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買掛金とは?売掛金や未払金との違いや仕訳方法、勘定科目をわかりやすく解説

買掛金

「買掛金はどういうときに使用する勘定科目なのだろう?」
「買掛金と他の勘定科目との違いを知りたい」

このようにお悩みではないでしょうか?

買掛金という勘定科目を知っていても、買掛金について詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。

そこで、本記事では買掛金の基礎知識や間違えやすい勘定科目との違いを解説していきます。

さらに、買掛金の仕訳方法や買掛金を管理するポイントなども解説します。

買掛金がよく分からずに悩んでいる人は、ぜひ最後までお読みください。

目次

買掛金とは?間違いやすい勘定科目との違い

まずは買掛金の意味と、間違えやすい勘定科目との違いを解説していきます。

解説するのは下記の4つの項目です。

・買掛金とは
・未払金との違い
・未払費用との違い
・売掛金との違い

それぞれ確認していきましょう。

買掛金とは

買掛金とは、事業活動で仕入れをし、掛取引を行った際に使う勘定科目です。

掛取引のため、すぐに現金の支払いが発生しない点が特徴です。

例えば、製造業で商品を製造する際に、原材料の仕入れを行ったときなどに使用します。

買掛金は将来支払う仕入債務のため、貸借対照表では負債の部に含まれる流動負債に該当することも覚えておきましょう。

未払金との違い

未払金は、将来支払いが必要な負債である点は買掛金と共通していますが、本業の取引で生じたものではない点が買掛金と異なっています。

未払金は商品などの本業の仕入れの際に使うのではなく、事務用品代や修繕部品代などの一般的な取引の際に使われます。

未払費用との違い

未払費用も将来支払いが必要な負債に該当する勘定科目ですが、買掛金と未払金に当てはまらず、継続的な契約による支払いを行うときに使う勘定科目です。

例えば、給与、保険料、水道光熱費などを支払う際に使用します。

売掛金との違い

買掛金は商品の仕入れをした際に使用する勘定科目で、売掛金は商品を販売した際に使う勘定科目です。

掛取引という点では同じであるものの、買掛金は後日お金を支払う債務、売掛金は後日お金を受け取る債権を計上する勘定科目のため、反対の意味になることを覚えておきましょう。

買掛金の仕訳の流れ

買掛金の仕訳を行うときは、どのような流れになるのでしょうか?

ここでは、5つのステップに分けて解説していきます。

1.商品を注文

まずは、取引先に商品を注文します。

掛取引を行う場合、商品の注文時点では商品の受け取りと商品代の支払いは発生しないため、仕訳はしません。

2.商品を仕入れ、買掛金の仕訳をする

商品を仕入れたタイミングで、買掛金の仕訳をします。

一般的な商品の仕入れのタイミングは、商品の発送時点、入荷時点、検収時点とされており、各会社で異なります。

3.請求書を受け取る

取引先から仕入れをした商品についての請求書を受け取ります。

請求書に記載のある支払期限までに、掛取引で計上した分を支払います。

なお、すでに買掛金を計上する仕訳は済んでいるため、請求書を受け取った際の仕訳はありません。

4.商品代金を支払う

買掛金で計上した商品代金を、現金や預金などから支払いを行います。

商品代金の支払いにより、仕入債務である買掛金を消去し、現金や預金などから支払う会計処理を行う必要があるため、仕訳を行うことになります。

5.買掛金残高を買掛金元帳で確認する

これまで行った仕訳に間違いがないかを確かめるため、買掛金元帳で各取引先の買掛金残高を確認します。

もし全額支払ったにもかかわらず、買掛金元帳に買掛金残高があった場合は仕訳が間違っているため、仕訳の経緯を確認し、速やかに修正仕訳を行いましょう。

買掛金の具体的な仕訳例と勘定科目

前の章で買掛金の仕訳の流れを解説しましたが、買掛金を使用した場合、具体的にどのような仕訳になるのでしょうか?

ここでは、下記のケースごとに具体的な仕訳例を解説していきますので、それぞれ確認していきましょう。

・商品を掛けで仕入れた場合
・掛仕入の分を支払った場合
・値引きや返品があった場合
・掛仕入について約束手形を振り出した場合
・同じ取引先の売掛金と相殺した場合

商品を掛けで仕入れた場合

商品を掛けで仕入れた場合の仕訳は、買掛金を使用する際の基本的な仕訳です。

商品を入荷した時点などの会社ごとに決まったタイミングで、仕入れと買掛金の計上を行う会計処理をします。

買掛金を計上することで後日お金を支払う義務、つまり負債があることを示します。

・取引先から商品を30万円で仕入れた際の仕訳例

借方貸方
仕入300,000円買掛金300,000円

掛仕入の分を支払った場合

掛仕入の分、つまり買掛金で計上していた分を支払った場合は、買掛金を消去する必要があります。

・掛仕入の30万円分を当座預金から支払った場合の仕訳例

借方貸方
買掛金300,000円当座預金300,000円

値引きや返品があった場合

仕入れを行った商品に破損や注文間違いがあった場合、値引きや返品を行います。

掛取引を行っているケースでは、一般的には仕入値引などの勘定科目を使わずに、買掛金から直接減額する会計処理が行われます。

・仕入れを行った商品が破損していたため、5万円分の商品を返品した場合の仕訳例

借方貸方
買掛金50,000円仕入50,000円

掛仕入について約束手形を振り出した場合

掛仕入、つまり買掛金の支払いのために、約束手形を振り出すケースがあります。

約束手形を振り出すと負債の支払手形を計上しますが、同時に負債の買掛金を消去することになります。

・掛仕入(買掛金)30万円について、同じ金額で約束手形を振り出した場合の仕訳例

借方貸方
買掛金300,000円支払手形300,000円

同じ取引先の売掛金と相殺した場合

仕入れをしている取引先に販売もしていた場合、同じ取引先に買掛金と売掛金の残高があるケースがあります。

もし取引先の同意を得られれば、債務の買掛金と債権の売掛金を相殺できます。

・買掛金30万円の支払いの際、取引先に同意を得て、同じ取引先の売掛金と買掛金の相殺をした場合の仕訳例

借方貸方
買掛金300,000円売掛金300,000円

買掛金残高を管理するための「買掛金元帳」とは

買掛金元帳とは、取引先別に買掛金残高を管理するための補助簿です。

総勘定元帳を見ると会社全体の買掛金残高の合計は分かりますが、取引先別の買掛金残高は分からないため、買掛金元帳を使用して取引先別の買掛金の管理を行います。

買掛金元帳があれば、前月末時点の買掛金残高や当月の買掛金の状況などの動きが一目で分かります。

また、買掛金の支払い漏れを防いだり、買掛金の仕訳ミスが分かったりするなど、買掛金を管理する上で必要な補助簿といえるでしょう。

買掛金を把握し管理するポイント

買掛金は今後支払う必要のある債務のため、買掛金の金額が大きくなれば資金繰りが苦しくなります。

したがって、買掛金を適切に把握し、資金不足にならないように管理することが大切といえるでしょう。

そこで、ここでは買掛金を把握し、管理する3つのポイントを解説します。

・買掛金の回転率を意識する
・買掛金の回転期間を意識する
・買掛金には5年の時効がある

一つずつ確認していき、買掛金を適切に管理していきましょう。

買掛金の回転率を意識する

買掛金を管理するには、買掛金の回転率を意識することが大切です。

買掛金の回転率とは、買掛金の支払いが効率的に行われているかを測る指標で、計算式は下記の通りです。

買掛金の回転率(%)=(売上原価(仕入高)÷買掛金残高)×100

※売上原価(仕入高)は年間の金額、買掛金残高は期末残高の金額を使用

上記の計算式で算出された買掛金の回転率は、数字が大きいほど支払いまでの期間が短く、数字が小さいほど支払いまでの期間が長いことを示します。

もし買掛金の回転率が小さい場合は、資金不足のために支払いが遅延している可能性もあるため、注意が必要です。

また、買掛金の回転率の適切な値は業種により異なるため、同業他社と比べて見るとよいでしょう。

そこで、ここでは実際に企業の買掛金の回転率を確認してみましょう。

ここで確認するのは、印刷業の大日本印刷株式会社と凸版印刷株式会社の買掛金の回転率です。

上記2社の売上原価と買掛金残高、および買掛金の回転率は下記の通りです。

スクロールできます
項目大日本印刷株式会社凸版印刷株式会社
売上原価1,081,284百万円1,276,671百万円
支払手形及び買掛金残高224,418百万円162,517百万円
買掛金の回転率481.8%785.6%

※比較する期は2023年3月期とし、支払手形及び買掛金残高の金額を使用するものとする

出典:大日本印刷株式会社「2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」

出典:凸版印刷株式会社「2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」

上記の結果より、買掛金の回転率は大日本印刷株式会社が481.8%、凸版印刷株式会社が785.6%となり、凸版印刷株式会社の方が数字が大きいため、支払いまでの期間が短いことが分かります。

買掛金の回転期間を意識する

買掛金の回転期間は、仕入れをしてから実際に支払うまでにかかる期間がどれくらいなのかを測る指標で、計算式は下記の通りです。

買掛金の回転期間(月)=買掛金残高÷売上原価(仕入高)×12

買掛金の回転期間(日)=買掛金残高÷売上原価(仕入高)×365

上記で計算した結果が短い方が、問題なく買掛金が支払われていることを示します。

そのため、買掛金の回転期間を把握することは、資金繰りを適切に行うために重要なことといえるでしょう。

それでは、ここでも大日本印刷株式会社と凸版印刷株式会社の買掛金の回転期間を確認してみましょう。

2社の売上原価と買掛金残高、さらに買掛金の回転期間は下記の通りとなります。

スクロールできます
項目大日本印刷株式会社凸版印刷株式会社
売上原価1,081,284百万円1,276,671百万円
支払手形及び買掛金残高224,418百万円162,517百万円
買掛金の回転期間(月)2.5か月1.5か月
買掛金の回転期間(日)75.8日46.5日

※比較する期は2023年3月期とし、支払手形及び買掛金残高の金額を使用するものとする

上記より、大日本印刷株式会社より凸版印刷株式会社の方が、買掛金の回転期間が短いことが分かりました。

買掛金には5年の時効がある

買掛金や売掛金などの掛取引は5年の時効があるため、支払期日から5年が過ぎれば買掛金の仕入債務がなくなることになります。

ただし、5年過ぎるまでに買掛金の支払請求を受けた場合などは、原則時効とならないため注意が必要です。

買掛金の残高が合わない時の原因は?

買掛金を管理する際に、帳簿上の買掛金残高と理屈上正しいと考える買掛金残高が合わないときがあります。

買掛金の残高が合わない時の原因は、何が挙げられるのでしょうか?

主に下記の3つの原因が挙げられます。

・計算のミス
・計上の漏れ
・認の漏れ

それぞれ解説していきますので、買掛金の残高が合わないときに参考にしてください。

計算のミス

まずは計算のミスが考えられます。

複数の伝票などをもとに買掛金の仕訳をした場合、集計する際に計算ミスをして、誤った金額で仕訳をしている可能性があります。

買掛金の支払いの仕訳をする際も、計算ミスにより実際に支払った金額と仕訳の金額が異なることもあるでしょう。

また、買掛金元帳の残高がマイナスになっているときも、買掛金の計上もしくは支払いの仕訳をする際に計算ミスをしていないかの確認をしましょう。

計上の漏れ

本来は期末に仕入れの仕訳をするはずが、手違いで期初に仕入れの仕訳をしてしまい、期末の仕入れ、つまり買掛金の計上漏れがあったために、買掛金が合わないケースも考えられます。

期末と期初は会計期間が変わる境目のため、適切なタイミングで買掛金の計上を行いましょう。

確認の漏れ

本来は買掛金の計上をすべきところ、確認漏れで計上していないなど、確認の漏れにより買掛金の残高が合わないことも考えられます。

確認漏れで買掛金の支払いができていなかった場合、取引先の資金繰りに問題が発生してしまうかもしれません。

確認漏れのないよう自社の買掛金の支払い手続きを適切に行い、買掛金の残高が合うようにしましょう。

まとめ

本記事では、買掛金について詳しく解説しました。

買掛金とは、事業活動で仕入れをし、掛取引を行った際に使用する勘定科目です。

買掛金は下記の3つと間違えやすい勘定科目といえるでしょう。

・未払金
・未払費用
・売掛金

買掛金と上記3つの勘定科目の違いが分からない人は、本記事で確認をしてみてください。

また、買掛金の仕訳の流れは下記の通りなので、確認しておきましょう。

・商品を注文
・商品を仕入れ、買掛金の仕訳をする
・請求書を受け取る
・商品代金を支払う
・買掛金残高を買掛金元帳で確認する

そして、買掛金の具体的な仕訳例として、下記の5つのケースを解説しました。

・商品を掛けで仕入れた場合
・掛仕入の分を支払った場合
・値引きや返品があった場合
・掛仕入について約束手形を振り出した場合
・同じ取引先の売掛金と相殺した場合

上記のケースで買掛金の仕訳をする人は、ぜひ確認をしてください。

さらに、買掛金を把握し、管理するポイントとして下記の3つを解説しました。

・買掛金の回転率を意識する
・買掛金の回転期間を意識する
・買掛金には5年の時効がある

特に、買掛金の回転率・回転期間の指標は重要なため、自社の数値を算出し、同業他社の数値と比べてみるとよいでしょう。

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