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減価償却費の計算はいつから始める?開始時期や計算方法を解説

減価償却 開始時期

減価償却費は、減価償却が開始された時点から発生する経費です。

しかし、減価償却費の考え方を知っていても、減価償却費の計算をいつから始めるのか詳しく知らない人が多いのではないでしょうか。

そこで、本記事では減価償却費の計算の開始時期について、具体例を挙げて解説します。

さらに、減価償却費の計算方法も解説しますので、減価償却費の開始時期や計算方法について詳しく知りたい人は、ぜひ最後までお読みください。

目次

減価償却と対象資産について

まずは、減価償却についての基礎知識について解説していきます。

ここで解説するのは下記の2つです。

・減価償却とは
・減価償却の対象資産

減価償却とは

減価償却とは、固定資産の取得にかかった費用を、耐用年数にもとづいて分割して費用化する会計処理のことです。

また、減価償却は費用と収益を対応させるために必要な会計処理です。

例えば、1,000万円の機械装置を取得したときのことを考えてみましょう。

1,000万円の機械装置を導入したことで毎年利益が200万円生まれるとして、機械装置の購入費用1,000万円を初年度に一括経費で計上するとどうなってしまうでしょうか?

初年度の損益は▲800万円(利益200万円ー費用1,000万円)の大赤字になってしまうことでしょう。

さらに、会計上で費用と収益を対応させて損益計算を適切に行うべきと考える費用収益対応の原則の考え方がありますが、上記の例では費用と収益が対応しているとはいえません。

そこで、機械装置の購入費用1,000万円を耐用年数10年として減価償却を行うとすると、毎年の減価償却費は100万円となります。

損益計算を行うと、100万円の黒字(利益200万円ー減価償却費100万円)となり、収益と費用が対応している状況になりました。

このように、減価償却は損益計算を行う上で費用と収益を対応させる重要な役割を持っていることを覚えておくとよいでしょう。

また、減価償却費に関して知っておくべき用語を下記に記載しましたので、確認しておいてください。

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用語説明
取得価額固定資産の取得のためにかかった費用で、本体価格だけでなく購入手数料や据付費などの付随費用も含まれる。
法定耐用年数税法により決められた固定資産の使用可能な期間。
償却率法定耐用年数に応じて決められた割合。
減価償却累計額これまでに計上した減価償却費の合計金額。
未償却残高まだ償却されていない簿価のこと。取得価額ー減価償却累計額で求める。

減価償却の対象資産

減価償却の対象資産は、取得価額が10万円以上で耐用年数1年以上の減価償却資産です。

減価償却資産とは、時間が経つにつれて価値が減少する資産のことを指し、具体例を挙げると下記の通りとなります。

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有形固定資産建物、建物付属、構築物、機械装置、車両運搬具など
無形固定資産ソフトウェア、特許権、営業権、のれんなど

上にある通り、減価償却の対象資産は、実体を持つ有形固定資産と実体を持たない無形固定資産の2つに分けられることを覚えておいてください。

一方で、土地や骨董品などは、会計上では価値が減少しないと考えられているため、減価償却の対象資産でないことに注意が必要です。

減価償却の計算の開始時期はいつから?

減価償却の計算の開始時期は、固定資産を事業の用に供した日から、つまり事業のために使い始めた日からです。

固定資産の購入日から減価償却の計算を開始すると考えている人も多いかもしれませんが、正しくは固定資産を使用し始めたときからのため、注意してください。

例えば、20XX年7月に機械装置を購入した例で考えてみましょう。

購入した機械装置は、自社製品を製造するために試運転が必要で、購入後に据付や試運転などを行い、一ヶ月後の20XX年8月から事業のために機械装置を使用できたとします。

上記の場合、事業の用に供した日、つまり事業のために固定資産の使用を開始したのは20XX年8月のため、減価償却費の計算は20XX年8月から開始となります。

したがって、購入した時点ではまだ事業のために使えない状態であれば、購入した日から減価償却を行わないことに注意をしてください。

ただし、購入して時間がかからずに使える固定資産であれば、購入した日が減価償却の計算を開始する日になります。

減価償却の計算を開始する時期が必ずしも購入日とは限らないことを意識して、取得した固定資産の状況により、減価償却の開始時期を考えるようにしましょう。

減価償却の計算方法

ここでは、主な減価償却資産の耐用年数と、定額法・定率法それぞれの計算方法について具体例を挙げながら解説していきます。

主な減価償却資産の耐用年数

減価償却の計算をする際に、対象の固定資産の耐用年数を把握する必要があります。

耐用年数は固定資産の構造や用途により異なるため、減価償却を行う固定資産に該当する耐用年数を確認しましょう。

主な減価償却資産の耐用年数は、下記の通りです。

機械装置、工具、器具・備品について記載しますので、確認しておいてください。

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減価償却資産構造・用途細目耐用年数
機械装置食料品製造業用設備10
印刷業・印刷関連業用設備デジタル印刷システム設備4
製本業用設備7
林業用設備5
工具測定工具、検査工具5
型、鍛圧工具、打抜工具プレスその他の金属加工用金型、合成樹脂、ゴム・ガラス成型用金型、鋳造用型2
その他のもの3
器具・備品事務機器、通信機器電子計算機:パーソナルコンピュータ(サーバー用のものを除く)4
電子計算機:その他のもの5
理容・美容機器5
医療機器調剤機器6

定額法

定額法は、毎年均等に減価償却を行う特徴を持つ計算方法で、計算式は下記の通りです。

減価償却費=取得価額×定額法の償却率

それでは、実際に定額法で減価償却費の計算をしてみましょう。

定額法で計算する際の前提条件を、下記の通りとします。

・取得した固定資産:測定機器(器具・備品)
・取得価額:200万円
・耐用年数:5年
・定額法の償却率:0.200

上記の条件で、経過年数ごとに減価償却費をまとめたものが下記の表です。

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経過年数減価償却費計算式
1年40万円200万円×0.200
2年40万円200万円×0.200
3年40万円200万円×0.200
4年40万円200万円×0.200
5年39万9,999円残存簿価1円まで償却

毎年均等に減価償却を行いますが、最終年の5年目だけは固定資産を使用していることを示すため、残存簿価1円までの償却となります。

定率法

定率法は初年度に多額の減価償却費を計上し、年が経過するごとに減価償却費が減少していく計算方法です。

定率法の計算式は下記の通りです。

減価償却費=未償却残高×定率法の償却率

定額法とは異なり、未償却残高に償却率を掛けることに注意をしてください。

定率法で計算する際の前提条件を、下記の通りとします。

・取得した固定資産:測定機器(器具・備品)
・取得価額:200万円
・耐用年数:5年
・定率法の償却率:0.400
・改定償却率:0.500
・保証率:0.10800

定率法では、改定償却率と保証率の考え方を用いて計算することを覚えておきましょう。

上記の条件で算出した経過年数ごとの減価償却費は、下記の通りです。

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経過年数減価償却費計算式翌年度の期首未償却残高
1年80万円200万円×0.400120万円=200万円ー80万円
2年48万円120万円×0.40072万円=120万円ー48万円
3年28万8,000円72万円×0.40043万2,000円=72万円ー28万8,000円
4年21万6,000円43万2,000円×0.500
※改定取得価額×改定償却率の計算に切替
21万6,000円=43万2,000円ー21万6,000円
5年21万5,999円43万2,000円×0.500
※残存簿価1円まで償却
1円=21万6,000円ー21万5,999円

定率法の計算では、取得価額と保証率を掛けた金額を償却保証額と呼びます。

上記のケースでの償却保証額は、取得価額(200万円)×保証率(0.10800)で算出した21万6,000円です。

そして、通常の計算式(未償却残高×償却率)で求めた減価償却費が、償却保証額を下回った場合に計算式が変わります。

上記のケースでは、4年目の減価償却費を通常の計算方法で求めると17万2,800円(43万2,000円×0.400)となり、減価償却費が償却保証額を下回るため、4年目以降は下記の計算式で減価償却費を算出します。

減価償却費=改定取得価額×改定償却率

なお、改定取得価額とは減価償却費が償却保証額を下回った年度の期首未償却残高です。

したがって、4年目の減価償却費を算出すると下記のようになります。

減価償却費(21万6,000円)=改定取得価額(43万2,000円)×改定償却率(0.500)

5年目も同様の計算式となりますが、固定資産を使用していることを示すため、残存簿価1円を残して償却を行います。

無形固定資産の計算方法

ソフトウェアや特許権などの無形固定資産の計算方法は、残存価額を考慮しない、つまり残存価額を0円とする定額法です。

例えば、耐用年数5年(償却率:0.200)で取得価額150万円のソフトウェアを減価償却した場合、経過年数ごとの減価償却費は下記の通りとなります。

経過年数減価償却費計算式
1年30万円150万円×0.200
2年30万円150万円×0.200
3年30万円150万円×0.200
4年30万円150万円×0.200
5年30万円150万円×0.200

無形固定資産は定額法で減価償却を行うため、1年目から5年目まで30万円ずつ均等に減価償却を行っていきます。

また、有形固定資産の減価償却では残存簿価1円を残しましたが、無形固定資産の残存簿価は0円です。

無形固定資産の減価償却では、備忘価額として1円を残さずに、0円まで減価償却を行うことを覚えておきましょう。

減価償却費の計算の注意点

減価償却費を計算する際に、注意すべき点として下記の2点が挙げられます。

・取得価額の費用に関する間違い
・非減価償却資産や少額減価償却資産に関する間違い

減価償却費の計算を適切に進められるように、1つずつ確認していきましょう。

取得価額の費用に関する間違い

固定資産の取得価額には、本体価格だけでなく、購入手数料や試運転費などの固定資産を事業に使うためにかかった付随費用も含みます。

本体価格と付随費用を分けて会計処理しないように、注意をしましょう。

非減価償却資産や少額減価償却資産に関する間違い

非減価償却資産とは、減価償却の対象にならない資産のことです。

土地や骨董品などが非減価償却資産に該当し、会計上は価値が減少しないものと考えられています。

非減価償却資産を建物や車両運搬具などの減価償却資産と同様に、減価償却を行わないように注意してください。

なお、非減価償却資産は減価償却を行いませんが固定資産には該当するため、経費での一括計上はできません。

また、少額減価償却資産に関しても注意が必要です。

少額減価償却資産とは、取得価額が10万円以上30万円未満の減価償却資産のことを指します。

青色申告をしている中小企業で、雇用している従業員の数が500人以下などの条件を満たしていれば、少額減価償却資産を年間300万円まで経費として計上できる特例があります。

ただし、取得した資産が取得価額10万円以上30万円未満に当てはまるかどうかの判断には注意をしてください。

例えば、25万円の部品Aと15万円の部品Bを組み立てて、一つの機械装置として稼働する固定資産の場合を考えてみましょう。

25万円の部品Aと15万円の部品Bを個別で考えると、少額減価償却資産に当てはまると考えてしまうかもしれません。

しかし、固定資産に該当するかどうかを判定する際は、対象品が通常1単位として取引されるものかどうかで判定を行ってください。

部品Aと部品Bの場合はそれぞれを個別で使用せずに、部品Aと部品Bを組み立てて一つの機械装置になるため、機械装置で1単位と考えます。

したがって、25万円の部品Aと15万円の部品Bを合計すると40万円の機械装置になるため、少額減価償却資産に該当せずに減価償却を行うことになります。

少額減価償却資産に該当するかどうかは、個別に見るのではなく、通常1単位として取引されるものかどうかを基準に判定するようにしてください。

まとめ

本記事では、減価償却の計算の開始時期や計算方法を解説しました。

減価償却の計算の開始時期は、事業の用に供した日、つまり固定資産を事業のために使い始めた日からです。

開始時期を間違えやすいのが、固定資産の購入日を減価償却の開始時期としてしまうケースです。

固定資産の中には、購入して即日で使用開始できるものもあります。

一方で、購入しただけでは稼働しない固定資産、例えば機械装置などは、組み立てて試運転などを行ってから事業のために稼働できるケースもあります。

そのため、固定資産を購入した時点からすぐに減価償却計算を開始せずに、固定資産ごとに減価償却の開始時期を見極めてから減価償却を行うことが大切です。

また、減価償却の計算方法には定額法と定率法があります。

本記事内で、それぞれ具体例を挙げながら計算方法の解説をしていますので、ぜひ参考にしてください。

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