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貸借対照表の現金がマイナスやゼロになる時の要因と対処法

貸借対照表 現金 マイナス

現金は減ってもゼロまでにしかならないため、基本的に貸借対照表の現金はマイナスになりません。

しかし、何らかの問題により貸借対照表の現金がマイナスになってしまい、悩んでいる人もいることでしょう。

そこで、本記事では貸借対照表の現金がマイナスやゼロになる時の要因や、現金の残高を一致させる対処法などを解説していきます。

貸借対照表を作成して現金がマイナスになってしまった人は、本記事をお読みいただき、要因と対処法を確認してみてください。

目次

貸借対照表の現金がマイナスやゼロになることはある?

貸借対照表の現金は、マイナスになることはありません。

なぜなら、現金を使えば残高がゼロになることはあっても、マイナスにはならないからです。

しかし、貸借対照表を作成していると何らかの問題により、現金の残高がマイナスになってしまうことがあります。

経理職をしている人の中には、貸借対照表の現金がマイナスになってしまった経験がある人もいるのではないでしょうか。

なぜ、貸借対照表の現金がマイナスになってしまうことがあるのでしょうか?

そこで、次の章で貸借対照表の現金がマイナスになる要因を解説していきます。

貸借対照表の現金がマイナスになる要因

貸借対照表の現金がマイナスになってしまった場合、下記の4つの要因が考えられます。

●   現金の売上計上を忘れている
●   売掛金の消込処理を忘れている
●   現金・預金取引を忘れている
●   数字の入力漏れやミス

もし、貸借対照表の現金がマイナスになって困っている人は、上記の4つの要因に心当たりがないか確認してみてください。

1つずつ解説していきます。

現金の売上計上を忘れている

まずは、現金の売上計上を忘れているケースです。

単純なことですが、現金の売上計上の仕訳を忘れてしまうだけで、貸借対照表の現金がマイナスになってしまいます。

現金の売上計上の仕訳は、下記の通りです。

借方貸方
現金50,000円売上50,000円

売上で得た現金は経費などに使われているはずですが、上記の仕訳を忘れている場合、帳簿上の現金は増えず、経費で使用した分が減ってしまうことになります。

貸借対照表の現金がマイナスになってしまったら、現金の売上計上の仕訳を忘れていないか確認してみましょう。

売掛金の消込処理を忘れている

売掛金の消込処理を忘れているケースでも、貸借対照表の現金がマイナスになってしまいます。

売掛金の消込の仕訳は、下記の通りです。

借方貸方
現金50,000円売掛金50,000円

現金の売上計上を忘れているケースと同様に、売掛金の消込処理を忘れている場合も帳簿上で現金が増えません。

実際には売掛金の消込処理した分、つまり売掛金を回収した現金を使って経費などの支払いをしているため、売掛金の消込処理を忘れると、現金がマイナスになってしまう可能性があります。

貸借対照表の現金がマイナスになってしまったら、売掛金の消込処理を忘れていないかについても確認が必要です。

現金・預金取引を忘れている

現金を使用する場合、預金から現金への振替をしなくてはなりません。

仕訳は下記の通りです。

借方貸方
現金50,000円預金50,000円

上記の仕訳をしない場合、現金を預金から引き出したものの、帳簿上で現金が増えないため、現金で経費などを支払った分だけ帳簿上でマイナスになってしまいます。

現金を預金から引き出した場合も、忘れずに仕訳をしましょう。

数字の入力漏れやミス

ここまで解説した要因以外にも、入力漏れやミスが起きている可能性があります。

例えば、売上の現金入金が30万円にもかかわらず、仕訳をする際に間違って3万円にしてしまうとどうなってしまうでしょうか?

現金の計上が少ないため、貸借対照表上で現金がマイナスになってしまいます。

また、事務用品の支払いで2万円支払ったものの、仕訳上で20万円とした場合はどうなるでしょうか?

実際よりも多くの現金を支払ったことになってしまうため、貸借対照表上では現金がマイナスになってしまいます。

貸借対照表上の現金がマイナスになってしまうと、何が違うのだろうと焦ってしまうかもしれませんが、落ち着いて入力漏れやミスがないかを確認することが大切です。

現金のマイナスは状況によって要因が変わる

前の章では、貸借対照表の現金がマイナスになる要因を解説しましたが、現金のマイナスは状況によって要因が変わります。

そこで、ここでは下記の2つのケースを解説していきます。

●   貸借対照表の現金が実際の現金より大きい場合
●   貸借対照表の現金が実際の現金より小さい場合

それぞれのケースで、どのように考えるべきかを解説していきますので、参考にしてください。

貸借対照表の現金が実際の現金より大きい場合

まず、貸借対照表の現金が実際の現金より大きい場合、考えられる経理ミスは以下の通りです。

●   現金の売上計上が重複している
●   現金で支払った経費や仕入、給与などの支払いが漏れている

現金の売上計上の重複があると、貸借対照表上に重複した分の現金が余計に計上されてしまうため、実際よりも貸借対照表上の現金が増えてしまいます。

さらに、現金の支払い関係の仕訳が漏れてしまった場合でも、実際の現金は減っているものの貸借対照表上の現金は減らないため、貸借対照表上の現金が大きくなってしまいます。

したがって、上記のような貸借対照表の現金が増えてしまっている仕訳や漏れた仕訳がないかの確認が必要です。

また、経理ミスがないにもかかわらず、貸借対照表の現金が実際の現金より大きい場合は、個人事業主の場合、差額分が生活費に回った金額と考えることも可能です。

もし、貸借対照表と実際の現金を合わせたい場合は、生活費に回した金額分を事業主貸の勘定科目を用いて仕訳をすれば現金を合わせられます。

例えば、貸借対照表の現金と実際の現金で1万円の差額があれば、下記の仕訳をすることで帳簿上の現金を減らせます。

借方貸方
事業主貸10,000円現金10,000円

貸借対照表の現金が実際の現金より小さい場合

次に、貸借対照表の現金が実際の現金より小さい場合を考えてみましょう。

考えられる経理ミスは、下記の2つです。

   現金の売上計上を忘れている
●   現金や預金の支払いの計上が重複している

上記2つのミスが発生してしまうと貸借対照表上の現金が実際よりも小さい金額になってしまうため、2つのミスがないかを確認が必要です。

もし、経理ミスがないのに貸借対照表の現金が実際の現金より小さい場合は、事業がうまくいっておらず、事業を行うために現金を補填した可能性があります。

事業が赤字で資金が回らない状況になり現金を補填していないか、確認が必要でしょう。

日々の取引を帳簿につけることで貸借対照表の現金が決まりますが、経理ミスがなければ貸借対照表と実際の現金の金額が合うことを覚えておきましょう。

現金の残高を一致させる2つの方法

ここまで、貸借対照表の現金がマイナスになる要因や、現金のマイナスは状況により要因が変わることを解説しました。

ここでは、貸借対照表と実際の現金の残高を一致させる2つの方法を解説していきます。

●   現金過不足の勘定科目を使用する
●   事業主借・事業主貸を使用する

1つずつ解説していきますので、現金残高が一致せずに悩んでいる人は、ぜひ読んでください。

現金過不足の勘定科目を使用する

現金過不足は、現金が合わない原因が判明するまでの間、一時的に使用する勘定科目です。

また、決算を迎えても現金の合わない原因が不明の場合、雑損や雑益といった営業外損益の勘定科目を使って調整する特徴を持っています。

したがって、決算時は現金過不足の残高金額をなくし、ゼロにすることを覚えておいてください。

さらに、現金過不足は合わない現金が少額のときのみに使用するため、合わない金額が大きい場合は早急に合わない原因を究明しましょう。

それでは、実際に現金過不足の勘定科目を使用するケースを解説していきます。

【現金過不足】実際の現金残高より貸借対照表の現金残高の方が多いケース

まずは、貸借対照表の現金が3万円、実際の現金が1万円で合わない金額が2万円の貸借対照表の現金残高が多いケースです。

合わない金額2万円については、下記のように仕訳をして調整します。

借方貸方
現金過不足20,000円現金20,000円

貸借対照表の現金の方が大きいため、上記の仕訳で現金の金額を減らしましょう。

そして、例えば現金の合わない原因が広告宣伝費の現金支払いが漏れていたことだった場合、現金過不足を相殺して正しい勘定科目に振り替えるため、下記の仕訳をします。

スクロールできます
借方貸方
広告宣伝費20,000円現金過不足20,000円

一方で、決算時にどうしても現金が合わない原因が不明な場合は、決算を締めるために下記のように雑損へ振り替えます。

借方貸方
雑損20,000円現金過不足20,000円

ただし、雑損で振り替える仕訳は、現金の合わない原因がどうしても分からなかったときに行ってください。

決算時に雑損を使用することなく、決算までに現金の合わない原因を究明することが大切です。

【現金過不足】実際の現金残高より貸借対照表の現金残高の方が少ないケース

次に、貸借対照表の現金が1万円、実際の現金が3万円と貸借対照表の現金残高の方が2万円少ないケースを考えてみましょう。

合わない2万円については下記のように仕訳をし、実際の現金に合うように貸借対照表の現金を増やします。

借方貸方
現金20,000円現金過不足20,000円

そして、現金の合わない原因が現金の売上計上漏れだったことが判明した場合、下記の仕訳のように正しい勘定科目に振り替えましょう。

借方貸方
現金過不足20,000円売上20,000円

しかし、決算を迎えても現金の合わない原因が判明しなかった場合は、決算を確定させるために、下記の仕訳のように雑益を計上します。

借方貸方
現金過不足20,000円雑益20,000円

ただし、貸借対照表の現金残高の方が多いケースと同様に、雑益の仕訳をする前に現金が合わない理由を探すようにしてください。

それでも現金が合わない理由が判明しない場合は、上記の仕訳のように雑益の勘定科目を用いて現金過不足の勘定科目を相殺して整理するようにしましょう。

事業主借・事業主貸を使用する

個人事業主であれば、現金の合わない理由が分からない場合に、事業主勘定の事業主借・事業主貸を使用して、現金の残高を一致させることができます。

事業主借・事業主貸の勘定科目は損益に影響しないため、現金の合わない理由がどうしても分からないときに使用するとよいでしょう。

そもそも、事業主借・事業主貸とはどういった勘定科目なのでしょうか?

個人事業主の収益や費用は、法人と異なり事業のものか、それとも私用のものかを区別することが難しい特徴を持っています。

もし事業用の資金が足りなくなった場合、個人事業主であれば生活費から移すことができ、反対に事業用のお金を生活費に移せます。

上記のように、個人事業主が事業以外のお金の移動をした場合に使用するのが、事業主借・事業主貸の勘定科目です。

事業主借・事業主貸の勘定科目の意味は下記の通りなので、覚えておきましょう。

●   事業主借:生活費を事業用のお金へ移動するときに使用。「個人事業主から借りる」と考える。
●   事業主貸:事業用のお金を生活費へ移動するときに使用。「個人事業主へ貸す」と考える

以下より、実際に仕訳を用いてケースごとに解説していきます。

【事業主勘定】実際の現金残高より貸借対照表の現金残高の方が多いケース

貸借対照表の現金が3万円、実際の現金が1万円で差額が2万円のケースを考えてみましょう。

もし、差額の原因が分かれば現金過不足のケースと同様に、正しい勘定科目に振り替えてください。

ここでは、原因が分からずに決算を迎えたケースを想定します。

現金が合わない差額の2万円は、下記のように事業主貸を用いて仕訳をしましょう。

借方貸方
事業主貸20,000円現金20,000円

貸借対照表の現金が3万円、実際の現金が1万円のため、貸借対照表上で2万円の現金を減らす必要があるため、上記の仕訳になります。

貸借対照表の現金残高の方が多いときは、借方に事業主貸、貸方に現金を用いて仕訳をすることで、現金が合うことを覚えておきましょう。

【事業主勘定】実際の現金残高より貸借対照表の現金残高の方が少ないケース

続いて想定するのは、貸借対照表の現金が1万円、実際の現金が3万円の差額が2万円のケースです。

実際の現金3万円が正しいため、貸借対照表の現金を1万円から3万円、つまり2万円増やす必要があります。

貸借対照表の現金を2万円増やして調整する仕訳は、下記の通りです。

借方貸方
現金20,000円事業主借20,000円

上記の仕訳により帳簿上の現金、つまり貸借対照表上の現金が2万円増えて、現金の残高が3万円になるため調整完了です。

この章では、現金の残高を一致させるため、現金過不足と事業主借・事業主貸を用いて調整する方法を解説しました。

ただし、調整するのは現金で差額が発生した要因が、どうしてもわからないときにお使いください。

大事なことは、現金の差額を調整しないように日々の取引を正しく帳簿に記録していくことです。

常に現金の残高が合うように、日々の帳簿付けを確実に行っていきましょう。

まとめ

この記事では、貸借対照表の現金がマイナスになる要因と対処法を解説しました。

貸借対照表の現金がマイナスになる要因は、下記の4つが挙げられます。

●   現金の売上計上を忘れている
●   売掛金の消込処理を忘れている
●   現金・預金取引を忘れている
●   数字の入力漏れやミス

帳簿への記録の際は、上記4つの要因に気を付けて行っていきましょう。

また、貸借対照表の現金がマイナスになったときの対処法は、下記の2つです。

●   現金過不足の勘定科目を使用する
●   事業主借・事業主貸を使用する

ただし、上記2つはどうしても現金の残高が合わないときに使う方法です。

現金の残高がマイナスになったり、現金の残高が合わなくなったりしないよう、日々の取引を帳簿へ正確に記録していきましょう。

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