会社の経営において、運転資金や事業拡大のために金融機関からお金を借りることは、よくあることです。 しかし、借入金について具体的に詳しく知らなかったり、どのように会計処理を行えば良いのかわからない方も多いのではないでしょうか。
借入金は、借金であるため、メリットが分からずに借り入れを行わないようにしている人もいるかもしれません。
そこで、本記事では、借入金の基礎知識や特徴、種類などを解説していきます。 さらに、借入金の仕訳例やメリット・デメリットなども解説していますので、借入金について詳しく知らずにお悩みの人は、ぜひ最後までお読みください。借入金を賢く活用することで、事業の成長を加速させることも可能です。 本記事を参考に、借入金について理解を深め、適切に活用してください。
借入金とは?
借入金とは、企業が事業運営のために金融機関などから借り入れたお金のことです。借入金は、運転資金や設備投資などの資金調達に利用されます。
借入金を利用するには、金融機関と融資契約を締結する必要があります。融資契約では、借入金の額、金利、返済期限などの条件が定められます。
借入金は、返済義務がある負債であるため、企業は期日までに元本と利息を返済する必要があります。
借入金を利用するメリットとデメリットをそれぞれ見ていきましょう。
借入金を利用するメリット
借入金を利用する主なメリットは以下の通りです。
資金調達手段の確保
自己資金だけでは賄えない資金調達が必要な場合、借入金を利用することで必要な資金を確保することができます。
事業拡大のチャンス
設備投資や新規事業への参入など、事業拡大のための資金調達に利用することで、事業成長のチャンスを掴むことができます。
財務体質の強化
適切な借入金は、自己資本比率を改善し、財務体質を強化することができます。
借入金を利用するデメリット
借入金を利用する主なデメリットは以下の通りです。
金利の支払い
借入金には金利がかかるため、企業は利益の一部を金利の支払いに充てる必要があります。
返済義務
借入金は返済義務があるため、企業は期日までに元本と利息を返済する必要があります。返済が滞ると、信用情報に傷がつき、今後の融資が困難になる可能性があります。
財務状況の悪化
過剰な借入金は、財務状況を悪化させ、経営危機に陥るリスクを高めます。
借入金は、メリットとデメリットを理解した上で、適切に利用することが重要です。
借入金の基礎知識
借入金の基礎知識として、以下の4つのポイントを解説します。
借入金の勘定科目
借入金は、貸借対照表の負債の部に計上されます。具体的には、長期借入金または短期借入金の勘定科目を使用します。
・長期借入金: 返済期限が1年以上である借入金
・短期借入金: 返済期限が1年未満である借入金
借入金の貸借対照表への計上
借入金が計上された場合、貸借対照表は以下のようになります。
貸借対照表
資産の部
・流動資産
現金及び預金
・非流動資産
投資の部
固定資産
負債の部
・流動負債
短期借入金
・非流動負債
長期借入金
純資産の部
・資本金
・利益剰余金
借入金と資本金の違い
借入金と資本金は、どちらも企業の資金調達手段ですが、以下の点で異なります。
項目 | 借入金 | 資本金 |
返済義務 | あり | なし |
金利 | かかる | かからない |
所有権 | 債権者に帰属 | 株主 (出資者) に帰属 |
長期借入金と短期借入金の違い
長期借入金と短期借入金は、返済期限によって区別されます。
項目 | 長期借入金 | 短期借入金 |
返済期限 | 1年以上 | 1年未満 |
金利 | 短期借入金よりも低い | 短期借入金よりも高い |
用途 | 設備投資など長期的な資金調達 | 運転資金など短 期的な資金調達 |
借入金の4つの種類
借入金には、主に以下の4つの種類があります。それぞれの特徴やメリット・デメリットがあるため、自社の状況に合った借入金を選択することが重要です。
証書貸付
証書貸付は、金融機関から借入金の証書を受け取ることで資金調達する方法です。証書貸付には、固定金利と変動金利の2種類があります。
1.証書貸付の特徴
- 返済期限が比較的長い (1年以上)
- 金利が比較的低い
- 担保が必要となる場合が多い
2.証書貸付の仕訳例 - 借入金 1,000万円 当座預金 1,000万円
3.証書貸付の注意点 - 返済期限が長いので、返済計画をしっかり立てる必要がある
- 金利が比較的低いとはいえ、金利負担は発生する
- 担保が必要となる場合が多いので、担保となる資産を準備する必要がある
手形貸付
手形貸付は、手形を発行することで資金調達する方法です。手形には、割引手形と満期手形の2種類があります。
1.手形貸付の特徴
- 返済期限が比較的短い (1年未満)
- 金利が比較的高い
- 担保が必要となる場合が多い
2.手形貸付の仕訳例
借入金 1,000万円 手形割引 1,000万円
3.手形貸付の注意点
- 返済期限が短いので、資金繰りをしっかりと管理する必要がある
- 金利が比較的高いので、金利負担が大きくなる
- 担保が必要となる場合が多いので、担保となる資産を準備する必要がある
手形割引
手形割引は、手形を金融機関に売却することで資金調達する方法です。手形割引には、商業手形と銀行手形の2種類があります。
1.手形割引の特徴
- 返済期限が比較的短い (1年未満)
- 金利が比較的高い
- 担保が必要となる場合が多い
2.手形割引の仕訳例
現金 950万円 手形割引 1,000万円 割引料 50万円
3.手形割引の注意点
- 返済期限が短いので、資金繰りをしっかりと管理する必要がある
- 金利が比較的高いので、金利負担が大きくなる
- 担保が必要となる場合が多いので、担保となる資産を準備する必要がある
当座借越
当座借越は、預金口座の残高が不足しても、一定の限度額まで貸し出しを受けることができる制度です。
1.当座借越の特徴
- 返済期限が比較的短い (1年未満)
- 金利が比較的高い
- 担保は不要
2.当座借越の仕訳例
借入金 1,000万円 当座預金 1,000万円
3.当座借越の注意点
- 返済期限が短いので、資金繰りをしっかりと管理する必要がある
- 金利が比較的高いので、金利負担が大きくなる
- 担保は不要だが、信用情報に影響が出る可能性がある
借入金の金利
借入金の金利は、企業にとって重要なコストの一つです。 金利を少しでも低く抑えるために、複数の金融機関から見積もりを取るなど、金利条件を比較検討することが重要です。
借入金の金利の種類
借入金の金利には、主に以下の2種類があります。
固定金利
・契約期間中、金利が一定に保たれる
・金利変動リスクがない
・長期的な資金調達に適している
変動金利
・市場金利に基づいて金利が定期的に変動する
・金利変動リスクがある
・短期的な資金調達に適している
借入金の金利を決める要因
借入金の金利は、以下の要因によって決まります。
・借入金の額
借入金の額が大きいほど、金利は低くなる傾向がある
・返済期限
返済期限が長いほど、金利は高くなる傾向がある
・金利水準
市場金利水準が高いほど、借入金の金利も高くなる
・企業の信用力
信用力が高い企業ほど、金利は低くなる傾向がある
・金融機関との取引関係
長期的な取引関係がある金融機関ほど、金利は低くなる傾向がある
借入金の返済
借入金の返済は、企業にとって重要な責任であるため、 返済計画を立て計画的に返済していくことが重要です。詳しく見ていきましょう。
借入金の返済方法
借入金の返済方法は、主に以下の2種類があります。
元利均等返済
・毎月、一定額の元本と利息を返済する
・返済当初は利息の支払い割合が大きいが、返済が進むにつれて元本の支払い割合が大きくなる
元金均等返済
・毎月、一定額の元本を返済し、利息は残高に応じて計算される
・返済当初は利息の支払い割合が大きいが、返済が進むにつれて利息の支払い割合が小さくなる
借入金の繰越返済
繰越返済とは、返済期限までに借入金を返済しきれなかった場合、新たな借入金で返済期限を延長する方法です。
繰越返済は、一時的に資金繰りを改善することができますが、金利負担が大きくなるというデメリットがあります。
繰越返済を検討する場合は、以下の点に注意する必要があります。
繰越返済の回数
繰越返済を繰り返すと、金利負担が大きくなり、財務状況が悪化する可能性がある
返済計画
繰越返済を行う前に、具体的な返済計画を立てることが重要である
金融機関との相談
繰越返済を行う場合は、金融機関に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要である
借入金と税金
借入金には、主に以下の2種類があります。
長期借入金: 返済期限が1年以上である借入金
短期借入金: 返済期限が1年未満である借入金
借入金は、企業にとって重要な資金調達手段の一つですが、税金との関係も理解しておくことが重要です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
借入金の利息と法人税
借入金の利息は、損害控除の対象となります。損害控除とは、課税所得から控除できる項目のことです。損害控除することで、法人税の負担を軽減することができます。
長期借入金の利息は、全額損害控除の対象となります。
短期借入金の利息は、支払基礎の計算に含まれます。支払基礎とは、法人税の課税対象となる所得の計算基礎のことです。
借入金の損失と法人税
借入金を返済した場合、借入金差損金が発生します。借入金差損金とは、借入金を借り入れた時の金利と返済時の金利の差額によって生じる損失のことです。
借入金差損金は、損害控除の対象となります。
ただし、以下の場合は、借入金差損金は損害控除の対象となりません。
- 借入金が私的な目的で使用された場合
- 借入金の金利が異常なほど高い場合
借入金に関するその他のポイント
借入金は、企業にとって重要な資金調達手段の一つですが、適切に管理しないと、財務状況を悪化させるリスクがあります。
借入金に関するその他のポイントとして、以下の3つの項目について解説していきます。
借入金の返済スケジュール
借入金の返済スケジュールは、資金繰りにとって非常に重要です。返済期限までに確実に返済できるよう、余裕を持ったスケジュールを立てることが重要です。
返済スケジュールを立てる際には、以下の点に注意する必要があります。
・事業計画に基づいて、必要な資金調達額を明確にする
・返済能力を考慮した借入金の額を設定する
・金利条件を比較検討する
・借入金の返済計画を立てておく
借入金の返済スケジュールは、定期的に見直し、必要に応じて調整する必要があります。
借入金の管理方法
借入金を適切に管理するためには、以下の点に注意する必要があります。
借入金の状況を常に把握する
借入金の状況を把握するには、借入金台帳などのツールを活用すると便利です。
借入金の返済計画を遵守する
借入金の返済計画を遵守することは、財務状況を悪化させないために非常に重要です。
借入金の金利条件を定期的に見直す
借入金の金利条件を定期的に見直すことで、より有利な金利で借入金を借り換えることができる場合があります。
借入金の担保となる資産を適切に管理する
借入金の担保となる資産を適切に管理することは、金融機関との取引を円滑に進めるために重要です。
借入金のリスク
借入金には、主に以下のリスクがあります。
- 金利リスク
:金利が上昇すると、金利負担が大きくなる - 為替リスク
為替レートが変動すると、返済額が変動する - 信用リスク
企業の信用力が低下すると、借入金の返済が困難になる
借入金のリスクを軽減するためには、以下の点に注意する必要があります。
金利リスクをヘッジする
金利スワップなどの金利デリバティブを活用する
為替リスクをヘッジする
外国為替先物取引などの為替デリバティブを活用する
信用リスクを軽減する
財務体質を強化する
まとめ
本記事では、借入金について詳しく解説しました。
借入金とは、他者から借りたお金のことで、借り入れをするのは金融機関や取引先、もしくは個人などが考えられますが、どこから借りても借入金になります。
借入金を理解するために、借入金と資本金の違い、長期借入金と短期借入金の違いを理解しておきましょう。
借入金は、適切に活用することで、事業の成長を加速させることができます。 ただし、返済義務がある負債であるため、過剰な借入金は財務状況を悪化させ、経営危機に陥るリスクもあります。
借入金を適切に利用するためには、以下の点に注意することが大切です。
・事業計画に基づいて必要な資金調達額を明確にする
・返済能力を考慮した借入金の額を設定する
・金利条件を比較検討する
・借入金の返済計画を立てておく
・借入金のリスクを理解し、対策を講じる
借入金に関する疑問や不安がある場合は、金融機関や税理士に相談することも視野に入れましょう。