勘定科目コードの多様性について考えてみた
マネージャーの鈴木です。
突然ですが、あなたは「コード派」でしょうか?
このコラムを読んでいる方は、9割方が経理関係者の方かと思われます。経理業務に従事している中で、コードといえば「勘定科目コード」を指しますよね。(違いますか?)
多くの企業が当然のように「勘定科目」に対して「勘定科目コード」を付与しています。
日頃からそのコードを意識して使用し、その重要性を認識している人々を「コード派」と私は名付けてみました。
おそらく、コード派だけではなく、経理担当者であれば誰でも、「勘定科目コード」についての自分なりの意見や人に話してみたい経験談を持っているのではないでしょうか。
実は、私もあります。長らく1社での経理業務に携わっていたため、その会社特有の勘定科目コードを身に付けて、日頃の業務に取り組んできました。コードだけで会計システムに入力したり、コードをもとにExcelでソートや集計をしますので、覚えてしまうのも自然なことだと思います。私自身がまさに「コード派」の一人だったわけです。
しかし、経理アウトソーシングを提供する弊社H2Rコンサルティングに転職してきまして、複数の会社の経理業務を同時に担当するようになった結果、そのような習慣が変わりました。コードを中途半端に覚えてしまうと混乱を生んで、間違えのもととなるので、逆に覚えないようになってしまったのです。
このような経験を通じて、今回のコラムでは「勘定科目コード」について、今後どう向き合って対処すべきかを考えてみました。
勘定科目コードの桁数
あなたの会社の勘定科目コードは何桁でしょうか?
勘定科目コードとして、おそらく一般的なのは「4桁コード」だと思われます。(統計を取ったわけではありませんが。)
これはJIS規格(日本産業規格)で使用されている桁数でもあります。そうなのです、勘定科目に「JIS規格」というものがあったのです。実は今回、勘定科目コードについて調べていくなかで初めてその存在を知りました。
(ちなみに、金融庁から公表されている「タクソノミ」の勘定科目リストでは、勘定科目名称は記載されていますが、それぞれに勘定科目コードは振られていません。)
もちろん、「4桁コード」は単純に覚えやすいという特徴があります。
銀行の暗証番号も4桁ですし、電話番号やクレジットカードの番号も4桁で区切りますからね。2023年10月開始のインボイスでは、Tから始まる13桁の登録番号を、「T1桁 – 4桁 – 4桁 – 4桁」として見やすく記載している会社もありました。
ただ、4桁では物足りないということで、使用用途に応じて細分化するために「6桁コード」を使用しているところもありますし、一方で「3桁コード」で十分間に合っている会社もあります。
実際に私が携わった会社の事例をあげますと、ある大手製造業は「6桁コード」、別の大手のIT関連企業では「9桁コード」、中堅の運送業では「4桁コード」、小規模の飲食店業では「3桁コード」を使用しており、本当に会社によりバラバラだという感触を持っています。
コードの桁数は、勘定科目の分類方法、使用用途、会計システムの違いなど、多くの要因が影響しており、必ずしも一概には言えないのですが、企業規模が大きいほど、その会社が持つニーズが複雑になるため、それに比例してコードの桁数が大きくなる傾向がありそうです。
勘定科目コードの分類方法
次に注目すべき点は、コードの分類方法です。
一般的なのが、勘定科目コードの1桁目で区分する方法です。これもJIS規格に定めがあり、次のような大項目となっております。JIS規格では、BS科目は細かく分類するのに対して、ほとんどのPL科目が8xxxのコードに含まれるのが大きな特徴です。用語も古いままですね。
(以下、各事例はわかりやすく4桁で表示します)
- 1xxx 流動資産
- 2xxx 固定資産
- 3xxx 繰延資産
- 4xxx 流動負債
- 5xxx 固定負債
- 6xxx 法令上の引当金
- 7xxx 資本
- 8xxx 経常損益
- 9xxx 特別損益と未処分損益
一方で、次のような事例もあります。こちらは私が長年慣れ親しんできたパターンです。(なお、売上原価と販管費については、勘定科目コードではなく、別のコードで区分する運用をしていました。)
- 1xxx 資産
- 2xxx 負債
- 3xxx 純資産
- 4xxx 売上
- 5xxx 売上原価
- 6xxx 販管費
- 7xxx 営業外収益
- 8xxx 営業外費用
- 9xxx 特別損益・税金等
また、つぎのように、PL部分が異なるパターンもあります。こちらは1桁目で貸借科目の区分ができるので、Excelでの集計や残高計算がしやすいのではないしょうか。
- 1xxx 資産
- 2xxx 負債
- 3xxx 純資産
- 4xxx 収益
- 5xxx 費用
上と同じパターンで、英字を使用するケースもあります。こちらは見た目での理解度は高いです。しかし、Excelのソートや集計という面では不便かと思われます。
- Axxx 資産
- Lxxx 負債
- Exxx 持分
- Ixxx 収益
- Cxxx 経費
上記であげたコード分類は、すべて一定の法則があり、一旦それらの法則を理解してしまえば、大きな問題はない事例です。
しかし、会社によっては上記のようなパターンに当てはまらない変則的な体系を取っている場合があります。1桁目が同じ番号なのに違う属性の科目も混在していたり、番号の振り方が逆であったりと。
実はこのようなことが多々あるのです。その場合は理解するための工夫が必要になります。大小様々な会社に携わる経理アウトソーシングならではの体験かもしれません。
勘定科目コード体系の理解
JIS規格も存在するくらいだから、どこかの団体が音頭を取って、勘定科目コードを統一する方向で進めてくれてもいいのではないかと思ってしまいました。
そんなことを思って調べていると、なんとベトナムでは、政府であるベトナム財務省が定める「勘定科目および勘定科目コード」の使用が義務づけられているとのこと。
しかし、ここは日本。私が望むような動きは起きそうにありません。
すべては会社の自由に任されています。
これは裏返すと、管理会計や予算管理、制度会計、税務申告などの利便性を考慮して、各社でコードを任意に設計できるということでもあります。
つまり、いま使用している勘定科目コードは、過去に誰かが意図や目的をもって設計したものなのです(本当に深く考えて作ったのかどうかは置いておいて)。今回、あらためてこの点に考えが及びました。
その意図や目的を直接聞き出せると理解が早いのですが、歴史のある会社や外部のアウトソーシング会社という立場ではそうそう簡単にはできることではありません。
そのような場合は、やはり、じっくりとその会社の「勘定科目一覧」と「勘定科目コード」を見比べて、思いを巡らし、自分なりに理解できるレベルの体系に落とし込むことが、結局一番の近道だという考えに至りました。
ポイントは、「過去に誰かが意図や目的をもって設計したもの」であることを意識して対峙することですね。
このように、ひとくちに勘定科目コードと言っても、奥行きが深い世界が広がっていることが見えてきました。連結レベルや開示レベルへの勘定科目マッピングなど他の話題も書けそうですが、字数もオーバーしていますので今回はここまでにしておきましょう。
勘定科目コードの理解と適切な運用は、経理業務の中でも非常に重要な要素です。
いま流行りのDXやAI活用を進める以外にも、「勘定科目コード」について考え直すことも経理業務の品質向上や効率化につながる一手になるかもしれません。
経理アウトソーシング会社に所属してまだ1年半ですが、様々な会社の事例を知って、比較してみることで分かることも多いですね。今後も継続して「勘定科目コードの多様性」について考察していきたいと思います。
以上、ご参考になれば幸いです。
鈴木 Team
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