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減価償却が必要なのはいくらから?取得価額ごとの処理方法を解説

減価償却費 必要な金額

減価償却は、耐用年数にもとづいて、固定資産の取得価額を分割して費用化していく会計処理です。

ただし、固定資産の取得価額によって減価償却の処理方法が変わることを、知らない人も多いのではないでしょうか。

もし、取得価額ごとに処理方法が変わることを知らなかった場合、節税や業務効率化ができる機会を逃しているかもしれません。

そこで、本記事では減価償却の処理方法を取得価額ごとに解説していきます。

さらに、減価償却費の計算方法や少額減価償却資産の特例、また減価償却における税込み・税抜の考え方についても解説しますので、ぜひ最後までお読みください。

目次

減価償却が必要な金額はいくらから?

減価償却が必要なのは、時間の経過により価値が減少する減価償却資産を取得した金額が10万円以上で、耐用年数が1年以上の場合です。

例えば、10万円以上で購入し、耐用年数が1年以上の機械装置や車両などが該当します。

ただし、取得した金額が10万円以上でも、金額により3年で均等償却が可能なケースや、少額減価償却資産の特例を受けられるケースもあるため、次の章で詳しく解説していきます。

資産の取得価額によって変わる減価償却の処理方法

減価償却の処理方法は、固定資産の取得価額によって変わります。

ここでは、下記の4つの金額ごとに減価償却の処理方法を解説していきます。

・【10万円未満】全て経費計上
・【10万円以上】原則減価償却が必要
・【10万円~20万円】一括償却資産で処理可能
・【30万円未満】少額減価償却資産で処理可能

また、上記の4つのケースをまとめた表が下記の通りのため、あわせて確認しておきましょう。

スクロールできます
取得価額10万円未満10万円以上10万円~20万円未満30万円未満
処理方法全て経費原則減価償却一括償却資産少額減価償却資産
固定資産台帳の登録登録の必要なし取得単位で登録会計年度の合計金額で登録取得単位で登録
償却資産税の扱い非課税課税非課税課税

【10万円未満】全て経費計上

取得価額が10万円未満の場合は、全て経費計上可能です。

経費で計上する際の勘定科目は、消耗品費や修繕費、雑費などが一般的です。

また、10万円未満であれば固定資産として扱わないため、固定資産台帳への登録は必要なく、償却資産税も非課税になります。

【10万円以上】原則減価償却が必要

取得価額が10万円以上の場合は固定資産として扱うため、原則減価償却が必要です。

固定資産ごとに耐用年数を定め、設定した耐用年数で減価償却を行い、分割して費用化していきます。

なお減価償却を行うときの注意点は、固定資産として単独で稼働する単位ごとに減価償却を行うか判断することです。

部品単位で見るとそれぞれが10万円未満でも、固定資産が単独で稼働する1つの単位で見たときに合計10万円以上であれば、減価償却を行うことを覚えておいてください。

例えば、建物付属などに分類される間仕切り用パネルについて考えてみましょう。

間仕切り用のパネル1枚が10万円未満の場合でも、間仕切り用パネルはパネル1枚で単独で使用するわけではなく、パネルを組み合わせることで使用できます。

したがって、間仕切り用パネルはパネル1枚ごとの金額で減価償却を行うかの判断をするのではなく、パネルが組み合わさり、間仕切り用パネルとして使える単位で減価償却を行うかどうかの判定を行います。

また、減価償却を行う場合は、固定資産の取得単位で固定資産台帳へ登録を行う必要があり、償却資産税として課税対象になることにも注意が必要です。

10万円以上の場合は、金額によっては一括償却資産の処理や少額減価償却資産の特例を適用できるかもしれないため、次の章以降で解説していきます。

【10万円~20万円】一括償却資産で処理可能

取得価額が10万円以上20万円未満の場合は、一括償却資産で処理可能で、3年間の均等償却ができます。

取得した固定資産の耐用年数に関係なく3年間で償却でき、償却資産税として課税されないため、節税できることがメリットといえるでしょう。

さらに、会計年度の合計金額で一括して固定資産台帳に登録可能です。

取得単位ごとに固定資産台帳へ登録しなくて良いことも、業務効率化の面でメリットといえます。

【30万円未満】少額減価償却資産で処理可能

取得価額が10万円以上30万円未満の場合は、少額減価償却資産の特例を活用することで、対象の資産を取得した会計年度で全額を償却できます。

ただし、現在特例適用の条件として、青色申告をし、資本金または出資金が1億円以下の法人であることなどが挙げられています。

したがって、自社が特例の適用ができるかどうかは国税庁のサイトで確認をするようにしてください。

なお、償却資産税の課税対象になることには注意をしましょう。

減価償却費の計算方法

減価償却費の計算をする際は、一般的に定額法と定率法を用います。

そこで、ここでは定額法と定率法の計算方法を解説していきます。

定額法による減価償却費の計算方法

定額法は、毎年均等に減価償却を行う方法で、計算式は下記の通りです。

減価償却費=取得価額×償却率(定額法)

メリットは、上記の計算式により毎年定額の減価償却費が計上されるため、減価償却費の計上金額を想定しやすことが挙げられます。

また、定額法は個人事業主に適用される計算方法ですが、定率法を使用する法人の場合でも、管轄の税務署へ届け出を行えば定額法を使用できます。

それでは、具体的に下記の条件のときの減価償却費を求めてみましょう。

  • 取得した固定資産:サーバー用のパソコン(器具・備品)
  • 取得価額:150万円
  • 耐用年数:5年
  • 償却率:0.200

年数ごとにまとめた表は、下記の通りです。

年数減価償却費計算式
1年30万円150万円×0.200
2年30万円150万円×0.200
3年30万円150万円×0.200
4年30万円150万円×0.200
5年29万9,999円残存簿価1円を残して償却

上記の通り、年間30万円の減価償却費を毎年均等に計上していくことになります。

また、耐用年数が経過して減価償却が終わる5年目は、残存簿価として1円を残した形で減価償却を行います。

定率法による減価償却費の計算方法

定率法は、初年度に多額の減価償却費を計上し、年々減価償却費が減少していく計算方法で、計算式は下記の通りです。

減価償却費=帳簿価額(未償却残高)×償却率(定率法)

メリットは、減価償却を開始して初めのうちは減価償却費の金額が大きいため、節税効果を大きく受けられることです。

なお、定率法は法人に適用される償却方法ですが、個人事業主が定率法を選択したい場合は、管轄の税務署へ届け出を行うことで選択可能になります。

それでは、ここでも具体的に下記の条件のときの減価償却費の計算を行いましょう。

  • 取得した固定資産:サーバー用のパソコン(器具・備品)
  • 取得価額:150万円
  • 耐用年数:5年
  • 償却率:0.400
  • 改定償却率:0.500
  • 保証率:0.10800

定額法との違いは、改定償却率と保証率があることです。

定率法は、定率法の償却率を使用して減価償却費を求めますが、取得価額に保証率をかけた金額、つまり償却保証額よりも減価償却費の金額が小さくなった年から、改定償却率を用いて計算を行います。

上記の条件の場合、取得価額(150万円)に保証率(0.10800)をかけた16万2,000円が償却保証額になります。

上記の内容を考慮して、年数ごとにまとめた表は、下記の通りです。

年数減価償却費計算式
1年60万円150万円×0.400
2年36万円(150万円-60万円)×0.400
3年21万6,000円(150万円-60万円-36万円)×0.400
4年16万2,000円(150万円-60万円-36万円-21万6,000円)×0.500
※減価償却費が償却保証額を下回るため改定償却率を使用
5年16万1,999円残存簿価1円を残して償却

4年目の減価償却費は(150万円-60万円-36万円-21万6,000円)×0.400で計算を行うと12万9,600円となり、償却保証額(16万2,000円)を下回ります。

したがって、4年目から改定償却率を用いて計算をし、5年目は残存簿価1円を残して償却を行うことになります。

少額減価償却資産の特例とは

10万円以上30万円未満の固定資産を取得した際、少額減価償却資産の特例を適用できるケースがあるため、詳しく解説していきます。

解説するのは、下記の項目です。

・少額減価償却資産の特例で節税も可能
・一括で経費計上するかは自由に選べる
・少額減価償却資産の特例は年間300万円まで
・少額減価償却資産の特例の対象資産は?

それぞれ解説しますので、少額減価償却資産の特例についての理解を深めていきましょう。

少額減価償却資産の特例で節税も可能

少額減価償却資産の特例を活用すれば、固定資産を使用し始めた会計年度に、取得価額を一括で経費として計上できるため、節税も可能です。

ただし、現在特例を適用できるのは、法人の場合は青色申告を提出し、資本金または出資金の金額が1億円以下で常時雇っている従業員が500人以下などの条件があります。

個人事業主の場合でも、適用できるのは青色申告者で、かつ資本金または出資金が1億円以下などの条件もあります。

特例が適用できるかどうかは、国税庁のホームページで最新の情報を取得して、判断するようにしてください。

一括で経費計上するかは自由に選べる

少額減価償却資産の特例は必ず適用する必要はないため、一括で経費計上するかは自由に選べます。

したがって、経営の状況により特例を適用して一括で経費で計上するか、固定資産として減価償却するかを決められることになります。

例えば、目標とする利益に届きそうもない場合、特例を適用して一括で経費計上をせずに、固定資産として扱い、通常通りの方法で減価償却を行うことが可能です。

また、利益が大きく出そうな場合であれば、特例を適用して経費で一括計上すれば、節税効果を受けられます。

経営の状況により、少額減価償却資産の特例を使うかどうかを判断して、上手に活用していきましょう。

少額減価償却資産の特例は年間300万円まで

少額減価償却資産の特例を適用すれば節税できますが、年間300万円までが限度です。

もし、300万円の限度額を超えてしまった場合は、通常通りの耐用年数で減価償却を行うことになります。

年間300万円までという条件があることを理解して、少額減価償却資産の特例を活用するようにしましょう。

少額減価償却資産の特例の対象資産は?

取得価額が、10万円以上30万円未満の減価償却資産が対象です。

減価償却資産は、取得価額が10万円以上で時間が経つにつれて価値が減少する資産のことで、建物・建物付属・車両運搬具・機械装置・工具・器具備品などがあります。

また、取得価額が10万円以上30万円未満であれば、中古で購入した固定資産も対象となることも覚えておくとよいでしょう。

なお、会計上で時間が経過しても価値が減少しないと考えられている土地や骨董品などは減価償却資産に該当せず、減価償却も行わないことも覚えておいてください。

減価償却は税込みと税抜どっちで計算する?

減価償却を計算する際に、資産の取得価額を税込みと税抜のどっちで計算するかは、法人や個人事業主が行っている消費税の経理方式により決まります。

したがって、取得価額が同じでも消費税の経理方式が異なれば、経費計上できるかどうか、また特例が適用できるかどうかなどの判断が変わることに注意をしてください。

たとえば、経費計上するためには取得価額10万円未満が判断基準ですが、税込処理をしていれば税込の金額、税抜処理をしていれば税抜の金額で10万円未満かどうかを確認します。

もし、本体価格が9万9,000円であれば税抜処理の場合は経費計上が可能です。

一方、税込にすると10万8,900円になるため、税込処理の場合は経費計上できず、固定資産の扱いとなります。

自社の消費税の経理方式を考慮して、減価償却の処理方法を考えるようにしましょう。

まとめ

本記事では、減価償却の処理方法を取得価額ごとに解説しました。

取得価額ごとの処理方法は、下記の通りです。

・【10万円未満】全て経費計上
・【10万円以上】原則減価償却が必要
・【10万円~20万円】一括償却資産で処理可能
・【30万円未満】少額減価償却資産で処理可能

減価償却を行うのは10万円以上のため、まずは取得価額が10万円以上かどうかを確認するようにしてください。

10万円未満であれば、取得価額の全額を一括で経費計上できます。

10万円以上20万円未満であれば、一括償却資産として処理ができ、3年間で均等に償却可能です。

金額基準を満たしていれば、固定資産の耐用年数に関係なく3年間で償却可能で、また償却資産税の対象にならないため、節税できることがメリットといえる処理方法です。

10万円以上30万円未満であれば、少額減価償却資産の特例を適用することで、年間300万円までは経費として計上できます。

ただし、特例をできるのは青色申告をしていることや、資本金または出資金の金額が1億円以下などの条件があるため、最新の国税庁のホームページを確認し、条件に当てはまっているかを確認してください。

上記の通り、減価償却は固定資産の取得価額ごとに処理方法が異なり、一括償却資産の処理や少額減価償却資産の特例を適用することで、節税や業務効率の面などでメリットを受けられます。

しかし、申告をしなければメリットを受けられません。

メリットを受けられるように、減価償却の理解を深めて、都度申告するようにしてください。

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