「当座預金口座はどういう口座なのだろう?」
「当座預金と普通預金の違いは何だろう?」
このようにお悩みではないでしょうか。
普通預金は知っていても、当座預金のことを詳しく知らない人は多いことでしょう。
この記事では、当座預金についての基礎知識や普通預金との違いについて解説します。
また、当座預金のメリットとデメリットや見分け方、仕訳例も解説していますので、当座預金についてお悩みの人はぜひ最後までお読みください。
当座預金とは事業用の決済用口座
当座預金は、法人や個人事業主が小切手や手形による支払いを行うための事業用の決済用口座です。
当座預金は、資金を預けている金融機関が破綻しても、全額保護されるなどの特徴を持っています。
そのため、当座預金を利用すれば取引先と確実に金銭のやり取りを行えることなどから、利用されているといえるでしょう。
当座預金と普通預金の違いとは
当座預金と普通預金ではさまざまな違いがあり、違いをまとめた表は下記の通りです。
項目 | 当座預金 | 普通預金 |
利息 | つかない | つく |
元本保証 | 全額 | 1,000万円と利息まで |
通帳の有無 | なし | あり |
ATMでの入出金 | できない ※一部例外あり | できる |
1日の引き出し限度額 | なし | あり |
当座借越契約 | あり | なし |
口座開設時の審査 | あり | なし |
口座開設時の手数料 | かかる | かからない |
各項目について、1つずつ解説していきます。
当座預金には利息が付かない
当座預金には利息が付きませんが、普通預金には利息が付きます。
当座預金は、金利の上限を定めた法律の臨時金利調整法により利息を付けることを禁止されていることを覚えておきましょう。
一方普通預金は、預け入れている金額や期間にもとづいて利息が付きます。
当座預金は全額元本保証される
当座預金は全額元本保証されますが、普通預金は1,000万円と金融機関の破綻日までの利息まで保証されます。
金融機関の倒産などの場合に備える制度である預金保護制度があり、日本のほとんどの金融機関が加入しています。
したがって、当座預金も普通預金も預金保護制度の対象ですが、保証の範囲が異なることを覚えておくとよいでしょう。
当座預金は通帳がない
当座預金は通帳がありませんが、普通預金は通帳があります。
当座預金の金額は、通帳の代わりに金融機関から発行される当座勘定照合表で確認できます。
最近では紙の当座勘定照合表をなくし、Webで確認できるようにしている金融機関もあるため利用してみてください。
当座預金はATMでの入出金ができない
当座預金はATMでの入出金ができませんが、普通預金はATMでの入出金ができます。
当座預金の入出金は金融機関の窓口で行い、払い出しをする際は、小切手や手形、また口座振替などで行い、金銭では行わないのが特徴です。
ただし、一部の金融機関ではATMで当座預金の入出金を利用できるところがあるため、手続きを手間に感じる人は、利用してみてもよいでしょう。
当座預金は1日の引き出し限度額がない
当座預金は1日の引き出し限度額はありませんが、普通預金は限度額があります。
当座預金は、事業で利用される決済用の口座で、企業間で多額のやり取りがされる流動性が高い預金のため、引き出しの限度額がありません。
ただし、ATMを利用して当座預金の取引を行う際は、限度額が決められている場合があるため、事前に限度額の設定があるかどうかを調べておくとよいでしょう。
また、普通預金を引き出す際は限度額が決められており、ATMを利用する場合は100万円までとしている金融機関もあります。
普通預金の引き出しがATMの限度額を超える場合は、金融機関の窓口で引き出しを行うことになります。
ただし、金融機関の窓口で限度額以上の普通預金を引き出す場合は、事前に申込を行う必要があるため、基本的にはすぐに引き出せないことに注意をしましょう。
当座預金は当座借越契約がある
当座預金は当座借越契約がありますが、普通預金には当座借越契約がありません。
当座借越とは、当座預金の残高が不足した場合、事前に金融機関と契約した金額まで金融機関から借り入れができる制度です。
したがって、当座借越契約を結ぶことで金融機関から自動で借り入れができ、不渡りを回避できます。
当座預金は口座開設時に審査がある
当座預金は口座開設時に審査がありますが、普通預金の口座開設時には審査がありません。
当座預金を利用することは、金融機関が決済の責任を持つことを意味するため、金融機関が認めた法人・個人事業主だけが口座開設をできることになります。
金融機関の審査により当座預金の口座開設が認められれば、一般的に信用力のある会社であるといえるでしょう。
当座預金は口座開設時に手数料がかかる
当座預金は口座開設時に手数料がかかりますが、普通預金は口座開設時に手数料がかかりません。
当座預金の口座開設時の手数料は金融機関により変わりますが、みずほ銀行では16,500円(税込)かかります。
また、口座を開設した後、小切手や手形の用紙などの交付を受ける場合も手数料がかかります。
一方、普通預金は口座開設時に手数料はかからず、口座を維持するための手数料も基本的にはかかりません。
しかし、紙の通帳を利用する場合は、手数料がかかるケースがあることなどに注意をしてください。
当座預金口座のメリット
ここまで、当座預金の基礎知識と普通預金との違いを解説しましたが、当座預金口座を作るとどのようなメリットがあるのでしょうか?
当座預金口座のメリットは主に下記の5つが挙げられますので、それぞれ解説していきます。
・支払いに小切手や手形が使える
・取引先からの信頼度が上がる
・当座借越契約をしていると不渡りを防げる
・当座預金口座は金融機関破綻時も全額保証
・当座預金は取引額上限がなく大きな取引も可能
支払いに小切手や手形が使える
当座預金口座を利用すれば、支払いに小切手や手形が使えるメリットがあります。
支払いに使った小切手や手形は、金融機関で手続きをすれば現金化できるため、わざわざ多額の現金を運ぶリスクがありません。
不渡りにならないように小切手や手形を適切に利用できれば、大きなメリットといえるでしょう。
取引先からの信頼度が上がる
当座預金口座の開設には金融機関の審査があることから、当座預金口座を持つことで取引先からの信頼度が上がります。
当座預金口座を開設するには金融機関での審査が必要で、金融機関が経営状況などを確認し、認められた法人・個人事業主しか当座預金口座の開設ができません。
したがって、当座預金口座の開設ができたことは金融機関から信用されている証のため、取引先からも信頼度が上がるといえるでしょう。
当座借越契約をしていると不渡りを防げる
当座預金口座を開設し、当座借越契約をしていると不渡りを防げることもメリットの一つです。
当座借越契約をしていれば、当座預金の残高が不足している場合でも、金融機関と事前に契約した金額まで自動で借入ができます。
そのため、もし資金繰りでミスをしてしまい、当座預金口座の残高不足になっても不渡りを防げます。
ただし、借入をした際には高めの利息であることが多いため、借入をしたら迅速に返せるようにすると良いでしょう。
当座預金口座は金融機関破綻時も全額保証
当座預金口座は、金額機関が破綻したときも全額保証してもらえることもメリットの一つです。
もし全額でなく一部だけの資金しか保証されないと、取引に支障が出てしまうだけでなく、影響する損失金額が大きい場合は経営を継続できなくなる恐れもあります。
事業では多額の金額での取引が多くなることが想定されるため、全額保証されることは大きなメリットといえるでしょう。
当座預金は取引額上限がなく大きな取引も可能
当座預金を利用すれば取引額の上限がないため、大きな取引も可能です。
事業の取引をする際は、やり取りする金額が大きくなることが多いでしょう。
もし普通預金で取引を行う場合は、ATMでは1日の取引金額の上限がある上に、金融機関の窓口にいっても大きな金額を動かすときは事前に申込を行う必要があるため、円滑な取引ができるとはいえません。
当座預金は取引額の上限がないため、大きな取引が多い傾向のある事業用の決済用口座に向いているといえるでしょう。
当座預金のデメリット
当座預金にはメリットがある一方で、デメリットもあります。
当座預金のデメリットは主に下記の5つがありますので、1つずつ確認していきましょう。
・審査が厳しく口座開設できないケースもある
・基本的には窓口対応のみ
・利息が付かない
・小切手や手形を発行すると手数料がかかる
・小切手を使うと不渡りのリスクが上がる
審査が厳しく口座開設できないケースもある
当座預金は、審査が厳しく口座開設できないケースがあることがデメリットの一つです。
当座預金の口座を開設できれば小切手や手形の発行ができますが、経営状況が悪く支払い能力のない会社が利用してしまうと、取引先に損失を与えてしまう恐れがあります。
また、当座借越契約を結んだ場合は金融機関から借入を行うことになるため、厳しい審査になってしまうことが想定されます。
基本的には窓口対応のみ
当座預金で取引を行う場合、基本的にATMは利用できず、窓口対応のみです。
窓口対応は時間が決められているため、不便に感じる人もいることでしょう。
金融機関の中には当座預金がATMに対応しているケースもあるため、当座預金の口座開設前に調べてみるとよいでしょう。
利息が付かない
普通預金には利息が付くものの、当座預金には利息が付きません。
しかし、現在の普通預金の利息は、金融機関により異なりますが0.001%から0.20%という状況です。
そのため、利息が付いても手に入る収益が少額という点を考慮すると、当座預金に利息が付かないことは、そこまで大きなデメリットではないともいえるでしょう。
小切手や手形を発行すると手数料がかかる
小切手や手形を発行する際に、手数料がかかることもデメリットといえるでしょう。
例えば、みずほ銀行の場合、小切手と手形の発行手数料は50枚つづりでそれぞれ11,000円(税込)です。
小切手と手形を扱うときは、小切手と手形の紙自体にも手数料を支払っていることを意識しましょう。
小切手を使うと不渡りのリスクが上がる
不渡りは、当座預金の残高が足りずに、指定の金額の決済ができないことを指します。
当座預金の口座を開設して当座借越契約を結んでいれば、仮に残高が不足しても金融機関と事前に契約した金額までは、借入を行うことで不渡りを防げます。
しかし、金融機関と事前に契約した以上の金額が不足した場合は不渡りの対象となり、同じ金融機関で6か月の間に2回の不渡りを出してしまうと、取引停止の処分を受けることになるため注意が必要です。
取引停止の処分を受けてしまうと、全国の金融機関において当座預金による取引や借入ができなくなるため、倒産に追い込まれてしまうほど厳しい状況になってしまうことが予想されます。
したがって、すぐに現金化が可能な小切手の管理を確実に行い、当座預金の残高不足にならないように十分気を付けましょう。
当座預金と普通預金の見分け方
当座預金と普通預金の両方とも口座番号は7桁ですが、預金種目の1が普通預金、2が当座預金を表している点が異なります。
基本的には預金種目は1と2が使われているため、預金種目を確認して当座預金と普通預金を見分けるとよいでしょう。
当座預金を利用した取引の仕訳
ここまで当座預金について解説してきましたが、ここでは当座預金を利用した取引の仕訳を解説していきます。
ここで解説するのは、下記の5つのケースです。
・小切手を渡したときの仕訳
・小切手を受け取ったときの仕訳
・約束手形を渡したときの仕訳
・約束手形を受け取ったときの仕訳
・当座借越で残高がマイナスになったときの仕訳
当座預金を使って仕訳をするときの参考にしてください。
小切手を渡したときの仕訳
小切手を渡したとき、つまり小切手で支払うときの仕訳を確認していきましょう。
まず、商品30万円を仕入れて、後ほど小切手で支払う時の仕訳は下記の通りです。
借方 | 貸方 | ||
仕入 | 300,000円 | 買掛金 | 300,000円 |
仕入先から商品を受け取った後、小切手で支払いを行った際の仕訳は下記の通りです。
借方 | 貸方 | ||
買掛金 | 300,000円 | 当座預金 | 300,000円 |
小切手を受け取ったときの仕訳
前の章では支払い側でしたが、今度は小切手を受け取った側の仕訳です。
取引先に30万円の商品を販売した際の仕訳は、下記の通りです。
借方 | 貸方 | ||
売掛金 | 300,000円 | 売上 | 300,000円 |
そして、販売代金の30万円を小切手で受け取った際の仕訳は下記の通りとなります。
借方 | 貸方 | ||
現金 | 300,000円 | 売掛金 | 300,000円 |
小切手を受け取った際、小切手は現金と同等のものと考え、現金勘定で仕訳をするのがポイントです。
その後、受け取った30万円を当座預金へ入金したときの仕訳は下記の通りです。
借方 | 貸方 | ||
当座預金 | 300,000円 | 現金 | 300,000円 |
約束手形を渡したときの仕訳
ここからは、約束手形の仕訳について確認していきましょう。
商品30万円を仕入れて、約束手形を渡したときの仕訳は下記の通りです。
借方 | 貸方 | ||
仕入 | 300,000円 | 支払手形 | 300,000円 |
そして、約束手形を渡した取引先が、約束手形の支払い期日後に現金化し、当座預金から引き落としがあったときの仕訳は下記の通りとなります。
借方 | 貸方 | ||
支払手形 | 300,000円 | 当座預金 | 300,000円 |
約束手形を受け取ったときの仕訳
商品を販売し、取引先から約束手形を受け取ったときの仕訳は下記の通りです。
借方 | 貸方 | ||
受取手形 | 300,000円 | 売上 | 300,000円 |
受け取った約束手形を現金化して当座預金に入金した場合は、下記の仕訳になります。
借方 | 貸方 | ||
当座預金 | 300,000円 | 受取手形 | 300,000円 |
当座借越で残高がマイナスになったときの仕訳
金融機関と当座借越契約を結んでいる状況で、当座預金の残高がマイナスになったときは、どのような仕訳になるのでしょうか?
当座預金の残高が30万円不足したまま期末を迎えてしまった場合は、下記の仕訳になります。
借方 | 貸方 | ||
当座預金 | 300,000円 | 短期借入金 | 300,000円 |
当座預金残高のマイナスを解消するために、1年以内に返済する借入金である短期借入金を貸方に計上し、金融機関から借入をしている状況を表すようにしてください。
まとめ
本記事では、当座預金について詳しく解説しました。
当座預金は、法人や個人事業主が小切手や手形による支払いを行うための事業用の決済用口座のことです。
当座預金と普通預金にはさまざまな違いがあり、違いをまとめたのが下記の表です。
項目 | 当座預金 | 普通預金 |
利息 | つかない | つく |
元本保証 | 全額 | 1,000万円と利息まで |
通帳の有無 | なし | あり |
ATMでの入出金 | できない ※一部例外あり | できる |
1日の引き出し限度額 | なし | あり |
当座借越契約 | あり | なし |
口座開設時の審査 | あり | なし |
口座開設時の手数料 | かかる | かからない |
当座預金と普通預金の違いを上の表で確認しておきましょう。
また、当座預金には主に下記の5つのメリットがあります。
・支払いに小切手や手形が使える
・取引先からの信頼度が上がる
・当座借越契約をしていると不渡りを防げる
・当座預金口座は金融機関破綻時も全額保証
・当座預金は取引額上限がなく大きな取引も可能
一方、当座預金の主なデメリットは下記の5つです。
・審査が厳しく口座開設できないケースもある
・基本的には窓口対応のみ
・利息が付かない
・小切手や手形を発行すると手数料がかかる
・小切手を使うと不渡りのリスクが上がる
メリットとデメリットを理解した上で、当座預金を利用するようにしましょう。
さらに、当座預金と普通預金は預金種目で見分けます。
預金種目の1が普通預金、2が当座預金を表しているため、覚えておきましょう。
記事内で当座預金を利用した取引の仕訳も解説していますので、仕訳をする際の参考にしてください。