減価償却は、固定資産の取得価額を耐用年数に応じて分割し、費用計上する会計処理のことです。
エアコンを取得した場合でも、固定資産として減価償却を行えます。
しかし、エアコンの耐用年数が何年で、どのような計算方法で減価償却をすれば良いのか分からない人も多いのではないでしょうか。
この記事では、エアコンの減価償却について、耐用年数の考え方や計算方法を詳しく解説します。
エアコンを減価償却するメリットや、減価償却の際の注意点も解説しますので、エアコンの減価償却でお悩みの人はぜひ最後までお読みください。
エアコンの耐用年数について
エアコンの減価償却費を求めるには、減価償却を行うエアコンの耐用年数を決める必要があります。
エアコンの耐用年数は、大きく分けて下記の2つのケースがあります。
・家庭用エアコン:器具及び備品で6年
・業務用エアコン:建物附属設備で13年or15年
どのようなエアコンかで耐用年数が決まるため、それぞれ確認していきましょう。
家庭用エアコン:器具及び備品で6年
一般的に使われている家庭用のエアコンは、固定資産の器具及び備品に分類されて、耐用年数は6年です。
家庭用エアコンとは、エアコン本体を部屋に取り付ける形の一般家庭で使われるエアコンとお考えください。
家庭用エアコンは、この後に解説する業務用エアコンと比べると、冷暖房についての高い機能を必要としないため、耐用年数は長く設定されていません。
業務用エアコン:建物附属設備で13年or15年
業務用エアコンは、固定資産の建物付属設備に分類され、耐用年数は13年か15年になります。
業務用エアコンとは、オフィスビルなどでダクトを通じて空調可能な建物と一体化している設備のことです。
ダクトがあり、埋め込まれているタイプのエアコンであれば、業務用エアコンと考えてよいでしょう。
さらに、業務用エアコンの中でも出力が22キロワットを上回っていれば耐用年数が15年、22キロワット以下であれば耐用年数が13年となります。
エアコンの耐用年数と勘定科目は、家庭用エアコンと業務用エアコンをあわせて下記のように覚えるとよいでしょう。
エアコンの種類 | 耐用年数 | 勘定科目 |
家庭用エアコン | 6年 | 器具及び備品 |
業務用エアコン(出力が22キロワット以下) | 13年 | 建物付属設備 |
業務用エアコン(出力が22キロワットより上) | 15年 | 建物付属設備 |
エアコンの耐用年数が短くなるケースもある
エアコンの耐用年数は、前の章で解説した通り6年~15年としていますが、あくまでも運転時間が日に10時間程度などのエアコンで、一般的な環境で稼働していることが前提です。
したがって、下記に該当するケースであれば、エアコンの実際の耐用年数が短くなることがあります。
・工場や24時間営業の店舗などで、エアコンが24時間常に運転しているケース
・エアコンの置かれている環境の温度や湿度が著しく高く、環境変化が大きいケース
・エアコンが稼働と停止を何度も繰り返して稼働しているケース
ただし、減価償却は基本的に法定耐用年数にもとづく必要があるため、エアコンは6年~15年の法定耐用年数で減価償却を行うことになります。
エアコンを使用する環境によっては、実際の耐用年数が法定耐用年数よりも短くなる可能性があることを覚えておくとよいでしょう。
法定耐用年数と実際の寿命は異なる
減価償却は法定耐用年数をもとにして行いますが、多くの場合、法定耐用年数と実際のエアコンの寿命は異なります。
前の章で解説したように、エアコンを使用する環境によっては、実際の耐用年数が短くなる可能性があることを覚えておいてください。
一方で、エアコンを定期的に点検し、壊れた部品を取り替えながら使用すると、法定耐用年数よりも長く使用できる可能性が高くなります。
法定耐用年数はあくまでも会計上での耐用年数で、実際のエアコンの寿命とは異なるでしょう。
それでは、メーカーでは実際の寿命の期間を、どの程度としているのでしょうか?
家庭用エアコンの法定耐用年数は6年ですが、メーカーはエアコンの使用期限の目安を10年としています。
理由は、エアコンの修理に必要な部品を10年間の保有としていることが多いためです。
したがって、10年以上経つと修理に必要な部品がなくなり、買い替えるしかなくなります。
また、業務用エアコンも修理で使用する部品の保有期間が各メーカーにより定められていますが、家庭用エアコンよりも部品数が多いため、部品ごとに保有期間の差があります。
エアコンは法定耐用年数とメーカーの使用期限を意識しながら、買い替えのタイミングを考えるとよいでしょう。
エアコンを減価償却するメリット
減価償却は、法定耐用年数にもとづいて、固定資産の取得価額を分割して費用計上する会計処理です。
減価償却の対象は、時間の経過により価値が減少する建物や機械装置などの減価償却資産です。
それでは、減価償却を行うとどのようなメリットがあるのでしょうか?
エアコンを減価償却する主なメリットは、下記の2つが挙げられます。
・利益が抑えられ節税につながる
・損益の把握と財務状況の維持ができる
1つずつ解説していきます。
利益が抑えられ節税につながる
減価償却を行うことで、耐用年数の間は減価償却費を計上できるため、利益を抑えられます。
利益を抑えられれば税務上の課税所得も減り、法人税が減り節税につながります。
適切に減価償却を行い、長期的に節税効果を受けられるようにしましょう。
損益の把握と財務状況の維持ができる
減価償却を行わない場合、固定資産の購入費用を一度に経費計上することになるため、費用と収益が対応せずに損益の把握が困難になってしまいます。
さらに、経費計上した年度の利益が著しく下がってしまうことでしょう。
しかし、減価償却を行えば固定資産の取得価額を分割して経費計上でき、費用と収益が対応し、損益の把握が容易になります。
また、減価償却費として分割して経費計上できれば、費用が分散されて一度に負担しなくて済むため、財務状況の維持が可能です。
減価償却の計算方法と仕訳方法
エアコンを減価償却する際は、定額法と定率法の2つの計算方法があり、仕訳をする際には直接法と間接法の2種類があります。
定額法と定率法のどちらで減価償却を行うかは、法人や個人事業主ごとに異なることに注意をしてください。
法人で税務署に減価償却方法の届出を出していない場合は、器具及び備品に分類される家庭用エアコンは定率法、建物付属設備に分類される業務用エアコンは定額法で償却します。
また、個人事業主で税務署に減価償却方法の届出を出していない場合は、家庭用エアコン・業務用エアコンにかかわらず、定額法で償却します。
そこで、ここでは下記の4つの項目について解説しますので、1つずつ確認していきましょう。
・【定額法】による計算方法
・【定率法】による計算方法
・【直接法】による仕訳方法
・【間接法】による仕訳方法
【定額法】による計算方法
定額法は、毎年均等に減価償却費を計上していく計算方法で、下記の計算式で減価償却費を求めます。
減価償却費=取得価額×定額法の償却率
実際に、家庭用エアコンを例に挙げて、定額法で減価償却費の計算をしてみましょう。
ここで計算する前提条件を下記の通りとします。
・家庭用エアコンを取得
・耐用年数:6年
・取得価額:60万円
・定額法の償却率:0.167
・会計期間が開始した初月に減価償却を開始
上記の前提条件で、減価償却の計算を行った結果が下記の通りです。
経過年数 | 減価償却費 | 計算式 |
1年 | 10万200円 | 60万円×0.167 |
2年 | 10万200円 | 60万円×0.167 |
3年 | 10万200円 | 60万円×0.167 |
4年 | 10万200円 | 60万円×0.167 |
5年 | 10万200円 | 60万円×0.167 |
6年 | 9万8,999円 | 残存簿価1円まで償却 |
1年目から5年目までの減価償却費は、取得価額(60万円)×償却率(0.167)で求めた10万200円です。
6年目は固定資産が使用中であることを示すために、9万8,999円の減価償却費を計上し、残存簿価1円になるようにします。
【定率法】による計算方法
定率法は、初年度の減価償却費が最も大きく、年々減価償却費が減少する計算方法で、下記の計算方法で減価償却費を求めます。
減価償却費=未償却残高×定率法の償却率
ここでも、家庭用エアコンを取得したとして定率法で減価償却費を計算してみましょう。
・家庭用エアコンを取得
・耐用年数:6年
・取得価額:60万円
・定額法の償却率:0.333
・改定償却率:0.334
・保証率:0.09911
・会計期間が開始した初月に減価償却を開始
上記の条件で算出した経過年数ごとの減価償却費は、下記の通りです。
経過年数 | 減価償却費 | 計算式 | 翌年度の期首未償却残高 |
1年 | 19万9,800円 | 60万円×0.333 | 40万200円=60万円ー19万9,800円 |
2年 | 13万3,267円 | 40万200円×0.333 | 26万6,933円=40万200円ー13万3,267円 |
3年 | 8万8,889円 | 26万6,933円×0.333 | 17万8,044円=26万6,933円ー8万8,889円 |
4年 | 5万9,467円 | 17万8,044円×0.334 ※改定取得価額×改定償却率の計算に切替 | 11万8,577円=17万8,044円ー5万9,467円 |
5年 | 5万9,467円 | 17万8,044円×0.334 ※改定取得価額×改定償却率の計算に切替 | 5万9,110円=11万8,577円ー5万9,467円 |
6年 | 5万9,109円 | 残存簿価1円まで償却 | 1円=5万9,110円ー5万9,109円 |
定率法の特徴は、減価償却費が償却保証額(取得価額×保証率)を下回った場合、改定取得価額×改定償却率の計算式に切り替えることです。
※改定取得価額:減価償却費が初めて償却保証額を下回った年度の期首未償却残高
上記のケースでは1年目から3年目までは未償却残高×定率法で計算します。
ただし、4年目の減価償却費5万9,289円(未償却残高17万8,044円×償却率0.333)が償却保証額5万9,466円(取得価額60万円×保証率0.09911)を下回るため、4年目以降は改定取得価額×改定償却率の計算式に切り替えて計算してください。
6年目は固定資産が使用中であることを示すために、残存簿価1円まで減価償却を行います。
【直接法】による仕訳方法
仕訳方法には直接法と間接法があり、まずは直接法から解説していきます。
直接法は、固定資産から減価償却費を直接差し引く方法です。
先ほど定額法で求めた減価償却費について、直接法の仕訳で表すと下記の通りです。
借方 | 貸方 | ||
減価償却費 | 100,200円 | 器具及び備品 | 100,200円 |
【間接法】による仕訳方法
続いて間接法です。
間接法は、固定資産から直接減価償却費を差し引かずに、減価償却累計額の科目を使用して仕訳をします。
間接法の仕訳は下記の通りです。
借方 | 貸方 | ||
減価償却費 | 100,200円 | 減価償却累計額 | 100,200円 |
エアコンの勘定科目
エアコンの耐用年数の章で、エアコンが固定資産に分類される場合は、器具及び備品もしくは建物付属設備に該当するとお伝えしました。
ただし、エアコンが固定資産に該当しないケースなどもあるため、エアコンの勘定科目の決定方法について確認していきましょう。
まず、取得価額10万円未満の場合、エアコンの勘定科目は一般的には経費科目である消耗品費に該当します。
消耗品費は事務用品などを計上する勘定科目ですが、エアコンが取得価額10万円未満であれば、消耗品費として経費計上できることを覚えておきましょう。
取得価額が10万円以上20万円未満の場合は、一括償却資産に該当します。
一括償却資産は減価償却のルールの一つで、固定資産ごとに減価償却を行わず、取得価額を3年間に渡り3分の1ずつ経費として計上可能です。
また、取得価額20万円以上であれば、すでに解説した通り固定資産として扱うため、器具及び備品、もしくは建物付属設備の勘定科目を使用します。
なお、エアコンの取得価額には、本体価格のほかに運送費や工事費などの付随費用も含めることに注意をしましょう。
エアコンの減価償却のポイントと注意点
ここまで、エアコンの耐用年数や減価償却の計算方法などを解説しました。
ここではエアコンの減価償却のポイントと注意点について、下記の4つを解説していきます。
・減価償却は現金支出を伴わない
・「少額減価償却資産の特例」がある
・エアコン取り付け費用の科目は分けて計上可能
・プライベートでも使用する場合は按分が必要
減価償却は現金支出を伴わない
減価償却を行って減価償却費を計上しても、現金の支出を伴わないため、減価償却費分の資金が企業に留保されます。
このような考え方を自己金融効果と呼び、減価償却費は費用として計上されても資金が減らない特徴を持っています。
減価償却を行うことで資金が留保され、ほかの設備投資に資金を使えるという考え方があることを覚えておくとよいでしょう。
「少額減価償却資産の特例」がある
エアコンを減価償却する際に、少額減価償却資産の特例を適用できる可能性があります。
少額減価償却資産の特例とは、取得価額が10万円以上30万円未満の資産について、1会計期間に300万円まで一括で経費計上できる制度です。
少額減価償却資産の特例を適用するためには、青色申告をし、資本金または出資金が1億円以下の法人などの条件が付いているため、国税庁のホームページで最新の条件を確認してみてください。
また、もしエアコンの取得価額が、本体価格と工事費などの取り付け費用を合計して30万円以上の場合、取り付け費用を分けて会計処理できれば、少額減価償却資産の特例を受けられる可能性があります。
エアコンの取り付け費用は修繕費などの経費科目で計上できる可能性があるため、本体価格と取り付け費用を分けて会計処理できるケースがあることも覚えておきましょう。
エアコン取り付け費用の科目は分けて計上可能
上述したようにエアコンの取り付け費用の科目は、本体価格と取り付け費用で分けて計上可能です。
本体価格と取り付け費用で分けた場合、本体価格を固定資産として扱って減価償却を行い、取り付け費用を修繕費などの経費科目で計上します。
プライベートでも使用する場合は按分が必要
個人事業主の場合、エアコンをプライベートでも使用する場合は、減価償却費を按分して経費計上する必要があることに注意をしてください。
エアコンの減価償却費を経費計上できるのは、業務で使用したときのみです。
したがって、プライベートでもエアコンを使用している場合は、減価償却費を按分し、業務で使用した分の減価償却費を経費として計上してください。
まとめ
本記事では、エアコンの減価償却について、耐用年数や計算方法を解説しました。
エアコンを固定資産として計上し、減価償却を行う場合の耐用年数と勘定科目は下記の通りです。
エアコンの種類 | 耐用年数 | 勘定科目 |
家庭用エアコン | 6年 | 器具及び備品 |
業務用エアコン(出力が22キロワット以下) | 13年 | 建物付属設備 |
業務用エアコン(出力が22キロワットより上) | 15年 | 建物付属設備 |
エアコンの固定資産の勘定科目を判断する際に迷ったら、上の表を確認してください。
エアコンを減価償却する主なメリットは、下記の2つです。
・利益が抑えられ節税につながる
・損益の把握と財務状況の維持ができる
減価償却を適切に行い、メリットを受けられるようにしましょう。
また、エアコンの計算方法は、定額法と定率法の2種類の計算方法があります。
記事内でそれぞれの計算方法を解説していますので、計算する際の参考にしてください。