸方
減価償却費928,000円減価償却累計額928,000円

新車と中古車の減価償却の違い

新車と中古車では、減価償却にどのような違いがあるのでしょうか?

ここでは、新車と中古車の減価償却費の違いと、リース期間定額法について解説していきます。

新車の減価償却の場合

新車の場合、税法で決められた法定耐用年数をもとに、減価償却を行います。

普通自動車の耐用年数は、車両の法定耐用年数に記載されている「構造・用途」が一般用のもので、「細目」が「自動車・その他のもの」として記載されている6年を使用します。

中古車の減価償却の場合

中古車であっても固定資産の扱いとなるため、減価償却を行う必要があります。

すでに解説した見積法か簡便法で耐用年数を計算し、減価償却を行いましょう。

リース期間定額法とは

リース期間定額法とは、カーリースを行った際に、リース期間にもとづいて減価償却を行う方法です。

リース期間定額法を用いて減価償却を求める計算式は、下記の通りです。

車のリース費用の合計金額÷リース期間の月数合計×車を使用した月数

ただし、リース金額の合計が300万円以下の場合やリース期間が1年以内の場合は、賃借料などの勘定科目で当期で経費計上を行います。

まとめ

本記事では、中古資産の減価償却費の計算方法を具体例とともに解説しました。

中古資産の減価償却費を計算するには、まずは耐用年数を算出する必要があります。

中古資産の耐用年数は、下記のどちらかの方法で求めましょう。

・見積法
・簡便法

もし簡便法で計算する際は、ケースに応じて下記のどちらかの計算式を使用してください。

・法定耐用年数の全てを経過した中古資産の耐用年数:法定耐用年数×20%
・法定耐用年数の一部を経過した中古資産の耐用年数:(法定耐用年数ー経過した年数)+(経過した年数×20%)

耐用年数が求められたら、該当する償却率を使用して、中古資産の減価償却費の計算をしましょう。

また、新品の資産と中古資産の減価償却の違いは、耐用年数の決め方です。

新品の資産は、税法で決められた法定耐用年数を用いますが、中古資産は見積法か簡便法により、個別に耐用年数を決める必要があります。

取得した資産に応じて耐用年数を決定し、適切に減価償却を行いましょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次