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減価償却費の仕訳方法|直接法と間接法を具体例とともに解説

減価償却費 直接法 間接法

減価償却費を計上するには、直接法と間接法の2種類の仕訳方法があります。

しかし、それぞれどのような仕訳になるのか、またどのようなメリット・デメリットがあるのか、わからない人も多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では減価償却費の仕訳方法である直接法と間接法について、詳しく解説していきます。

さらに、仕訳の具体例やそれぞれの方法のメリット・デメリットも解説しますので、減価償却費の仕訳方法にお悩みの人は、ぜひ最後までお読みください。

目次

減価償却とは?

減価償却とは、固定資産を取得するのにかかった購入価格を、耐用年数をもとに分割して費用化する会計処理のことです。

減価償却の対象となる金額は10万円以上で、減価償却を行う資産を減価償却資産と呼び、建物や車両、機械装置などが該当します。

注意点は、土地は減価償却をしないことです。

土地は会計上では価値の落ちないものと考えられているため、土地については減価償却を行わないことを覚えておきましょう。

減価償却累計額とは?

減価償却累計額とは、これまでに計上した減価償却費の累計金額のことです。

一方で、当期に計上するのが減価償却費のため、違いに注意をしましょう。

また、減価償却累計額は減価償却費の仕訳方法である直接法と間接法のうち、間接法を採用した際に使用される勘定科目です。

次の章で直接法と間接法についてそれぞれ解説しますので、減価償却累計額の使い方を確認していきましょう。

減価償却費の仕訳方法

ここでは、減価償却費の仕訳方法の直接法と間接法について解説します。

仕訳例を挙げて解説しますので、それぞれの仕訳方法について理解を深めていきましょう。

減価償却の処理方法「直接法」

直接法は、固定資産から直接減価償却費を差し引く仕訳方法です。

借方に減価償却費、貸方に固定資産の勘定科目を使用するのが特徴といえます。

・仕訳例

取得価額200万円、定額法で耐用年数4年のフォークリフト(車両運搬具)の使用を開始し、減価償却費50万円を直接法で仕訳したケース

スクロールできます
借方貸方
減価償却費500,000円車両運搬具500,000円

上記の仕訳をすると、車両運搬具の帳簿残高が150万円(取得価額200万円ー減価償却費50万円)となり、貸借対照表の固定資産の箇所で下記のように表示されます。

・有形固定資産

車両運搬具1,500,000円

減価償却の処理方法「間接法」

間接法は固定資産から減価償却費を直接差し引かずに、減価償却累計額の勘定科目を使用して仕訳をする方法です

減価償却累計額を用いることで、毎年計上する減価償却費を積み上げていきます。

・仕訳例

取得価額200万円、定額法で耐用年数4年のフォークリフト(車両運搬具)の使用を開始し、減価償却費50万円を間接法で仕訳したケース

スクロールできます
借方貸方
減価償却費500,000円減価償却累計額500,000円

上記の仕訳をすると、車両運搬具の取得価額が200万円、減価償却累計額が50万円になるため、貸借対照表の固定資産の箇所で下記のように表示されます。

・有形固定資産

車両運搬具2,000,000円
減価償却累計額△500,000円

直接法とは異なり固定資産から直接差し引かないため、取得価額と減価償却累計額の両方の金額が表示されることがポイントです。

直接法のメリットとデメリット

前の章で直接法と間接法の仕訳方法を解説しましたが、それぞれの方法のメリット・デメリットは何が挙げられるのでしょうか?

そこで、ここでは直接法のメリットとデメリットについて解説します。

直接法のメリット

直接法のメリットは、固定資産から直接減価償却費を差し引くため、貸借対照表を見れば固定資産の帳簿価額、つまり未償却残高がすぐに分かることです。

資産勘定である固定資産が直接減っていくため、一目で見て分かりやすいのが特徴です。

売却や廃却などの早めの判断が必要な際に、固定資産にどれくらいの価値が残っているかをすぐに把握できるのはメリットといえるでしょう。

直接法のデメリット

直接法のデメリットは、貸借対照表を見ても取得価額が載っていないため、取得した固定資産をいくらで購入したのかがすぐに分からないことです。

取得価額を確認する場合は、補助簿である固定資産台帳を確認しなければなりません。

また、減価償却費を直接差し引いてしまうため、減価償却累計額も把握できません。

したがって、これまでに計上した減価償却費の金額がすぐに分からないことも、デメリットの一つといえるでしょう。

間接法のメリットとデメリット

前の章では、直接法のメリットとデメリットを解説しました。

ここでは間接法のメリットとデメリットを解説しますので、直接法との違いを意識しながら確認していきましょう。

間接法のメリット

間接法は、減価償却費を固定資産から直接差し引かずに減価償却累計額で計上するため、貸借対照表で取得価額をすぐに確認できる点がメリットです。

新規での資産購入や売却をするために取得価額を確認したい場合、間接法であればすぐに取得価額を把握できるためメリットといえるでしょう。

また、これまで計上した減価償却費の金額も減価償却累計額を見れば良いため、間接法であればすぐに確認できます。

間接法のデメリット

一方、間接法のデメリットは固定資産の帳簿価額(未償却残高)を把握するためには、減価償却累計額を差し引く手間があることです。

直接法であれば、計算をせずに貸借対照表を見ることで固定資産の帳簿価額を確認できるため、デメリットといえるでしょう。

減価償却累計額の仕訳方法

ここまで直接法と間接法の仕訳方法や、メリット・デメリットについて解説しました。

ここでは、間接法で使用する減価償却累計額の仕訳方法について、具体例を挙げて詳しく解説していきます。

解説するのは、下記の5つのケースです。

・当期分の減価償却費を計上する場合
・2年目以降の減価償却費を計上する場合
・固定資産を売却する場合
・固定資産を廃棄した場合
・月次決算における減価償却費を計上する場合

それぞれ解説しますので、減価償却累計額の仕訳について理解を深めていきましょう。

当期分の減価償却費を計上する場合

当期分の減価償却費を計上する場合は、当期に計上する減価償却費を借方に計上、貸方に減価償却累計額を計上します。

・仕訳例

取得価額300万円、定額法で耐用年数10年の機械装置の使用を開始し、減価償却費30万円を計上したケース

スクロールできます
借方貸方
減価償却費300,000円減価償却累計額300,000円

2年目以降の減価償却費を計上する場合

次は、2年目以降の減価償却費を計上する場合を考えてみましょう。

仕訳を考える上での前提条件を下記の通りとします。

  • 会計期間:4月1日~3月31日
  • 取得日:4月1日
  • 取得した固定資産:車両運搬具
  • 償却方法:定額法
  • 取得価額:100万円
  • 耐用年数:4年
  • 償却率:0.250

上記の条件で経過年数ごとに減価償却費を計算した結果は、下記の通りです。

スクロールできます
経過年数減価償却費計算式
1年25万円100万円×0.250
2年25万円100万円×0.250
3年25万円100万円×0.250
4年24万9999円帳簿価額1円まで償却

なお、ここでは分かりやすいように会計期間を4月1日から3月31日、取得日を4月1日とし、期中で固定資産を取得していないこととしています。

期中に固定資産を取得した際は、会計期間の1年目は取得した月から期末までの月数分の減価償却を行うことに注意をしてください。

上記の結果をもとにした2年目以降の仕訳は、下記の通りです。

・2~3年目

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借方貸方
減価償却費250,000円減価償却累計額250,000円

・4年目

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借方貸方
減価償却費249,999円減価償却累計額249,999円

仕訳のポイントは、2年目以降も1年目と同様に減価償却累計額を使用して計上することです。

「累計額」と聞くと取得したときから今まで、と考える人も多いかもしれませんが、仕訳で減価償却累計額を用いた場合は、計上する会計期間の減価償却費の累計金額を指していることに注意をしてください。

なお、4年目の帳簿価額は、固定資産を使用していることを示すために0円とせず、1円残すことも覚えておきましょう。

固定資産を売却する場合

固定資産を売却する場合は、帳簿価額(未償却残高)よりも高い価格で売却できれば固定資産売却益を計上し、低い価格での売却であれば、固定資産売却損を計上する仕訳をします。

また、売却するためには固定資産の帳簿価額をなくす、つまり売却する固定資産を帳簿から落とすことが必要です。

したがって、売却する場合は減価償却費の計上仕訳とは逆に、減価償却累計額を借方に計上し、取得価額を貸方に計上します。

売却益のケースと売却損のケースについて、それぞれの仕訳例は下記の通りです。

・仕訳例(売却益の場合)

取得価額300万円、減価償却累計額280万円、帳簿価額20万円の機械装置を売却し、普通預金で売却代金50万円が振り込まれたケース

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借方貸方
減価償却累計額2,800,000円機械装置3,000,000円
普通預金500,000円固定資産売却益300,000円

まずは、取得価額300万円を機械装置として貸方に計上し、借方に減価償却累計額280万円を計上します。

次に、振り込まれた普通預金50万円は資産の増加のため借方に計上し、売却益30万円(売却代金50万円ー帳簿価額20万円)を固定資産売却益として貸方に計上して完成です。

・仕訳例(売却損の場合)

取得価額300万円、減価償却累計額280万円、帳簿価額20万円の機械装置を売却し、普通預金で売却代金5万円が振り込まれたケース

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借方貸方
減価償却累計額2,800,000円機械装置3,000,000円
普通預金50,000円
固定資産売却損150,000円

まずは、取得価額300万円を機械装置として貸方に計上し、借方に減価償却累計額280万円を計上してください。

そして、振り込まれた5万円は資産の増加のため借方に計上し、売却損15万円(売却代金5万円ー帳簿価額20万円)も固定資産売却損として借方に計上して完成です。

一般的な売却益と売却損の仕訳において、固定資産売却益・固定資産売却損以外の科目は、借方・貸方の位置が同じであることを覚えておくとよいでしょう。

固定資産を廃棄した場合

固定資産を廃棄した場合、廃棄した固定資産の帳簿価額(未償却残高)の金額を固定資産除却損で計上します。

・仕訳例

取得価額500万円、減価償却累計額490万円、帳簿価額10万円の車両を廃棄したケース

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借方貸方
減価償却累計額4,900,000円車両運搬具5,000,000円
固定資産除却損100,000円

500万円の取得価額を車両運搬具の勘定科目で貸方に計上し、減価償却累計額490万円を借方に計上します。

そして、廃棄したときの帳簿価額が10万円のため、借方に固定資産除却損を10万円計上して完成です。

月次決算における減価償却費を計上する場合

月次決算では、1年間で発生すると見込まれる減価償却費の1ヶ月分、つまり1/12の金額を見積もり金額として計上することになります。

仕訳例は下記の通りです。

・仕訳例

年間の減価償却費が240万円(1ヶ月20万円)の場合、月次決算の減価償却費を計上するケース

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借方貸方
減価償却費200,000円減価償却累計額200,000円

なお、月次決算の減価償却費を見積もりで計上した場合は、確定した減価償却費を期末決算で計上しなければなりません。

したがって、減価償却費の見積もり金額と確定金額の差額は、期末決算で調整することを覚えておきましょう。

まとめ

本記事では、減価償却費の仕訳方法である直接法と間接法を詳しく解説しました。

減価償却とは、固定資産を取得するためにかかった購入価格を、耐用年数をもとに分割して費用化する会計処理のことです。

直接法は、固定資産から直接減価償却費を差し引いて仕訳をするのがポイントです。

一方間接法は、減価償却累計額を用いて仕訳をします。

また、直接法と間接法のメリットとデメリットをまとめた表は下記の通りです。

スクロールできます
仕訳方法メリットデメリット
直接法貸借対照表を見れば一目で固定資産の帳簿価額が分かる取得金額と減価償却累計額が分からないため、把握するのに手間がかかる
間接法貸借対照表を見れば一目で取得金額と減価償却累計額が分かる帳簿価額を把握するのに、貸借対照表を確認して計算する手間がかかる

さらに、下記のケースで間接法の減価償却累計額を用いたときの仕訳方法を解説しました。

・当期分の減価償却費を計上する場合
・2年目以降の減価償却費を計上する場合
・固定資産を売却する場合
・固定資産を廃棄した場合
・月次決算における減価償却費を計上する場合

それぞれのケースで、減価償却累計額を適切に使用する必要があります。

もし、実務で不明な仕訳があれば、上記のケースに該当していないかを確認し、該当していれば本記事の仕訳例を参考にしてください。

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