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減価償却費の耐用年数とは?償却資産別の耐用年数一覧表とともに解説

減価償却費 耐用年数

減価償却費の耐用年数は、固定資産の減価償却費を求めるうえで必ず確認する項目です。

しかし、耐用年数の考え方や、固定資産ごとの耐用年数について知らない人も多いことでしょう。

そこで、本記事では減価償却費の耐用年数について、償却資産別の耐用年数とともに詳しく解説します。

また、耐用年数を適用するときのポイントや、経理上の実務の注意点なども解説しますので、減価償却費の耐用年数にお悩みの人はぜひ最後までお読みください。

目次

減価償却の耐用年数と考え方

まずは、耐用年数の定義と考え方について解説していきます。

解説するのは下記の3点です。

・会社の状況に応じた会計上の耐用年数
・税法で決められた税務上の耐用年数
・耐用年数と耐久年数の違い

一つずつ解説していきます。

会社の状況に応じた会計上の耐用年数

実務上で減価償却費を算出する際に、税務上の耐用年数が使われますが、理論上では会計上の耐用年数もあります。

会計上の耐用年数は、会社の状況に応じて定められる固定資産の使用可能な期間のことです。

例えば、同じ機械装置でも、使い方・設置する場所・室温などは会社ごとに異なるため、会社の状況に応じて算出するという考えが、会計上の耐用年数となります。

ただし、固定資産一件ごとに異なる耐用年数を設定するのは実務上困難なため、減価償却費の算出の際は、税法で決められた税務上の耐用年数を用いるのが一般的です。

税法で決められた税務上の耐用年数

税務上の耐用年数は、税法で決められた使用可能期間のことで、一般的に減価償却費の算出の際に使用されます。

先ほど解説した通り、会計上の耐用年数の設定は実務上困難であり、各企業で独自に耐用年数を決めてしまうと、さまざまな考えのもとで耐用年数が決まってしまうことになります。

そこで、各企業で同じ耐用年数を使用して減価償却費を算出できるよう、構造・用途などから固定資産別に決められたものが、税務上の耐用年数です。

減価償却費を算出する際は、一般的に税法で決められた税務上の耐用年数を用いることを覚えておいてください。

耐用年数と耐久年数の違い

耐用年数は、固定資産を使用できる期間のことで、一般的には税法により定められている年数のことを指します。

一方で、耐久年数は使用可能な目安の期間として、メーカーが示している年数です。

減価償却費を計算する際は耐用年数をもとにし、耐久年数はあくまでもメーカーが示す使用できる目安の年数ということを、覚えておくとよいでしょう。

減価償却資産別の法定耐用年数の一覧

時間の経過により価値が減少する資産を減価償却資産と呼び、減価償却資産は耐用年数をもとに減価償却を行います。

それでは、減価償却資産ごとの耐用年数はそれぞれ何年になるのでしょうか?

そこで、ここでは減価償却資産別の法定耐用年数の一覧を確認していきます。

解説する減価償却資産は下記の通りです。

・建物
・建物附属設備
・構築物
・生物
・車両運搬具
・工具
・器具・備品
・機械・装置
・その他

もし、より詳細に耐用年数を知りたい人は、国税庁のホームページにある「耐用年数表」からご確認ください。

なお、土地や骨董品などは会計上で時間が経過しても価値が減少しないと考えられ、減価償却を行わないため減価償却資産に含まれないことを覚えておきましょう。

それでは、それぞれの耐用年数を見ていきます。

建物の耐用年数

建物の主な耐用年数は下記の通りです。

構造・用途細目耐用年数
木造・合成樹脂造のもの事務所用のもの24
店舗用・住宅用のもの22
飲食店用のもの20
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの事務所用のもの50
住宅用のもの47
飲食店用のもの・その他のもの41
れんが造・石造・ブロック造のもの事務所用のもの41
店舗用・住宅用・飲食店用のもの38

建物附属設備の耐用年数

建物付属設備の耐用年数は下記の通りです。

構造・用途細目耐用年数
アーケード・日よけ設備主として金属製のもの15
その他のもの8
店舗簡易装備3
電気設備(照明設備を含む)蓄電池電源設備6
その他のもの15
給排水・衛生設備、ガス設備15

構築物の耐用年数

構築物の主な耐用年数は下記の通りです。

構造・用途細目耐用年数
農林業用のもの主として金属造のもの
例)農用井戸、散水用配管など
14
主として木造のもの例)果樹棚又はホップ棚、牧さくなど5
土管を主としたもの例)農用井戸、かんがい用配管など10

生物の耐用年数

生物の主な耐用年数は下記の通りです。

構造・用途細目耐用年数
繁殖用・役肉用牛6
繁殖用・乳用牛4
種付用4
その他用6
繁殖用6
種付用6
競走用4
その他用8
3

車両運搬具の耐用年数

車両運搬具の主な耐用年数は下記の通りです。

スクロールできます
構造・用途細目耐用年数
一般用のもの
(特殊自動車・次の運送事業用等以外のもの)
自動車(2輪・3輪自動車を除く)・小型車(総排気量が0.66リットル以下のもの)4
貨物自動車・ダンプ式のもの4
2輪・3輪自動車3
運送事業用・貸自動車業用・自動車教習所用のもの自動車・小型車3
自動車・大型乗用車5
乗合自動車5

工具の耐用年数

工具の主な耐用年数は下記の通りです。

スクロールできます
構造・用途細目耐用年数
測定工具、検査工具5
治具、取付工具3
切削工具2
型(型枠を含む)、鍛圧工具、打抜工具プレスその他の金属加工用金型、合成樹脂、ゴム・ガラス成型用金型、鋳造用型2
その他のもの3

器具・備品の耐用年数

器具・備品の主な耐用年数は下記の通りです。

スクロールできます
構造・用途細目耐用年数
家具、電気機器、ガス機器、家庭用品事務机、事務いす、キャビネット・主として金属製のもの15
事務机、事務いす、キャビネット・その他のもの8
応接セット・接客業用のもの5
応接セット・その他のもの8
事務機器、通信機器電子計算機・パーソナルコンピュータ(サーバー用のものを除く)4
電子計算機・その他のもの5
医療機器消毒殺菌用機器4
手術機器5
調剤機器6

機械・装置の耐用年数

機械・装置の主な耐用年数は下記の通りです。

構造・用途細目耐用年数
農業用設備7
林業用設備5
食料品製造業用設備10
印刷業・印刷関連業用設備デジタル印刷システム設備4
製本業用設備7
新聞業用設備(モノタイプ・写真・通信設備)3
新聞業用設備(その他の設備)10
倉庫業用設備12

その他の耐用年数

その他の耐用年数は、下記を参考にしてください。

出典:財務省「減価償却資産の耐用年数等に関する省令

耐用年数を適用するときのポイント

実務で耐用年数を適用するときに、気を付けるべきポイントがあります。

ポイントは下記の3つのため、一つずつ解説していきます。

・減価償却資産の経済的使用価値で判断
・貸与資産は貸付先の使用用途で判断
・修繕時は新しい資産を取得したとされる場合がある

減価償却資産の経済的使用価値で判断

耐用年数は、減価償却資産の構造や用途、使用する環境などの経済的使用価値で判断します。

例えば、事務所用の建物でも木造で24年、鉄骨鉄筋コンクリート造で50年といったように構造により耐用年数が異なります。

また、事務機器でもサーバー用であれば、その他のものに分類されて5年、サーバー用のものでなければ4年というように、用途によっても耐用年数が異なることも覚えておいてください。

貸与資産は貸付先の使用用途で判断

減価償却資産のうち、企業などに貸与している資産については、自社でなく貸与先の使用用途で耐用年数を判断します。

ただし、財務省が出している下記の省令によると、器具備品の生物に含まれる植物は貸付業用のものとして耐用年数が2年とされています。

出典:財務省「減価償却資産の耐用年数等に関する省令

したがって、基本的には貸与資産は貸与先の使用用途で判断すべきですが、貸付業用の耐用年数の指示がある場合は、指示された耐用年数に従うようにしてください。

修繕時は新しい資産を取得したとされる場合がある

固定資産の修繕時は、修繕の内容によっては修繕費の計上でなく、新しい資産を取得、つまり資本的支出をしたとされる場合があるため注意が必要です。

修繕費と資本的支出の定義は下記の通りです。

・修繕費:原状回復や機能維持のための費用
・資本的支出:耐用年数の延長や価値の向上のためにかかった費用

修繕費であれば、減価償却をせずに一括で費用を計上できます。

一方で、資本的支出と考えられる場合は、資本的支出を行った固定資産本体と同じ種類の固定資産を取得したとみなされ、本体と同様の耐用年数で減価償却を行います。

修繕費と資本的支出の判断は、税務調査などで指摘をされる可能性があるため、慎重な判断が必要です。

減価償却の計算方法・経理上の実務

ここまで耐用年数について解説しましたが、ここでは経理上の実務を行う上で知っておくべき、減価償却の計算方法やポイントを解説します。

解説するのは下記の4点です。

・減価償却の方法:定額法
・減価償却の方法:定率法
・中古資産を減価償却する場合はどうする?
・減価償却の耐用年数が終了したらどうなる?

減価償却の方法:定額法

定額法は、毎年均等に減価償却を行う計算方法で、計算式は下記の通りです。

減価償却費=取得価額×償却率(定額法)

それでは、実際に例を挙げて、定額法を用いた減価償却費の算出方法を確認してみましょう。

前提条件は下記の通りとします。

・取得した固定資産:フォークリフト(車両運搬具)
・取得価額:120万円
・法定耐用年数:4年
・償却率:0.250

上記の条件で、経過年数ごとに減価償却費を算出した結果は下記の通りです。

年数減価償却費計算式
1年30万円120万円×0.250
2年30万円120万円×0.250
3年30万円120万円×0.250
4年29万9,999円帳簿価額1円を残して償却

減価償却費は、取得価額(120万円)×償却費(0.250)で求めた30万円を毎年計上していきます。

ただし、減価償却が完了する4年目については、使用していることを示すために帳簿価額1円を残して償却を行うことに注意をしましょう。

減価償却の方法:定率法

定率法は、償却を開始した初年度に多額の減価償却費を計上し、年々減価償却費が減少する計算方法で、計算式は下記の通りです。

減価償却費=帳簿価額(未償却残高)×償却率(定率法)

また、定率法では保証率という考え方があり、取得価額に保証率をかけた金額よりも減価償却費の方が小さくなった場合、改定償却率を採用することになります。

ここでも下記の前提条件で、減価償却費を計算してみましょう。

・取得した固定資産:フォークリフト(車両運搬具)
・取得価額:120万円
・法定耐用年数:4年
・償却率:0.500
・改定償却率:1.000
・保証率0.12499

上記の条件で経過年数ごとに減価償却費を算出した結果は下記の通りです。

年数減価償却費計算式
1年60万円120万円×0.500
2年30万円(120万円-60万円)×0.500
3年15万円(120万円-60万円-30万円)×0.500
4年14万9,999円帳簿価額1円を残して償却

※4年目に改定償却率を使わずに減価償却資産の計算をした場合:(120万円-60万円-30万円-15万円)×0.500=7万5,000円

取得価額120万円に保証率0.12499をかけると14万9,988円になるため、年間の減価償却費(7万5,000円)が下回る4年目は、改定償却率が採用されて帳簿価額1円を残して償却を行います。

中古資産を減価償却する場合はどうする?

中古資産を減価償却する場合は、基本的には中古資産の取得時からの使用可能期間を見積もり、耐用年数を設定して減価償却を行います。

ただし、もし耐用年数の見積もりが難しい場合は、下記の簡便法による計算式により耐用年数を求めます。

1.中古資産を取得時、既に全ての耐用年数を経過した場合:法定耐用年数×20%
2.法定耐用年数の一部を経過した場合:(法定耐用年数ー経過した年数)+(経過した年数×20%)

※計算結果が小数点の場合、小数点以下の端数を切り捨て、また2年未満の場合は2年で計算を行う。

まずは、1のケースから考えてみましょう。

中古で木造の店舗用建物(耐用年数22年)を取得したときに25年経過していた場合は、1の計算式に当てはめて耐用年数を算出します。

法定耐用年数(22年)×20%=4.4年

端数は切り捨てのため、耐用年数は4年になります。

次に、2のケースです。

中古で木造の店舗用建物(耐用年数22年)を取得したときに12年経過していた場合は、2の計算式を使用します。

(法定耐用年数(22年)ー経過した年数(12年))+(経過した年数(12年)×20%)=10+2.4=12.4年

端数を切り捨て、耐用年数は12年になります。

中古資産の耐用年数の見積もりが難しい場合は、上記のように計算をしてみてください。

減価償却の耐用年数が終了したらどうなる?

減価償却の耐用年数が終了したら残存簿価が1円になり、廃売却を行わなければそのまま固定資産台帳に残ります。

なお、特許権やソフトウェアなどの無形固定資産の残存簿価は0円です。

ただし、残存簿価は0円でも、廃売却を行わなければ継続して使用できることを覚えておいてください。

まとめ

本記事では、減価償却費を算出する際に必要な耐用年数について解説しました。

耐用年数とは、資産の使用可能期間のことで、一般的には税法で決められた法定耐用年数を指します。

耐用年数を適用する際に気を付けるべきポイントは、下記の通りです。

・減価償却資産の経済的使用価値で判断
・貸与資産は貸付先の使用用途で判断
・修繕時は新しい資産を取得したとされる場合がある

特に、後に指摘をされないように、修繕費と資本的支出の判断は正しく行いましょう。

耐用年数は、新品の固定資産だけでなく、中古資産の減価償却をするときにも使用する重要な項目です。

耐用年数を正しく理解して、減価償却を行いましょう。

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